ステータス11:修復
翌日、帰省の準備を済ませた俺が出発を前に食堂へ昼食を食べに行くと、明梨と郎樹が待ち構えていた。
「2人ともおはよう。もしかして俺のこと待ってた?」
「そうだよ、崇行君。まあ、話は席に座ってからにしようか」
俺と郎樹は親子丼、明梨はカレーライスを取ってそれぞれ席に座った。一昨日の部室の時のように向かいに明梨、右斜め前に郎樹が座っていた。違うのはそこに梢子先輩がいないことだった。
「―――それで、ただ一緒にこうやって昼飯を食べながら無駄話をしに来たわけでもないんだろ? 何か用があるんじゃないの? ……あ! お土産なら梢子先輩も含めて3人分、ちゃんと買って帰るから安心していいよ」
「お土産、楽しみにしてるよ。でも、買って帰るのは僕と梢子先輩の2人分で大丈夫になるかな」
「……? それってどういう―――」
「私も今週末、帰省することにしたの。崇行と一緒にね」
……! 明梨が一緒に来る?
「驚いた。今回は郎樹じゃなくて明梨が監視役か。昨日『今回は行かない』って言ってたから、監視はないのかと思ってた」
「『今回は僕は行かない』って言ったんだ。僕以外の人が行く可能性は残していたさ。それに高井戸先輩なら帰省先は同じだし、一緒に行っても何もおかしくないだろ?」
「確かにそうだけど……昨日、そそくさと『部室で会議がある』なんて言って教室を出て行ったのは、そういう事だったのか」
「まあね。何か問題でも?」
問題どころか、明梨と2人で帰省なんて本来は飛び上がるほど嬉しい出来事だ。だけど、今は告白が有耶無耶になってる微妙な状況なんだよな……。移動だけでもそれなりに長い時間を2人で過ごすことになるから、あの告白をなかったように振る舞うなんて流石にできないだろうし……。
「明梨はいいのか? その……屋上での事があった後だし、2人きりって言うのはちょっと気まずくないか?」
「あの時の返事はステータスオープンの件が全部片付くまで一旦保留ってことでお願い。虫のいいお願いかもしれないけど、それまでは友達のままでいさせて欲しいの。ダメ……かな?」
「……いや、むしろ俺の方からもそれでお願いしたいくらいだ。告白した時の気持ちが間違いだったとは思ってないけど、久しぶりに明梨に会って舞い上がってたのも事実。だから、その間にもう一度、自分の気持ちを整理して、この件に片が付いたら改めて俺からまた告白させてほしい」
「ありがとう……じゃあ、今からはまた幼馴染だからね! 遠慮なんてしてあげないんだから、覚悟しておいてよ!」
「俺もそのつもりだから、そっちこそ覚悟しておけよ!」
こうして俺と明梨は元の幼馴染の関係に戻った。まだ多少ぎこちない所はあったけれど、きっとすぐに小学校の頃のような自然な間柄になれるはず、そう感じさせてくれる安心感と期待感がそこにはあった。
あの時の告白は明梨への気持ちに区切りをつけるためのものだったけど、まともに話をしたのすら4年ぶりのダメ元の告白だった。でも、もらった時間で明梨との仲を昔のように、いや昔以上にして、もっと男としてもアピールすることができれば、次に告白する時にはいい返事をもらえるかもしれない。
「―――ところで崇行は何時のバスに乗る予定なの?」
「え? 特に決めてないけど」
「決めてないって、そんなんで大丈夫なの? 1時間に1本しかバス出てないし、特急の時間との兼ね合いもあるでしょ」
「え、マジで? そんなに少ないの?」
「呆れた。何にも調べてないんだ? これは監視なんてなくても、一緒に行ってあげた方が良かったみたいね」
バスが1時間に1本しか走ってないなんてのは想定外だった。このまま行ってたら大幅に時間ロスするところだったな……。
「あ……明梨は頼りになるなー」
「はぁ……崇行って昔からそういうとこあったよね。計画性が無いって言うか、行き当たりばったりって言うか。それでいつも私が手を引いてあげてたの。思い出すなー」
俺と明梨のやり取りをニコニコしながら見ていた郎樹がここで話に入ってきた。
「2人とも本当に仲が良いんだね。幼馴染って、なんだか羨ましいよ。ところでバスなんだけど、さっき出たばかりみたいだから次はおよそ1時間後だね」
「マジか。15時くらいに着くって伝えてたんだけど、間に合いそうにないな。15時半頃になるかな?」
「乗り換えとか考えたらもっとかかるかもよ? ちゃんと計画立てないとダメだって。崇行は当てにならないから辛坊君、一緒に計画考えてくれる?」
こうして次のバスが来るまでの時間、明梨と郎樹によって俺の帰省の計画が組み立てられていった。蚊帳の外だった俺は存在をアピールするように、時々合いの手を入れながらそれを見ていたのだった。




