ステータス22:作戦
梢子先輩は俺に柊木さんと接触することを求めてきた。しかし、彼女の件は重要事項だと言っていたのに、どうして入ったばかりの俺に任せるんだろう? 梢子先輩のことだから何か意図があるとは思うけど……。
「どうして俺なんですか?」
「君はステータスオープンができないという共通点を持っている。それを使えば自然に彼女と接点を持てるはずだ。それに書店での一件がそこからさらに繋がりを深めるために役立つかもしれない」
「柊木さんと友達になれってことですか?」
「友人まではいかなくとも、最低でもステータスオープンについてパッチによる更新があった時にすぐに話ができるような関係を築いてもらいたい。もちろん気が合うようなら友人になってもらっても構わないよ。ボーロが君に対してそうしたようにね」
俺が郎樹の方へ目をやると、彼も俺の方を見てニコリと笑って頷いた。俺は再び視線を梢子先輩の方へ戻してから応えた。
「なるほど、分かりました……けど、いきなり別のクラスの女子と知り合いになれって言われても、プレイボーイじゃないので、その……アドバイスとか、作戦とかいただけると……」
「他人が考えた不自然な方法で関係を築いても後で綻びが出るだけさ。具体的な方法は君に任せるよ」
「そんなあ……」
「もちろん相談に乗ったり、君の考えた方法に私達が必要なら協力はする。期限は今週いっぱいだ。しかし、イデアと親しくしている君がそんなに女性に免疫がないような素振りを見せるとは意外だな」
「明梨は小さい頃からの幼馴染だから特別なんです。それに、小学校の頃はもっと男子みたいだったんですよ?」
俺の失言に明梨が即座に反応する。
「ちょっと崇行、後半のそれ言う必要あった?」
「あ、いや……ほら、同性みたいに親しみやすかったって意味だよ……」
「どうだか。でもまあ、崇行に女の子と仲良くなれ、なんてハードルが高いのは同感ね」
「じゃあ、やっぱり他の人にお願いした方が……」
「ダメよ。これは崇行の訓練も兼ねてるの。ですよね、梢子先輩?」
「その通りだ。タイタンには早く1人前になってもらわないと困るからね」
「……了解です。やれるだけやってみます」
その後、報告や相談をしたい時のためにと連絡先を交換して、この日のスクールアノマリーの活動は終了した。
しかし、いきなり女の子と知り合いになれ、なんて部活動でそんなことをやらされるなんて思いもしないよな普通。まあ、スクールアノマリーが普通の部活動じゃないのは何となく分かってはいたけど。相談するのは構わないってことだったし、まずは郎樹にでも聞いてみるか。
俺はさっき聞いた連絡先を使って郎樹を呼び出し、一緒に夕食を食べながらさっきの件の作戦会議を開くことにした。最初は作戦会議とは名ばかりに俺のヘタレ具合についてぐだぐだと話しているだけだったけれど、夕食を食べ終わるくらいのタイミングになって、俺達はようやく実際の作戦の話に移ったのだった。
「―――作戦名についてだけど『柊木さんと仲良くなろう大作戦』って言うのはどうかな?」
「郎樹、楽しんでるだろ? 俺はけっこう切実に悩んでるんだぞ」
「ハハッ、僕も最初はけっこう戸惑ったもんさ」
「そういう郎樹もまだ入って1ヶ月そこらだろ?」
「僕は梢子先輩と付き合いがあって、中学の頃からよく混ぜてもらってたんだ」
「どうりでいろいろ詳しいわけだ。じゃあ先輩、何卒ご協力いただけませんでしょうか?」
手を合わせて大げさにへりくだった俺の演技に郎樹は笑って応えた。
「ハハッ、できる協力はするよ。それじゃあ、まずは君の考えを聞こうか」
「柊木さんの前でステータスオープンできないところを見せて、彼女の方から声を掛けてもらうのが良いかな、って思ってる」
「なるほどね、悪くないと思うよ。声を掛けてくるかは彼女の性格によるけど、少なくとも君の存在を印象付けることはできるだろうね」
「やっぱり、向こうから声を掛けてきてもらうって甘いかな?」
「今日1日監視していたけれど、僕も柊木さんの性格は掴みかねてるんだ。だから、どう転ぶかは正直に言って分からない」
「そっか。でも自分から声を掛けるのは何かとハードル高いんだよな。けっこう可愛い子だし」
「おや、崇行君はああいう女の子が好みなのかい? てっきり高井戸先輩みたいなタイプが好みなんだと思っていたけれど」
「いや、一般的な話さ。郎樹だってそう思うだろ?」
「僕は梢子先輩を見慣れているからね。先輩以外を綺麗だと思ったことは先輩と出会ってからは一度もないよ」
確かに梢子先輩は目の覚めるような綺麗な人だけど、明梨も負けてないと思うけどなあ……まあ郎樹の好みが先輩みたいなタイプってことなんだろう。
「それも極端だな。あの人を基準にしてたら誰とも付き合えないぞ」
「今はスクールアノマリー一筋だから問題ないさ。さて、僕はそろそろ部屋に戻るとするよ」
「ああ、いろいろ相談に乗ってくれてありがとう」
「半分くらい女の子の話だった気もするけれど、まあどういたしまして。それじゃあおやすみ」
「おやすみ、また明日な」
その後、部屋に戻った俺は、明日から本格的にスクールアノマリーの活動が始まることへの期待と不安で胸を膨らませながら床に就いたのだった。




