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ステータス27:指導

 もし郎樹が言うように俺か柊木さんが近くにいることでこの学校付近の人がアノマリーになりやすくなっているとしたら、これからアノマリーの発見が増えるかもしれないってことか。梢子先輩が俺に早く1人前になれって言ってたのはそういう懸念からなのかも。


「獅堂先輩がアノマリーになった原因の一端が俺にあるとしたら、ちょっと責任感じちゃうな」

「仮に君の存在が彼の覚醒の引き金になっていたとしても、それに責任を感じる必要なんてないよ。コントロールできるようなものじゃないし」

「まあ、だとしても俺がスクールアノマリーの活動を通して、その責任の一端でも担うことができるならそれに越したことはないさ。だけど、先輩がアノマリーになった原因が剣道に強くなりたいってことなら、その想いを取り除くって一体何をしたらいいんだ? 能力に頼らずに先輩が代表に選ばれるくらい強くなれるんなら、そもそもアノマリーになんかなってないだろ?」

「それはその通りだね。だから、彼には自分の力が異質なものだと自覚してもらって、それを使うことを躊躇するように仕向ける」


 ……? 能力を使うのをためらうようになることと、獅堂先輩が剣道が強くなりたいと思わなくなること。繋がりがあるようには思えないけど……。


「……それで剣道が強くなりたいって原因がなくなるのか?」

「正確にはそういう力を使ってまで強くなりたい、勝ちたいと思わなくなる、ってとこかな。そうなれば彼のアノマリーとしての能力は弱まっていくって寸法さ」

「えっと……つまり『どんな手段を使っても代表に選ばれるために剣道が強くなりたい』から『自分の本来の力で代表に選ばれるくらい剣道が強くなりたい』に意識を変えるってことか? そういう心の持ちようの変化で能力が弱まったり消えたりするもんなんだな」

「まあだいたいそんなところだね。さ、そろそろ実際の活動に移ろうか。今日は僕が主導するから崇行君はサポートをお願い。午後から剣道部に体験入部ってことになってるから付いて来てよ」

「え……? そ……そんなの聞いてないぞ!」

「言ってなかったっけ? まあ大した問題じゃないでしょ。ちゃんと話は通してあるから安心してよ」


 郎樹はそう言い放つと、席を立って食器を返しにスタスタと先に行ってしまった。


 いきなり体験入部なんて心の準備が……でも、責任云々言ってしまった手前、ここでビビッて帰るわけにもいかないよなあ。剣道なんて中学の授業で何回かやったくらいだけど、まあなるようになるか。


 俺は心を決めて郎樹に付き従い、剣道部の道場へ向かったのだった。


 その後、道場に着いた俺は中に入ってすぐにその場の雰囲気に圧倒されていた。中学の授業でふざけてやっていたチャンバラごっこなんかとは全然違う、情熱と真剣さに満ちた光景がそこには広がっていたのだ。


 須帝高校は運動部も盛んだって聞いてたけど、剣道は強いのかな? 男子も女子もけっこうな人数の部員がいるみたいだけど。


 と、そんなことを考えているところへ、俺と郎樹が来ていることに気付いた獅堂先輩がやって来た。


「君達が体験入部の1年生だね?」

「はい、1年の辛坊です。よろしくお願いします」

「開谷です。よろしくお願いします」

「俺は3年で部長の獅堂だ、よろしくな。実は今日はお前たち以外にも体験入部がいてな。一緒にやってもらうことになるから。ほら、あっちの女子2人だ」


 そう言って獅堂先輩が指差した先にいた女子2人のうちの1人は、なんと柊木さんだった。もう1人はおさげが特徴的なおとなしそうな女子で、先日の情報処理部のクラスメイトとは違う女子のようだった。


「……! 柊木さん?」

「……! あんた、また私のこと付けてきたの! 付きまとわないでって言ったよね?」

「ち……違う! 今回のは本当に偶然だ!」

「『今回のは』ねえ……じゃあ昨日まではストーキングしてたと認めるわけね?」

「……」


 あまりに的確な指摘に俺は何も言い返すことができず、口を半開きにしたまま突っ立っていた。人の言葉の端を捉えるような真似しやがって可愛くないやつ、などと心の中で罵って溜飲を下げるのが俺にできた精いっぱいの抵抗だった。


 と、ここで獅堂先輩が俺達の口論に割って入る。


「ガハハッ! なんだお前たち知り合いだったのか? 仲良さそうで羨ましいぞ」

「仲良くなんかないです! この人が私に付きまとってきてるんです」

「だから、それは誤解だって! ちゃんと理由は説明しただろ?」

「知らないわよそんなの。私にとってはあなたが私をストーキングしてた、これが事実で全部だから!」

「まあ2人とも落ち着け。なんにせよ面識がある人が一緒で良かったじゃないか。今日は君達1年生男女4人、俺がしっかり指導してやるからな……獅堂だけに!」


 獅堂先輩は自分を親指で差してそう言った。その南極よりも寒い親父ギャグにその場の全員が凍り付いたのは言うまでもなかった。


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