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ステータス37:落涙

 翌日の月曜日、朝食を済ませて教室に行くと、信じられない光景が広がっていた。クラスメイトの多くがステータス画面を開いて談笑していたのだ。能力値がどうだとか、スキルを取っただとか、そんな話がそこかしこで繰り広げられていた。


 一体どういうことだ? まさか、またパッチが当たった? それでステータスを見せるのが当たり前の世界に変わった? そうだ郎樹、郎樹は来ているのか?


 郎樹の席を見ると、彼もクラスメイトとステータス画面を見ながら何やら話をしているようだった。俺は郎樹の腕を掴んで教室の外に連れ出した。


「イタタタ……どうしたの崇行君?」

「パッチだ。パッチが当たって、世界がまた変わった」

「……! 何が変わったか分かるかい? 今のところ前と違うのは、ステータス画面を見せるのが当たり前になってるところだけだ」

「前はステータス画面は他人に見せないものだった?」

「全く見せてなかったわけじゃないけど、今みたいに気軽に開いて見せたりはしていなかったはずだ」

「信じられないな……ステータスオープン」


 彼は自分のステータス画面を開き、それを俺に見せてきた。


「何か他に変わっているところはないかい?」

「特に変わってるところはないかな? ……いや、この画面の横にあるインベントリと装備ってボタンはなかったはず」

「インベントリと装備がなかった? じゃあ一体前はどうやってたくさんの荷物を持ったり、着替えたりしてたんだい?」


 慌てて教室を覗くと、誰も鞄を持ってきていないことに気付いた。


「まさか、ゲームみたいなインベントリと装備のシステムが現実に導入されたって言うのか? そんなことが……」

「僕はあんまりゲームをしないから分からないけど、こうやって物を出し入れしたり、着替えたりできるのかい?」


 そう言うと、郎樹はインベントリを操作して教科書や筆記用具を出したり消したり、装備を変更して体操服に着替えたりして見せてきた。


「ハ……ハハッ……これはもう本当にゲームの世界だな。パッチってこんな大きな変化もあるのか……」

「うーん……僕だけじゃ何とも言えないな。オカルト研究会で集まって他の部員、特に梢子先輩の意見を仰いだ方が良いだろうね」

「そう……だな。けど……ハハッ、オカルト研究会なんて急になんだよ。スクールアノマリーだろ?」


 笑いながら問いかける俺に訝しげな表情で郎樹は応えた。


「……スクールアノマリーって何だい?」


 まるでスクールアノマリーという単語を初めて聞いたかのような反応を見せる郎樹。


「おいおい、よしてくれよ。オカルト研究会、通称『スクールアノマリー』だろ? アノマリーを発見したり監視したりする……」

「さっきから言ってる、そのアノマリーって何なのかな?」

「……本当に分からないのか? アノマリーは普通の生物が持っていない能力をもった生物だろ? 獅堂先輩の能力を処理したことも忘れちまったのか?」

「いや、獅堂先輩の件は覚えているよ。話から察するに、どうやら君の言うアノマリーは、僕の認識の中の思春期によく現れる固有スキルを持った人間のことを指しているようだね」


 固有スキル? アノマリーの能力がそういう認識に変換されたって言うのか? これもパッチの一部?


「……納得はできないけど、おそらくそういう事らしいな」

「どうやら言葉が違うだけで、記憶に大きな齟齬があるわけじゃないみたいだね」

「ああ、それは本当に良かった。また何もかも振り出しに戻ってしまったのかと思ったよ」

「ともかく、状況を整理するために放課後に部室に集まろう。僕が招集をかけておくよ」

「ああ、頼ん―――」

「開谷崇行!」


 そう言って、教室に戻ろうとした俺を遮るように大きな声が廊下に響いた。柊木さんだ。彼女は俺の腕を掴むと人気(ひとけ)のない所にグイグイと引っ張って行った。


「柊木さん、ちょっと……ちょっと待って」

「……これは一体どういう事?」


 やっぱり柊木さんも異変に気付いてる?


「と……とにかく落ち着いて。俺も詳しいことは分からないけど、ステータスオープンに関連する変化はまだ終わってないみたいなんだ」

「……あんた、何か知ってるわね?」


 やば……アノマリーのことって言っていいんだっけ? 俺が入る前はアノマリーについては聞いてたけど……いや、そもそもアノマリーって言葉がなくなってて……ああもう!


「本当に詳しいことは分からないんだ! 説明できるならちゃんとするから!」


 色々なことがいっぺんに起き過ぎて頭が混乱したのか、俺はつい大きな声を出してしまった。柊木さんは驚いたように俺を見つめた後、悲しそうな表情を浮かべて顔を徐々に下へと向けていった。


「……力になってくれるって言ったじゃない」


 そう呟いて、彼女はその場から走り去ってしまった。瞬間、俺の手に冷たい何かが落ちた。見てみると、それは小さな水滴のようだった。下を向いていたのでよくは分からなかったが、彼女は泣いていたのかもしれない。


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