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ステータス21:共有

「この女の子……」


 郎樹が見せたデジカメの画面に映っていた人物に見覚えがあったことで、俺は無意識のうちにそう呟いていた。この俺の呟きにいち早く反応したのは梢子先輩だった。


「タイタン、知り合いなのか?」

「あ……いえ、知り合いというわけでは。先週の土曜に駅ビルの書店で店員さんと揉めているのを見かけただけです」

「そうか。もし知り合いなら能力の共有の線が現実味を帯びてくると思ったんだが……」

「さっきもチラッと話に出てきましたけど、能力の共有ってどういうものなんですか?」

「ボーロ、報告の途中で悪いがいったん中断させてくれ」


 郎樹はデジカメを置き、掌を上にして手を軽く広げるようなジェスチャーをして応えた。


「もちろん構いませんよ。崇行君のアノマリーへの理解も重要なことですから。僕はホワイトボードに報告内容をまとめておきます」

「すまない。ではタイタン、能力の共有について話そう。能力の共有とはアノマリーが2人以上集まることで能力を発揮したり、あるいは能力を分割して所持しているケースを指している。親兄弟や恋人、友人など関係性が近いほど能力の共有が発生する可能性も高い。君と彼女の間にもしそのような関係性があったなら、と思ったのだが当てが外れたようだね」


 この付近で俺とそんな近い関係の人って言ったら明梨くらいだろうな。同じ中学だった人なら他にもいるけど、そんなに親しかったわけでもないし。


「じゃあ、能力の共有じゃなくて別の能力?」

「いや、覚えていないだけで何らかの関係が過去にあった可能性も否定はできない。しかし、能力の共有よりも別の能力である可能性が高くなったとは言えるだろう」

「関係と言えば一応、同じ高校の同じ学年ですけど、そのくらいの関係じゃダメなんですか?」

「仮にその関係性によるものだったなら、学校か学年単位での能力の共有でないと辻褄が合わない。2人による能力の共有であれば、あくまで2人の関係性によるものであるはずなんだ」

「なるほど。覚えている限りでは彼女と土曜日より前に会った記憶はないですけど、何かがきっかけで思い出すかもしれません。頭の片隅に入れておきます」

「そうだね。今はその認識で構わないよ。それじゃあボーロ、改めて今日の監視の報告を頼む」


 郎樹が何やら書いていたホワイトボードの方に俺が目を向けると、そこには先週末から今日にかけての出来事が時系列にまとめられていた。郎樹はその場で一礼してから話し出した。


「了解しました。経緯を知らない崇行君のために最初から説明すると、まず先週末に女子寮で『ステータスオープンできない1年生がいる』という噂が流れていたのがこの件の始まり。それが梢子先輩の耳に入って調査した結果、噂の人物がC組の柊木さんだと判明する。それで今日1日、僕がアノマリーの能力を使って彼女を監視していた、というのがここまでの流れ」

「郎樹のアノマリーの能力?」

「カメラを構えると他人から認識されなくなる、それが僕の能力さ」


 そう言って郎樹がカメラを構えると、彼はその場から忽然と姿を消してしまった。


「郎樹? おい、どこ行ったんだ?」

「落ち着いてくれ、崇行君。僕はずっとここにいたよ」


 郎樹の声がして元の場所に目を戻すと、カメラを下ろした彼がそこにはいた。


「驚いた……まるで魔法みたいだ。それに郎樹がアノマリーだったなんて」

「スクールアノマリーのメンバーは君も含めみんなアノマリーさ。ただ、僕以外のメンバーの能力はちょっと特殊でね。君も分かってるとは思うけれど、詮索はしないであげて欲しい」

「ハハッ……身に染みて分かってるよ」


 俺が苦笑いを返すと、郎樹は全員を見渡すように視線を少し上げてから続けた。


「それでは、ここからが今日の監視の報告になります。今日1日、僕は能力を使ってクラスを行き来しながら、おおよそ7対3くらいの割合で柊木さんと崇行君を監視していました」


 まだスクールアノマリーに入る前だったから俺への監視も続いてたってことか。しかし、今日、郎樹はずっといなかったと思ってたけど、本当はうちの教室にも来てたってことだよな? 全然気づかなかった。


「監視の成果として彼女のフルネームと顔写真、部活動に所属していないこと、それから彼女が『ステータスオープンができない』だけでなく、崇行君と同じように『それを知りもしなかった』という情報を得ました。昼休みに実際にクラスメイトにやって見せているところを目撃したので、できないのは確定です。知りもしなかった、と判断したのはその後の会話の内容からですが、こちらも間違いないかと思われます。また、周囲に影響を与える可能性があった行動はその1件のみです。以上となります」

「ご苦労だったね、ボーロ。タイタンの入部も決まったことだし、明日からは今日のような特別な監視は必要ないだろう。ところで、スキルのパッチを観測できていたかは、まだ分かっていないってことでいいかな?」

「はい、それは今日の監視では判断できませんでした。しかし、内容から考えるにそれを知るにはもっと彼女と近づく必要があるように思います。今後のパッチによる更新に備える意味でも、彼女と繋がりを持っておくことは必須かと」

「そうだね。タイタンの入部が決まった今、目下の重要事項は彼女だ。ボーロはまだ彼女と接触はしていないね?」

「はい。指示通り、まだ直接の接触は図っていません」

「よし、それじゃあ……」


 梢子先輩はおもむろに郎樹から俺の方へと視線を移した。


「タイタン、彼女への接触は君に担当してもらう」


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