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2 スノウリー、親友のエーリシャのもとを訪ねる

 訪問の先触れをしておいたので、タイムル子爵家のこぢんまりとした応接間にも既に受け容れの用意ができていた。


「どうしたのスノウリー、貴女から来るなんて突然すぎるわ」

「ああエーリシャ、貴女が知らなかったなんてこと無いわ、どうして黙っていたの? マーシュのこと」

「え? もしかして、貴女今日知ったの?」


 まあ落ち着いて、とこの家の女主人エーリシャは親友をうながした。


「やあスノウリー嬢、お久しぶりです。その節はずいぶんとお父上、アラハント侯爵にお世話になりました」


 エーリシャの夫は軽く頭を下げる。


「ああそんなしち面倒くさい挨拶はいいわ貴方、今日は女だけのお話があるのよ。ねえスノウリー!」

「ええ」


 沈鬱な表情でスノウリーはうなずく。



「別に隠していた訳ではないわ。ただ貴女の方がそういう話が入ってくるの早いと思って、わざわざ言わなかっただけだわ。それに貴女、マーシュが結婚した時、その相手に対して、もの凄く嫌な感じがした、って言っていたじゃない。ああそうなったなあ、と私は思ってたんだけど」

「それでも、ブックスの小父様が認めた方だ、と思ったから私何とか自分を抑えていたのよ。……使い込み! ブックス伯爵家は堅実な領地経営をしていると評判なところなのに、何ってことを……」


 明らかに怒っているな、とエーリシャは思いつつ、皿にやや形の悪いビスケットを乗せてテーブルに置く。


「まあそんなに眉間に皺をシワを寄せるものじゃないわ。学校時代の白薔薇の君の花の#顔__かんばせ__#が台無し。私特製のビスケットを召し上がれ」

「え、貴女が作ったの?」

「そりゃあ、今は子爵とはいえ、しがない役所勤めの奥方としましては、こういうこともできたほうがいいでしょう?」


 そう言いつつ、自分で一枚かじる。


「うん、形は悪いけど味は悪くないわよ!」


 実際形は実にいびつだった。

 スノウリーも一枚取ってかじってみる。


「ああ、これ学校で実習で焼いたものね。貴女あの頃は全然熱心じゃなかったのに」

「そりゃあ、ところ変われば人も変わりますって。おかしなものよね。実家はもっと広くて使用人も沢山居て、というか私自身に侍女もいたくらいなのに! 今はメイドも居ることは居るけど、私まで家事をしているのよ」


 くすくす、とエーリシャは笑う。

 ああそういう人だったな、とスノウリーは思う。

 彼女とマーシュリア、そしてエーリシャは学校時代本当に仲の良い親友だった。

 いや、今でも少なくともこの二人はそのつもりだ。

 マーシュリアもそうであって欲しい、と二人とも思っている。

 だが、学校を卒業してすぐ結婚したマーシュリアにはなかなか連絡が取れずにいた。


「大人しいあのひとが、離婚の決断の踏み切るのは大変なことだったでしょうね」


 エーリシャはつぶやく。


「そうね。特にあそこは小父様が後妻をもらうことなく、ずっとマーシュを溺愛していたから……」

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