ステータス10:監視
翌朝、学食で朝食を食べていた俺のところへ郎樹がやって来た。
学食は朝から晩まで開いているけど、朝利用している人は少ない。部屋で軽く食べる人や、朝は食べないという人が多いからだ。俺は朝もしっかり食べる派なので、いつも学食を利用している。いつもといっても休みの日は昼まで寝てるから平日だけだけど。今まで注意して見たことはなかったけど、郎樹もいつもここで朝食を食べているんだろうか?
「おはよう、崇行君。ご一緒してもいいかな?」
「もちろんいいよ。一緒に食べよう」
昨日の一件で少し気まずい感じになっていないかと危惧していたが、郎樹は何事もなかったかのように接してくれた。俺の前の席に座って朝食を食べ始める郎樹。卵焼き定食か。やっぱり気が合いそうだ。
「―――勘のいい君ならもう気付いているかもしれないけれど、僕は君の監視をしている。これはスクールアノマリーのメンバーとしての義務だ。悪く思わないで欲しい」
「別に構わないよ。どんな理由であれ1人で食べるより気分はいいからね」
「ありがとう。でも、勘違いしないで欲しい。監視するだけなら他の席からでもできる。僕が君と一緒にご飯を食べているのは、単に君と一緒に食べたいからなんだ。監視対象である前に、君は僕の友人だからね」
「そんな改まって言うなよ、恥ずかしい。俺だってお前とはもう友達のつもりさ」
思えば高校に入って友達らしい友達ができたのは初めてだ。入学してからの1ヶ月は明梨のことを追いかけてばかりいて、友達を作ろうなんて考えてもいなかった。それがあんな事がきっかけで友達が出来るなんて、分からないもんだな。
「ところで崇行君。今週末は空いているかい?」
「ごめん、明日から実家に帰省する予定なんだ。何か用事でもあったの?」
「いや、大した用じゃなかったら別にいいんだ。しかし、連休でもないのに帰省か。実家は近いのかい?」
「バスと電車で2時間ってとこ。まさか着いてくるなんて言わないよな?」
「ハハッ、監視はできる範囲でだけだよ。それに特殊な行動はアノマリーにとっては逆効果になる場合が多いんだ。だから今回は僕は行かないよ。もっと親しくなって、君の実家にお呼ばれしてもおかしくないような仲になったら、行くかもしれないね」
どこまで本気なんだか。しかし、特殊な行動はアノマリーにとって逆効果か。やっぱりスクールアノマリーはアノマリーのことについて詳しいんだな。俺は自分がそうだってのに知らないことだらけだ。自分を守るためにもやっぱり俺も入った方が良いのか? まあ実家で話を聞いたら何か変わるかもしれないし、結論を出すのはそれからでも遅くはないかな?
「話は変わるけど入部の件。昨日あんな事になっちゃったから、ちょっと顔を出しづらくてさ。だから今日は部室には行かない。でも入部するにしろ、しないにしろ、来週頭には結論を持っていくって、梢子先輩達に伝えておいてもらえるか?」
「分かった、伝えておくよ。でも、昨日のことならそんなに気にする必要ないってことは言っておく。あの後、梢子先輩すごく後悔してたんだ。君のこと、すごく気に入ってたみたいだからね。ただ、アノマリーに関することだけはどうしても譲れなくて、それであんな態度を取っちゃったみたいなんだ」
「いや、俺が変に好奇心を出したのがいけなかったんだ。梢子先輩が強い態度で拒絶してくれなかったら、俺はもっと踏み込んでしまってたかもしれない。だから次に会う時、しっかり俺の方から謝るよ。……っと、そろそろ始業時間だし、教室行こうか?」
「そうだね。今日から入部までしっかり監視させてもらうから、よろしく」
「ハハッ、お手柔らかに」
俺はまだ少し残っていたお茶を飲み干して、郎樹と一緒に教室へ向かった。
監視されるって言うのが一体どういう感じなのか、内心ちょっと不安だったけど、特に変わったことは何もなかった。むしろ、授業中にチラチラと郎樹の方を見ていたのは俺の方で、どっちがどっちを監視しているのか分からないような状態だった。休み時間に話したり、昼食を一緒に食べたりもしたから、それが監視と言えば監視なのかもしれないけれど、だいたい俺の方から誘ったことだったし……。
そして放課後になると『今日は部室で会議があるから』と言って、郎樹はすぐに行ってしまった。まあ明日の準備があるから俺もすぐ部屋に帰ろうと思ってたし、別にいいんだけど。しかし、監視ってこんな緩いものなのか? 監視される方が厳しい監視を望むのも変な話だけど、もうちょっと、なんかこう……あるんじゃないか?
まあ、何はともあれ明日は久しぶりの実家だ。と言っても、たったの1ヶ月ぶり程度だけど。しかし、人生でこんなに長く家族と離れたのは自分史上初なわけで、やっぱり懐かしく感じたりするんだろうか? この日はそんなことを考えながら帰省の準備を済ませ、早めに眠りについた。




