表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/45

ステータス29:欺瞞

 試合開始直後、郎樹はいきなり真正面から突っ込んできた。


「めーーーーーーん!」


 そう叫びながら俺に向かって竹刀を勢いよく振り下ろす郎樹。勢い……よく? いや、彼の威勢のいい叫び声に一瞬惑わされたが、竹刀の動きはやたら遅くて簡単に躱すことができた。


 なんだ今の? 郎樹のやつ、どういうつもりだ? まあいい。次はこっちの番だ!


「どーーーーう!」


 俺の渾身の胴が、先ほどの攻撃から身を翻してこちらを向いた直後の彼の胴防具にカツーン、と勢いよく決まった。


「1本!」


 獅堂先輩の判定の声が響いて、俺が1本目を先取した。


 お互いまた位置に着いて2本目。


「始め!」


 先輩による開始の合図の直後、郎樹は1本目と同じように真正面から突っ込んできた。


「めーーーーーーん!」


 またさっきと同じ、声とは裏腹の勢いのない攻撃。これはかわすまでもないな……。


「どーーーーう!」


 俺はすれ違いざまに胴を繰り出して、彼の胴防具を再び鳴らせた。


「1本! それまで! じゃあ、2人とも最後に元の位置に戻って礼で終わろうか」


 獅堂先輩にそう言われ、俺達は礼をして女子2人と入れ替わるように試合場から出たのだった。


「崇行君、すごいね。あんな動きができるなんて……」

「郎樹が手を抜いてただけだろ? あんな遅い攻撃だったら誰だって避けられるぞ」

「いや、僕の剣道スキルは授業で取っただけのレベル1。肉体系の能力値も僕は高くない。あの動きが限界さ。スキルっていうのはそういうものなんだ。どうやら、彼女達の方も僕らと同じような展開みたいだね」


 そう言われて柊木さんと白居さんの試合を見ると、郎樹が言った通り、彼と同じように不自然に遅い白居さんの攻撃を楽々と避けて柊木さんが1本を取ったところのようだった。


 不機嫌そうに柊木さんが白居さんに突っかかる。


「ちょっと志穂、真面目にやりなさいよ」

「真面目にやってるよお……星来ちゃん、なんでそんなに早く動けるの? 実は剣道スキルかなり高かったんじゃ?」

「知らないわよそんなの」


 審判を務めていた獅堂先輩が2人の口論に割って入る。


「まあ落ち着いて2人とも。でも、白居さんが言うように柊木さんの動きは明らかにレベル1じゃないね。いくら能力値が高かったとしてもそこまでは動けないはずだ。これは開谷君にも言えることだけど……もしかして2人は授業以外でも剣道の経験があったりするのかな?」


 やってしまった……もうステータスオープンにさえ気を付けてればいいって状況じゃなくなってたんだ。こんなことならスキルのこと、もっと詳しく聞いておくべきだったな。自分が世界の常識から外れた存在だってことをしっかり認識しておかないと、変に注目を浴びることになりかねないぞ。しかし、なんて答えたらいいのか……経験者なんて嘘ついても流石にバレるだろうし。


 柊木さんの方を見ると彼女も答えに困っていたようで、俺が様子を伺っていることを確認するや『何とかしろ』とばかりにこっちに身振り手振りを交えて合図を送ってきた。


 おっと、これはチャンスなのでは? 少しでもいいところを見せれば彼女を見返すことができるかもしない。


「えっと……そ……そうだ! 体育でいい成績取りたくてレベル上げたんですよ、忘れてましたー。柊木さんもそうだったんじゃないですかねー……」


 俺の発言を受けて獅堂先輩は腕組みして何やら考えているようだった。もしかして、変なこと言っちゃったのだろうか……?


「……なるほどな。スポーツ系のスキルでも人気のあるサッカーなんかは上げる人も多いが、剣道のスキルを上げようって人間は少ない。だから、少しでもレベルを上げておけば有利にはなる。だけど貴重なポイントを使ってまでそんなことするなんて、ちょっと軽率だな。レベル2以上はポイントの消費も多いんだから、しっかり考えて取らないとだめだぞ」


 どうやらごまかせたっぽい……?


「は……はい、気を付けますー」

「しかし、そういうことならペアは開谷君と柊木さん、辛坊君と白居さんで組んだ方が良いだろう。レベルが近いもの同士でやった方が楽しいだろうしな。じゃあ辛坊君、こっちへ来て白居さんと試合をしようか。柊木さんはいったん戻って見学だ」


 先輩にそう言われて、郎樹と入れ替わるように柊木さんがこっちへ戻ってきた。


「あんた、私に近づくためにやったんじゃないでしょうね?」

「こ……こんなの狙ってできるわけないだろ? スキルがどんなものなのか、俺もよく分かってなかったし……」

「……まったくなんなのよ。ステータス? スキル? いつからここはゲームの世界になったの?」

「お前もそう思うか?」

「……ねえ、その『お前』っていうのやめてくれる?」

「え……えっと……じゃあ柊木さん?」

「うーん……まあいいわ。これからは私の方から声を掛けた時だけ話すのを許可してあげるから、感謝しなさいよ」

「えっと……ど……どうも……?」


 なんかよく分からんが、ステータスオープンの件で異変に気付いた時はたぶん声掛けてくるだろうし、これで柊木さんと知人になるミッションはクリアでいいのかな? 柊木さんの件は来週の予定だったけど早い分には問題ないだろう。これで後顧の憂いはなくなったわけだし、後は獅堂先輩の能力の処理に集中するだけだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ