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絡繰武勝叢雲  作者: 藍戸優紀
第4話 ヒウガのビーチで水着大会!?
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水着美女コンテストの種目かこれ!?

 二人の分の水着を購入して数日が経過した、つまるところ出場登録と大会の開催が別の日だったという話であり、開催されるまでの間は特に何かをするということもなく、俺は普段通りの修行をしていた。


 まぁ、参加するのは美女コンテスト、そもそも俺が出るわけでもないし、短い期間でできることなどしれている。そんな数日で一気に体型を変えるなどできるわけもないし、太らないように気を付けるだとか、健康管理をしっかりとするぐらいの話位だ。


 なにせ紫苑も雪花もとても美人で、勝つために俺ができることなんて何もなかった。


「とは言え、それはそれこれはこれだよなぁ」


 何もなかったが、しかし二人の勝利を心配する部分はあった。


 二人が劣るのではない、二人より優れている存在がいる可能性である。なにせ二人は色気を見せる仕事をしているわけではない。


 絶世の美女の一般人と、絶世の美女のモデルならば後者の方が美しく見える可能性が高い。見られ方を理解して立ち振る舞えるのだ。




「だからこそ、これは想定してねぇよ」


 ありがたいことに、出場者の中に一人としてモデルやそれに準ずる人間は参加していなかった。


 代わりにだ――。


「さて、始まりました水着美女コンテスト! うだうだと前置きなどしても皆さんお楽しみいただけませんよね!! という訳で出場者の紹介です」


 そう言いながら出てくる面々が、まぁアレだ――。


「出場番号1番! 日向神宮より神に仕える者の参戦だぁぁっ!」

「……巫女さん」

「出場番号2番! 古来より妖退治の専門家!」

「……陰陽師」

「出場番号3番! なんとあの武家の当主直々に参戦!!」

「……女武者」


 ……キャラの大洪水ではなかろうか、俺自身としてはこの世界、異世界ファンタジーロボット作品の類だと考えている。


 なんだこれは、使い捨てヒロインのバーゲンセールか? 想定していた世界観が崩されたのは、それこそ叢雲に出会った時もあったが、人生で2度目の経験をするとは思っていなかった。


 なんてくだらない現実逃避をしてみたが、結局のところ何が言いたいのかと言えば、……まぁ、つまり、くノ一だ雪女ではキャラが埋もれる気がして仕方ないのだ。


 それも今出場している彼女らはみな、最先端のオエードで流行のデザインのモノを身につけている。


 キャラが濃くて、デザインも最先端の美女たち、しかもこれが二桁……皆の出番は後半である。正直なところ――。


「出場番号22番! おおっと、余に隠れ影に忍ぶ、くノ一からの参戦だ!」


 キャラ被りすら想定していて、それが現実になってしまった。

 

 これではまずい、この手の大会では目立たねばならない。金髪巨乳しかいないところに、黒髪貧乳がいたならば目立つ、つまりキャラ属性の被りとは、被っていない者をそれだけ目立たせるわけだ。


 つまるところ、現状二人が目立てる可能性などかけらもないように感じられ――。


「出場番号66番の紫苑さ――! おおっと、これは!?」


 司会者の言葉が、先ほどまではすらすらと言っていたのに、急につまりだした、それほどにひどいモノでも出てきたのか? 俺はそう考え、視線を上にあげれば――。


「ま、初対面の俺はともかく、仲間のことは信頼してやりな」

羅刹(らせつ)……、お前の作戦か?」


 紫色のビキニを身に着けた、紫苑の姿が会場の視線をくぎ付けにしていた。


「この世界、基本的には俺の前世の視点で見れば江戸時代レベル」


 俺の隣にいつの間にかいた羅刹が、何を企んでいたのかを口にし始める。


 事実、紫苑以外に今会場で見える範囲にいるのは、最先端の水着を着ている。


 ただしそれは、江戸時代レベルの話だ。俺の記憶が正しければだが、ビキニは俺の前世の世界では第二次世界大戦のあとに誕生した代物だ。


 つまるところ、紫苑は未来を先取りしているのだ。


「これが正しい転生者の知識チートって奴だなぁ!」


 キャラ被りがなんぼのモノだ、アレを着ている人間はここに一人しかいない。それもすさまじく似合っているのだ。


「しゅ、出場番号67番っ! な、なんという最先端、未来に生きるモノがもう一人!?」


 それは当然雪花の姿、堂々と出てきてポーズまで決めているあたり、二人はガッツリと覚悟を決めているらしい。


 彼女もまた水色のビキニを身に纏い現れた。二人だけ時間が違うと感じられたのだ。


 他の参加者に向けられていた、会場の視線の全てが二人にくぎ付けだ。あまりにも未来に生きている2人の姿は、意図も容易く他者との差を作り出した。


「……だが、まだこれで勝ったとは言えないぞ」


 この勝ちが確定したかのような現状でありながら、羅刹はそう口にした。


「来るぞ、お前も感じ取っているはずだ」


 彼の言葉と共に、周辺の空気の臭いが変化した。


 なんというべきか、実に甘い……、幸せを感じさせる甘さだ。


「あらぁ、似たような水着を選ぶ人がいるとは思ってなかったわぁ?」


 あの女はっ、そうだ……。


「出場番号72番! 田井大愛(たいだいあ)さん! なんとこちらは――」


 俺がすさまじい嫌悪感を感じた女だ、そして身に着けているのは――。


「スリングショットだとぉっ!?」


 スリングショット水着、ワンピースタイプの水着で、体の側面に布がないモノを指す言葉。扱く当たり前の話だが、こいつもまたこの世界が近いと思われる、前世の江戸時代において存在しない水着。


 ビキニが第二次世界大戦後だとするのならば、こちらは21世紀直前に誕生したものとされる。


 つまるところ――。


「未来を、未来を行こうとした俺が、その先を行かれただとっ!?」


 隣で羅刹が地に這いつくばっていた。勝利するために、この時代にないはずの発想で戦った彼が、その先を行かれたのだ。


 勝ち負けが今決まったわけではないが、しかし発想のスケールで彼は負けたのだろう。


「……しかし、なぜアイツは――」


 この時代の命のはずなのに、この時代にない未来のモノを選んだのか。いや、選べたのかの方が正確か。


 なにせ、選ぶためにはその存在を知らなければならないのだから。


「……少なくともあの女、何かあるな」


 自分が感じていた違和感、そして嫌悪感には理由があるはずだと、俺は確信を持って言えるようになった。


 それはそれとして――。


「こぼれそうで、まぁ心配になるな」

「分かる」


 巨乳などという言葉がちんけに感じ、爆乳という言葉すら鼻で笑うような、奇乳とでも言うべき世界の彼女。少し動いただけで、まぁこぼれそうに見えて心配になるのだ。




 そうして、例の女の後にも数人の出場者が出てくるものの、はっきりと言ってパッとしない。


 というよりかは、3人が未来に行き過ぎたのだ。


「……さてさて、それでは出場者がそろったところで、まずはこの大勢の中から選抜をしなければなりません」


 時間の問題もあるだろうし、審査員も面倒くさくなるだろうからな――。


「さて、西洋のある国ではこのような言葉が残されています。 美しさとはつまり、その肉体の力にも宿るのだと」


 何言ってんだこいつ。


「つまり、強き肉体は美しいのです」


 馬鹿言ってんじゃねぇよ。


「そして、水着を着た人間が何をするのかなど決まっています」


 ……おいおい、まさかそう言うことか?


「第1種目!! 水泳対決!! これより皆さんには全力で泳いでいただきます」

「……これが水着美女コンテストの種目か?」


 つい口に出てしまったが、まぁ仕方ないだろう。それはもう別ジャンルの競技だ。


「一定順位以下の選手は全員強制的に脱落とします」


 ……そしてこのルールを聞いておれは察した、会場に立つ一人の女が、明らかに青ざめていたのだ。


「……海見るのも初めてって言ってたからな、多分アレだ」


 雪花泳げねぇんだわ、あれ。

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[一言] >たいだ いあ お前かーい! 雪花……ガンバ!!
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