ステータス12:遭遇
郎樹の見送りを受けて俺と明梨はバスに乗り、駅へと向かっていた。2人が調べてくれたところによると、バスが駅に到着する時刻から特急の発車時刻までかなり時間が空いているらしく、実家の最寄り駅に着くのは16時過ぎになるとのことだった。そうすると実家に着くのは16時半頃か。当初の予定よりかなり遅くなってしまうな。妹にメールしておくか。
「明梨、着く時間遅くなるって妹にメールするから、ちょっとごめん」
「紗良ちゃん?」
「そう」
「懐かしいなー。久しぶりに私も会いたいかも? 明日の昼あたり一緒にご飯食べたりできないかな?」
「紗良も喜ぶと思うよ。ついでに聞いてみる」
ステータスオープンの件は今日の夜にでもお母さんに聞けばいいから、明日の昼は明梨と紗良と外に食べに行くことにするか。紗良がオーケーすれば、だけど。
『家に着くの16時半頃になりそう。それと、明梨も一緒に帰省することになったんだけど、久しぶりに紗良に会いたいって言ってるから、明日の昼、一緒にご飯食べに行かないか?』
『私も会いたい! 絶対行くー!』
『了解。じゃあ何食べたいか決めておいて』
『ラジャー!』
即決だったな。ステータスオープンの件以外、特に実家ですることもなかったし、予定が出来たのは逆にありがたい。
「明梨、明日の昼だけど、紗良と一緒に外でってことになった」
「やったー! 紗良ちゃん大きくなってるかな? 楽しみだなー」
その後も紗良のことや故郷のことで話に花を咲かせていると、あっという間に時間は過ぎてバスは駅前のバス停に到着したのだった。
「まだ電車の時間までけっこうあるね。崇行はどっか寄りたいところある?」
「実家へのお土産を買っておきたいかな」
「あ、私も買いたい!」
「じゃあ、駅ビルでなんか買おうか」
須帝高校の最寄り駅は特急も止まるそこそこ大きな駅だった。周辺も栄えており、買い物をしたい生徒はここに来れば概ねその欲求を満たすことができた。中でも駅ビルは若者向けのファッションブランドやスポーツショップ、大きな書店などが入っており、生徒たちに人気のスポットとなっていた。
俺と明梨は特急の切符を買ってから、駅ビルの1階にある洋菓子コーナーでお土産を見て回ることにした。俺は紗良の甘い物リクエストに応えて丸いカスタードケーキ、明梨はチョコの焼き菓子を実家へのお土産に選んだ。そういえば明梨はチョコ好きだったよな。
「明梨、自分も食べるつもりで選んだだろ?」
「別にいいでしょ。それより、まだちょっと時間あるから2階で本見てきてもいい?」
「いいけど、あんまり夢中になって電車の時間忘れるなよ」
「じゃあ、崇行も着いてきてよ」
「分かった。でも俺は見るものないし、店の外で待ってるから」
明梨が本を見ている間、店の出入口の辺りでスマホを弄りながら時間を潰していると、レジで何やら女の子が店員さんと揉めているのが見えた。あの制服、うちの高校だ。野次馬根性が発揮された俺は、様子を見に現場へ近づいた。
「―――もういいです。割引なしで買いますから」
「かしこまりました。では、1500円になります。―――はい、ちょうどお預かりします。ありがとうございました」
会計を済ませると少女は憤慨した様子で足早に去って行ってしまった。すれ違いざまに見たその少女は、青みがかったミディアムヘアに銀縁のメガネをした小柄な女の子だった。
知らない女子だな。制服のリボンの色から察するに同じ1年生だとは思うけど、少なくとも同じクラスにはいなかったはず。などと考えていると、女の子と揉めていた店員さんが近くにいた俺に気付いて声を掛けてきた。
「お騒がせして申し訳ありませんでした」
「いえ。何かあったんですか?」
「あの子が学割で商品を買おうとしてたんですけど、ステータスを見せてくれなくって。制服着てるし嘘をついてるわけじゃないと思うんですけど……何かよく分からないことも言ってましたし、具合でも悪かったのかもしれません。何にせよ、お騒がせしました」
そう言うと、店員さんは気まずそうに仕事に戻っていった。学割を受けるのにステータスを見せる必要があるのか……じゃあ、俺は割引使えないな。学割以外にもステータスオープンが必要なことがあるかもしれない。割引が効かないとか、その程度のことならまだいいけど、何かもっと重大な制限がかかることがないか調べておいた方が良さそうだ。
それから間もなくして、明梨が戻ってきた。
「お待たせ。そろそろ時間だし行こうか?」
「了解」
そして俺達は故郷へ向かう電車に乗った。あと1時間ほどで約1ヶ月ぶりの実家だ。




