表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】陰陽師のお仕事 〜歴史の証人〜  作者: カズモリ
1.前編 はじまり
6/50

6.予備知識と特訓1

 部屋に戻ると太常が、陰陽師と五行説について説明してくれた。


『陰陽師は五行説に基づいて各々の能力の系統や、力を発揮します。昔は妖退治やら祭事を行う際は必ず陰陽師が取り仕切っていましたが、今の世ではそのようなことはされていないと思います。ただ、未だに陰陽師の能力を途絶えさせないために、いわるゆるスキルキープと、陰陽師の能力を使わないと解決できない事のために陰陽師を用います』


 机の前に碧が座ると机の上にあった新品のノートが開き、鉛筆が勝手に真っ白のページの上で止まった。


『五行説とは春秋戦国時代の中国の思想で、万物は火水木金土に属します』


 頭に声が響くと鉛筆が動き、五芒星がノートに書かれた。各々の頂点に火、水、木、金、土と記した。


 火は炎や火のような性質があり、方角は南、色は赤、季節は夏。


 水は正に波や水のような性質があり、方角は北、色は黒、季節は冬。


 木は木や花などの植物の性質があり、方角は東、色は青や緑、季節は春。


 金は鉱物や金属の性質があり、方角は西、色は白や金、季節は秋。


 土は万物の成長があり、方角は中央部、色は黄色、季節の変わり目、つまり土用をさす。


 これらは全て五行説の特徴だ。

 他にも、いろいろ(ことわり)があるらしく、大常は徐々に覚えるよう言った。


 英はもともも木に属します。また、碧様の名前自体も碧なので、木の性質があるものを極めれば能力が上がりやすいですよ、と教えてくれた。


 木は五情で喜をさすので、楽しいことを沢山思い浮かべて気を体に溜めてください。


 もしかして、手紙を書いた時、ワクワクしながら書いたから、だから、文送りができたのかな。と、碧が思うと、そうです、と太常が返答した。


 気持ちと力がリンクするののか。

 気持ちのコントロールが大切なんだな、と碧は思った。


 木は肝臓を意味します。だから、腹式呼吸を意識して血の巡りをよくすると、肝臓付近に血が集まります。そうしたら肝動脈を意識して血管をキュッと萎ませて、気を溜めます。


(よくわからない説明だな)


 碧はそんなことを思ったが、とにかく腹式呼吸を意識すれば、きっと次のステージのイメージが湧くのだと思い、深く呼吸をした。


 腹部が膨らむように息を吐く。

 体が熱くなってくる。


 うまい、うまい、と合いの手を入れる太常に、碧も嬉しくなって、更に深呼吸をする。


 すると、ドクっと一気に血が全身に回るような感覚になった。

 

『喜び、という感情を思うと、効果的です。幸せなことを思い浮かべて瞑想すると、きっとうまくいきますよ。気の流れのコントロールこそが陰陽師の全てですからね』


 太常が碧の腹部に力を入れ、碧の手のひらから桃色の朝顔をぱっと出した。碧は、目を細くして笑った。


 あの、手紙の花だね、と碧が太常に言う。

 碧はほんの一瞬だけクスッと笑っているような太常の姿が見えたような気がして、碧の心が温かくなった。


 訓練から1ヶ月ほど経つと、太常の姿が見えるようになってきた。

 気をコントロールすると、式神が見えるようになってくると言われた。


 他人の作成した式が見えるようになると、次は自分の術を習得し、その後、自分で式を創れるようにするらしい。


 式は自分の守護者であり、武器となる。

 その者の性質を最も反映する陰陽術となるので、力が未熟なときに敢えて式を作ると良いらしい。


 能力がついてから、式神を創ると自分の欠点を補うように本質と異なるものを創りがちになる。

 そうなると半端な式となるから、敢えて未熟なうちに創るらしい。


(――式神ねぇ)


 碧は太常を見ることができるのが不思議だなと思った。

 安倍晴明といた時から、太常の姿は見えていた。


 帰宅する直前で碧の体の中に入り突然見えなくなった。

 自分の体の中にいたのに、なぜ今は見えているのか、不思議で仕方がない。


「ねえ、私はなんで太常を突然見えるようなったの? 安倍晴明も会っている時も見えたのに、命令で私の体の中に入って見えなくなったよね? それがどうしてか今は見える。なんで?」


 太常はコホン、と咳払いをし「晴明様、ですよ。碧」と言って、自身の主人に敬意をもたせる。


「そもそも私に姿というものはありません。ただ、私は姿を体現化できます。あなたと初めて会った時は体現化しました。ただ晴明さまは、貴方を守るよういったので、碧の体の中に入って、私自身の声を飛ばしました。ですが今は訓練中です。あなたの中にいてはわたしはみえないですし、そもそも貴方の能力が増しているのかわからない。私が貴方の体から外に出ることで、碧は私の気の流れを察知して、自ずと存在を見分けるようになります。体現化していない状態で私を認識できれば陰陽術が使える程度には向上した目安にはなります」


(なるほど。そんな便利な能力があるのか。お互いに)


「じゃあ、自分で式を創る時、体現化して作るの? それとも太常みたいに姿がない状態で作るのが普通なの?」

「それは碧次第ですよ。晴明さまの式は体現化したものとしていないもの、どちらもいましたよ。各々一長一短がありますから」


 式神は複数所有できるのか。


 姿の体現化ができるなら、声はどうなのだろうか。

 初めて会った時は確かに耳から聞こえた。今は頭に直接響くが。


「太常みたいに直接頭に声が響くことってできるの? 太常の声は直接聞こえたり、響いて聞こえたりする。それはなんで? それも体現化?」


「そうですよ。声も体現化しました。でも、普通は疲れるので、電波のように頭に直接送ります」


 奥が深いんだな。


「未熟と言っても今創ると方向性も何もないので、日々鍛錬を繰り返していきましょう。そのうち、碧の能力も開花すると思うので、そのタイミングですかね」


 太常が碧の頭の上に手を置いた。

 そこからは体温を感じることはないけれど、心がほっこりするような温かさがあった。


 碧は照れたように顔を赤らめて頭をポリポリかいた。

 ――うん、頑張ろう。


 訓練開始から3ヶ月目になると碧にも能力が出始めた。植物系の能力らしく、手のひらから花が出る。


 更に1ヶ月が過ぎるととてつもない植物のを土から生やすことができた。

 ただ、むやみやたらと植物を生やしても仕方がないので、太常の勧めもあり燈と碧は燈の実家が保有する山に行き、碧の能力を見ることにした。


 山奥はとても空気が澄んでいて気持ちが良かった。


 碧が中腰になって、手のひらで土に触れ「育て」と言うと、土から木がいくつかニョキニョキ生えてきてあっという間に最初から生えていたら周囲の木と同程度の幹の太さと高さにまで成長する。


 術を使うと疲れるため、碧は土にいくつか汗を垂らした。額の汗をハンカチで拭くと、気に触りながら「消えろ」といった。数秒後に碧が生やした木は消えてしまった。


 この一連の術を燈はスマートフォンの動画で記録していた。


「なんで録画してるの?」


 汗だくの碧が燈に近づいてきた。


「うーん、まあ成長の記録みたいな、ね」

「なんだそれ」


(うん、また裏があるんだろうなぁ)

 汗をタオルで拭きながら、碧はそう思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ