乙女ゲーム転生はサーバーが足りません
悪役令嬢とメインヒロインなら、メインヒロインの方が立場悪いよな。
という話です。
一体どれほどの人が、この交差点で命を落としたのだろう。
私という30代独身オタク女も、なぜかこの交差点で吸い込まれるように子犬を助け、トラックに轢かれ命を落とす。
ああ、生きてて良いこと無かったなぁ
せめて、乙女ゲーム転生お願いいたします・・・神様・・・・
あんなに・・・色々ゲームやってたんだから・・・私だって乙女ゲームに転生したり・・・できると思うのよね。
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ここは真っ白な世界。なんか男の子の声がする。
「できるわけないっしょ」
できないのかぁ・・・
目の前に、超絶イケメン金髪の、天使の羽生えてる系男子がいた。
ということはこの男は天使様ね。でも見覚えがある・・・
「あら、あなた、神絵師みぽるー先生の天使、ミポルフォン様にそっくりね。まさかここは天国?」
「天国なわけないっしょ、キミって天然?」私に指を指しながら微笑んでくる。尊い!
「失礼しちゃうわね、そういうあなたは何者なのか、先に教えてくれてもいいじゃない?」
「知ってるくせに、僕は天使ミポルフォンだよ、君の天使さ!」ウィンクしてくる。
「まあ!じゃあさっそくハグお願いしまーす!」今回も夢だろうし、甘えにいっちゃえー
「いいよー!」
ぎゅー
ミポルフォン様は、2次元なのに・・・私にガッチリ優しいハグをしてくれる。
もう、何度も見た夢なのでためらいなんてない。
「あー幸せ!夢にしてはそろそろ覚めるタイミングなんだけどなぁ」
「覚めないよ!やっぱりキミって天然?」ミポルフォン様楽しそうだけどムカついてきたわ。
「失礼しちゃうわね、このやりとり2回目よ!」
「ああ、そうだね、2回目だね。僕は天使だけど、そんなにいじめっ子パターンを知らないんだよ」
「まどろっこしいわね、で、展開は?展開はあるんでしょ?」
「そうだよ、じゃあいつも通り進めるね。君はいつもみんなが死んでる交差点で、みんなと同じように死んだから転生するんだよ」
「やっぱりね、そんなこったろうと思ったわ」
「転生先は、同じ星の同じ国、きみの生前縁のあった人のそばに産まれかわります。よかったね」
「え?乙女ゲームは?」
「うーん最近多いんだよね、乙女ゲーム行きたい人。いいけど、あれは転生じゃないからね?オマケだからね?いつでもやめていいからね?」
「オマケってどういう事?」
「所詮はゲームだから、2次元ですよーって事かな?僕と一緒だよ」
「ハグもしてもらえるなら!それくらい!大した問題じゃないわね!」
ミポルフォン様は、ちょっと複雑なお顔をなさる。変な事言ったかなあ?
「じゃあ作品は何がいい?」
私はいくつか候補にあった学園ものから一番攻略本を読みこんだヤツを選択した。
「プリンセスブリッジ~ロサンゼルスの誘惑~」
「ああ、僕も出てるやつじゃーん、良いね、じゃあどの役にする?」
「ええっと・・・やっぱり悪役令嬢かな?ストーリー知ってるし、上手く立ち回りたいわね」
「主人公のライバルキャラだね・・・イイネ、えーと「プリブリ」は・・・今、悪役令嬢はサーバーがいっぱいらしいよ」
「サーバー・・・じゃあ何ならOKなの?」
「友人モブもいけるけど、メインヒロインなら大丈夫かなあ・・・」
「そういう事なら、メインヒロインの方がいいかな?何度も周回してるし、バッドエンドもハッピーエンドも理解してるわ」
「オッケー君の未来に幸あれ☆ あ、ちなみにココでの記憶は消えてるからね!バイバーイ」
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・・・目覚めると、そこはロス・オリボスの私の家。
ロサンゼルスから離れた、オリーブの豊かな農園。
今日からロサンゼルスの学校に行くから、パパに片道100kmを送っていってもらうわ!長い通学路よね!
幼馴染のジョナと一緒にって アー!
「なんだよ、おはようリリアン、変な顔してどうしたのさ?」
「あなた・・・あなたミポルフォン様じゃない!」
「ちっ なんで記憶があるんだよ」
ジョナは、今朝目覚める前に見た夢にそっくりだった。天使の羽根は無いが・・・
そして私は前世の記憶とこの乙女ゲームのストーリーを知っていることを思い出した。
「え、なんでって、あー私「プリブリ」の中にいるのね、そしてメインヒロイン」
思い出したからには、どんどん展開は飛ばすわよ!会話スキップ会話スキップ!
「そうだよ、うっせーなあんまり変な事言うなよ?」
「何よ、ジョナ昨日とキャラ違くない?ハグしなさいよハグ!」
「やだよ!俺はジョナだぞ、もう俺を攻略したことにしてクリアすっか?エンディングにすっか?」
「えーイヤですー逆ハーレムエンドがいいですー」
「まったく・・・、どうなっても知らねえぞ」
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私達は、パパに送ってもらって入学式を終えた。
私はジョナに説明する。
「私とジョナは入学式を終え、2人で芝生でランチをしていると、『Oh・・・』という感じでジュースをこぼされ、映画監督の息子ジャックに着替えをプレゼントされるのよ」
「へーそうかい?座る場所はこのへんでいいのかな?」
予定通り、かどうかはわからないけど、芝生の記憶に合わせて座ってランチをいただいてみる。
・・・
・・・
「こないね」ジョナが足を組み換えながら私を見る。かっこいいねえアンタ。
「もう昼すぎちゃったね、なんで?」私はジュースこぼされたい待ちなんだけども。
「たぶん、ジャックの恋人候補は転生者だよ?」
「え?どういう・・・」
「映画監督の息子ジャックの恋人候補オリヴィアは、すでにインスタフォロワー50万の有名人だよ。髪もピンクにしてる」
「ピンク髪だったわね、でもまだ出会ってないはずでしょ?」
「そりゃあ、向こうもストーリー知ってるんだし、逆ハーレムエンドは阻止してくるよね?」
「つまり、もう二人は出会ってる。入学式の時点で?」
「そうだね、悪役令嬢はなぜかメインストーリーの前、もうどうかすると幼少期から転生開始するから、ちょっと現状把握に時間を使った方がいいかもね」
ジョナが、冷静に教えてくれる。が何を把握しろというんだろうか。
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じゃあ登場人物まとめていこうか。とジョナは言う
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1組目
映画監督の息子ジャック×ライバルはインスタ50万フォロワーのオリヴィア
2組目
在学中にIT企業を立ち上げるダニエル×ライバルは大企業の娘イラーナ
3組目
ロックシンガーの息子ザック×ライバルは人気youtuberのマカイリ
4組目
俳優志望のコービン×女優の娘クウィーニー
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ジョナは図に書いてくれた。イラストうまーいさすが神絵師の絵。
「で、この中に君が割って入るというわけだ。うまくやれば2年の学園祭で演劇のヒロインに抜擢されるが、このうちライバルの4人は全員、前世の記憶ってか、ストーリー展開を知ってるよ」
「・・・マジかー・・・みんな立場がスゴーイ。つまりオリーブ農園から来た私は・・・」
「現時点で全くのアウェイの田舎娘だね。逆風吹き荒れる世界から略奪愛!てやってかないといけないんだよねー」
「イベントも起きない可能性のある世界だもんなあ、ウーン、こっちから積極的にイベントをやってもいいわよね?私もインスタ始めたり?」
「やめといた方がいいと思うよ?」
「何でーさ」
「メインヒロインのリリアンは、どこにでもいる普通の子、ダンスも歌も服のセンスも修行パートをこなさないとレベルが上がらないんだよ」
「それでもなんだかんだ、最高の選択をしていくじゃない」
「それは、4択を選ぶまでみんなが待ってくれるからなんだよね・・・」
「えっと、今回は選択式じゃない」
「そうだよ、そしてセーブもないよ」
「ええっ・・・」
「つまり、30代の天然な引きこもりベイビーが、そのままメインヒロインのリリアンを演じないといけない」
「そうか・・・私は私なんだ・・・顔は清楚でいいけど、性格がちょっと・・・と言われそうな予感しかしないわ」
「どうする?ちなみにジョナこと僕は幼馴染なので、救済措置として使えるけど、じみーなエンディングにはなるよ」
「いける・・・気がしない。悪役令嬢スタートの方が数倍良いじゃん。あー来て損した。ミポルフォン様エンディングお願いしまーす」
「まあまあ、3年間それなりに楽しんでいこうよ、意外と、悪役ちゃんたちと仲良くなれるかもよ?日本の話で盛り上がったりして」
「そんな・・・男がらみでギスギスしてるのに・・・できないわよ・・・でもまあ楽しんでみるかな?」
こうして、田舎娘の逆ハーレム伝説が・・・
はじまったり、はじまらなかったりするのだった。
読んでくれてありがとうございます。
登場人物のお名前は
why dont we と boys world さんからとってます。
かっこいいですよ。