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絡繰武勝叢雲  作者: 藍戸優紀
第1話 絡繰武勝叢雲見参!!
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デカいということは強いということだ

 突如として天守閣の中に存在したことが判明した、謎の巨大ロボット叢雲。


「……せ、世界観が壊れる、例えるのならば……作者がなんとなくで出したくなったから、急に脈絡なくロボットが出てくるようになった感じじゃねぇか!?」


 なぜかそんな記憶があるからこそ、俺はそう口にしてしまう。


 将軍様曰く、全長34mで体重360tの巨体がそこに在るわけである。別段科学技術が再現できるほどに、薄い前世の記憶の中にあるわけではない、がしかしこれは明らかにこの世界の技術で見た時に納得がいく代物ではない。


 それはそうだ、なにせこの世界はせいぜい日本の江戸時代程度の技術しかない(・・・・)。前世の令和と呼ばれた時代の日本でも、巨大人型ロボットを、それこそ切り札とするような代物とはなりえない。


 では目の前にあるこれは何だ、異形の大仏か何かであろうか? 民草のために祈りを捧げろそうすれば仏様が妖を退治してくれる、などという話であるのならば、はっきりと言ってこの将軍の言うことには従えない。


 祈ったところで現実はそう変わらないのだから。




「さて、この叢雲は転生者に与えられる特殊な力を増幅するマシンだ」


 ……おっと、それは俺が使うのは不適では? チートスキルどころか微妙な能力すらありませんよ?


 車の免許がない人間に高級自動車を渡すような、実に無駄な組み合わせではなかろうか?


「そしてこれを作り出したのは私と共に戦い――」


 俺とは違う、力が有る奴が成し遂げた偉業だろう?


「この叢雲の犠牲となった者たちだ」


 などと考えていた俺は実に現実に裏切られることとなった。


 将軍様の話は続くが、結論から述べるのであればこの叢雲……誕生経緯からして呪いか何かだとしか思えない。


 さて、ここで一つたとえ話をしよう。身長160cmと身長200cm越え、どちらが強そうだ?


 つまりはそう言うことだ、このマシンが作られたのは妖相手に人のスケールでは、立ち向かえなかったからだ。どれほどのチートスキルを持っていたとしても、そもそも戦いの土俵にすら上がれなかったのである。


 どれだけ素の殴り合いが強くても、対戦ゲームをするにはそのゲームを持っていたり、人数分のコントローラーが必要なように、そもそもの前提条件を満たしていなかったのである。


 だが当たり前の話だが、叢雲という巨大ロボを現実のものとするのにそれ相応の無茶をせざるを得なかった。


 ただの機械人形では妖と戦えない、チートスキルは強力だがそもそもの土俵に上がれなかった。




「だからそれを叢雲に搭載したと?」


 その命と引き換えにである。


 自らの命を代償に、自らの力を機械に宿させた。そのうちの大半が無駄死にとなり、極僅かしか残らなかったのだという。


 あぁ、一つの切り札のために数百人が死んだ、そしてそれを――。


「皆喜んでしたって……」


 その時代の転生者は、どこか狂っているのではなかろうか? そう簡単にホイホイと死ねるモノだろうか? 例えそれしか方法がないとしても自ら死ねるのか?


 少なくとも俺には無理だ。


 だが、現在の将軍が、転生者を探したのも理解はできた。


 恐らくだがこの叢雲、転生者にしか使えないのだろう。仮に動かせても搭載された、転生者の力は転生者でしか使えないのだろう。


 つまりはこれを使うための条件とやらに適合したのが、俺だけだったのだ。


 なるほど、常識的に考えてド素人でしかない自分よりも、優れた侍や忍者に戦闘を任せる方が良いに決まっている。だが、そもそも土俵に上がれない連中に任せるよりも、勝ち目が薄くとも土俵に上がれる奴に任せる方が勝てる確率は上がるだろう。なにせ戦うことすらできないのなら、勝率はどれだけ頑張っても0の不戦敗が確定する。


「一つ聞きたいんですが、よろしいですか……将軍様」

「ふむ、なんだ?」

「俺は初代将軍と共に戦った者たちのような、特殊な力はないのですが」


 だからこそ正直に口にしなければならない、相手を落胆させるだけの、勝率が低下する現実だとしても告げなければならない。




「ならば問題はない、先代の乗り手……初代将軍様も転生者でありながら、なんの力も持たなかったと言われている」


 紫苑から告げられた事実に、俺はというとあんぐりと口を開けて驚いていた。


 いやいや、せっかく覚悟を決めて告げた俺の気持ちも考えて欲しい、というかなんで無能力の人がほかのチートスキル転生者を率いてんだよ!?


「曰く初代様は、ものすごくじゃんけんが強かったと伝えられている」


 リーダー決めるのじゃんけんで決めるなよ!? 初代様の時代の転生者はバカしかいなかったのか!?


「ちなみに歴史書によると、この第1回将軍決定戦~ポロリもあるよ~の時に――」


 テレビか!? テレビ番組か!? 俺の前世が生まれるよりも前のテレビ番組か!?


「初代様が股間をポロリしたらしい」


 歴史書に残すなそんな話!? というかじゃんけん大会でなぜポロリする!?


 いかん、どうでもいい情報が多すぎやしないか? 俺がそう考えていたその時だ。


「つまりは自分の力に自信なんてなくてもいい、お前が生き残ることを優先して戦ってほしい」

「やるとは言ってないんだけど――」

「やらなきゃ死ぬだけだ、やっても死ぬかもしれないが、生き残れる可能性はやる以外には存在しない」


 あぁ、だからこそ初代将軍の時代の転生者たちは喜んで死んだのか、それ以外の選択をすると問答無用で滅ぶから。ならば未来にかすかでも希望を残せる選択をしたのか。


「……もし、俺が死んでも文句は言わないでくださいよ?」

「そのころには儂も死んどるから問題ないな!」


 ガハハと笑う将軍(おとこ)の姿を見て、実に覚悟が決まっているものだと認識できた。これが人の上に立つ人間が持っているべきものなのか、そう理解した。


 はっきりと言って、俺自身戦えと言われて戦うことに拒否反応はない。だってしなかったら、死ぬだけだからだ。一生遊んで暮らしてもまだ余裕があるほどの金銭があるならともかく、そうでもない人間がしたくもないのに働くのと同じようなものだ。それをしなければ、俺が生きる未来の可能性は潰えるのだ。




「で、頑張ったらいくらくれんの?」


 それはそれとして頑張ったら頑張った分、見返りが欲しいのである。霞食って生きてる仙人ではないのだ。


「ガハハハッ! それはそうだな……とりあえず戦うのならば、これよりお前の家を武家とする」


 百姓の家というのに不満はなかったが、それはそれとして武家というのはありがたい。


 刀の国において身分制度というのは大した意味を持たないのだが、それはそれとして百姓で日本各地をぶらぶらするというのは、違和感を生じさせるものである。この辺り武家の者であれば、それこそ武者修行とでも言っておけば、人は勝手に納得するのだ。


「後は、まぁアレだ……儂が叶えられる範囲での願いなら叶えてやる、だから無茶言うのはやめろよ?」

「不老不死にしろー! とかは駄目と」

「あぁ、ダメだ」

「ギャルのパンティをくれーは?」

「……ギリアウト」

「冗談ですから真面目に考えんでも」


 叶えられる範囲で構わない、この国で彼の言うことを止められるとすれば、俺がよっぽどまずいことを言いだした場合だ。そんな場合は叶わない方がいい願いだろう。


 実質的にどんな願いも叶うのだから、戦う理由としては十二分でむしろもらいすぎなぐらいだ。


「まぁ、そこまで言われたらやりますよ」


 そう告げれば将軍様が満面の笑みを浮かべ立ち上がる。そうして後ろに置いてあった刀に手を伸ばして――。


「では血を流してもらうとしようか!!」

「なんですとぉぉぉぉ!?」

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― 新着の感想 ―
[一言] おお人柱…… 武士の身分貰えたのは重畳重畳。 血を流す……多分あれなんでしょうが、健康に問題無い量だといいですなあ。
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