表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/45

ステータス25:歓迎

 昼休みの柊木さんとの最悪の接触の後、抜け殻のように午後の授業を受けて放課後がやって来た。一緒に部室に行こうと思っていた郎樹は急ぐ用事があるからと、そそくさと先に行ってしまった。


 なんか今日は部室行きづらいな……明梨が言うように一応、柊木さんとの接触は果たしたとはいえ、あんな形だったし。だけど、報告と相談ということでみんなに集まってもらったんだし、俺が行かないわけにもいかないよな。


 そうこう考えながら部室の前までたどり着いた俺は意を決して部室のドアを開いた。次の瞬間、パンッパンッとクラッカーが弾ける音がして、一瞬目をつぶった俺が再び目を開くと、『スクールアノマリー新メンバー歓迎会』の横断幕と机に並べられた軽食の数々が目に入ってきた。そして梢子先輩、明梨、郎樹の3人が声を合わせて……。


「タイタン、スクールアノマリーへようこそ!」


 ええ……そういうテンションじゃなかったんだけど。


「えっと、なんですかこれ?」

「見て分かるだろう? 君の歓迎会だよ」

「いや、それは分かりますよ梢子先輩。そうじゃなくて、今日は相談があるって言いましたよね? 明梨は今日の柊木さんとの一件、見てたよね?」

「私は今日はやめておこうって言ったんだけど、梢子先輩聞かなくって……」

「何を言ってるんだイデア。暗い時こそ明るいことをするのも部の伝統だろう?」


 取って付けたような伝統と明らかに困った顔をしている明梨。ふーん、部の伝統ねえ……。


「それ、今作りましたよね?」

「……これから伝統にしていくのさ」

「はぁ……なんかもうどうでもよくなってきました。真面目に報告相談のつもりで来ましたけど、洗いざらい全部話して笑いの種にでもしてもらいますよ」

「何があったか詳しくは知らないが、笑い話にしてしまうというのは一種の克服方法かもしれないね」

「そうだといいですけど」

「まあ、せっかく君のために用意したんだ。そんなところに突っ立ってないで、こっちへ来てみんなで飲み食いしながら語り明かそうじゃないか」


 そうして俺は歓迎会の話のネタとして用意されていたかのように『柊木さんと仲良くなろう大作戦』の一部始終を語った。梢子先輩の言葉に引きずられたのか、それとも場の雰囲気がそうさせたのか、深刻にならずに笑い話のように話せたのは良かったように思う。みんなも軽食をつまみながら、合いの手を入れたりして、雰囲気を作ってくれているようだった。


「―――と、これが柊木さんの件の一部始終です。はぁ……話してて自分で自分が情けなくなってきました……」

「タイタン、すまない……」


 俺が語り終えると同時に深刻な表情で謝罪する梢子先輩。何か謝られるようなことあったっけ?


「梢子先輩、一体どうしたんですか?」

「今日の軽食……温玉は用意してないんだ」


 先輩の放言に堪えきれず笑い出す明梨と郎樹。2人の笑いに釣られるように、先輩も自分が言った言葉にケタケタと笑いだした。ああもう好きなだけ笑ってくれ。


 笑いを必死に抑えて郎樹が話し出す。


「いや、でも温玉は酷いね。ストーキングしてましたって自白したようなものだよ」

「俺もなんであんなこと言ったのか、今となっては本当に分からないんだ。何とかして彼女を引き止めないとって必死だったけど、パニくってて最悪の選択をしちゃったんだと思う」

「まあ、過ぎたことはどうしようもないさ。でも方向性はともかくとして、強烈な印象を彼女に与えられたことは間違いないね。これは武器になるよ」

「武器ってどういうこと?」

「悪い印象は良い印象よりも強く残りやすい。そして、人はその印象が覆るようなことに直面した時、それがどんなに小さなことでも良い方向に大きく印象を傾けてしまうんだ。つまり君は今、柊木さんに対して少しの良い印象を与えるだけで大きな成果を得られる武器を手にしている状態ってことさ」


 不良がたまに良いことをしたら、とても良い人間に思われるみたいなやつか。本当にそんなにうまくいくのかな?


「まあ、もう失うものは何もないし今日みんなに話して吹っ切れた。こんな回りくどい方法なんて最初から性に合ってなかったんだ。今度は正面から堂々とぶつかってみるよ」

「その意気だよ。僕も他のみんなも君が嫌われるような人間じゃないって知ってる。ちゃんと理解してもらえれば大丈夫さ。それにアノマリーは自分の異質さに気付いた時、誰しも不安に陥るもの。彼女もきっと同じ境遇の君に何か話をしたいと思っていると僕は思うよ」


 確かに俺はこの事象がアノマリーの能力なんだって早めに知れて、そのことに詳しい人達と話せてたからまだ良かったけど、何も分からないままの柊木さんは1人で不安を抱えてるかもしれないな。かなり気が強そうだったけど、俺がステータスオープンできないのを見た時はやっぱり驚いてたし、何か思うところはあったはず。


「……そうだな。よし、そうと決まれば善は急げだ。明日にでも柊木さんにまた声を掛けてみるよ」

「いやタイタン、悪いが君には別件を担当してもらう」

「え……?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ