24 今日は歓迎かたがた、飲みましょう
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「今日は歓迎かたがた、飲みましょう」
「いいですね~、ぜひ」
そして、その夜、僕は根角さんと飲みニケーションすることになったのだ。
至福の根角さんは、若く見える。
おじさんだなんて思っちゃってたけど、僕より3,4歳上く。らいなのかな…
それに、物静かな人だと思てたけど、お酒が入るにつれて、しゃべるしゃべる…。
「ドブネズミって、ネーミングがひどくないですか?」
「え?」
「そんな名前、ドブだけが生息場所じゃないのに。もちろん、ドブに住んでる個体からはドブのにおいがするかもしれないけど。全員じゃないし…。」
それから、根角さんは、いかにネズミが迫害を受けているか、機関銃のように語りだした。
僕にとっては、初めて出会う考え方だから、新鮮だった。
新鮮で楽しかったのだけど、だんだん、根角さんはエスカレートしていき、
根角さんは箸を片手に学校の先生のように、もしくは、政治を論じる演説者のように、白熱してきた。
「進化論的に考えれば、ドブネズミとクマネズミの二種は力が拮抗したライバル関係にあり、生き延びるための方法として、二種が出合わない生態を選択したと思われます。それが、今、チームを組んでいる。これが、どういうことか分かりますか。」
「すいません。ハイ、まったく分かりません。」
安川は、ぺこりと頭を下げる。根角さんって・・・。お酒飲むと立ち悪い。
「そもそも、地球はネズミが支配するべきなんです。」
「お、過激ですね。」
僕も酔っぱらってきた。楽しくなってきたぞ。
「ネズミこそ、日本の支配者。」
「支配者―。」
「ネズミこそ、世界の支配者。」
「支配者―。」
「人類はネズミにひれ伏す。」
「ひれ伏すー。」
「今こそ、支配者交代。」
「こうたーい。」
「ネズミ万歳。」
「ばんざーい。」
そして、
ついに根角はラップで踊りだした。
真面目な青年風なのに、ラップはかなり本格的だった。
僕の踊りは、まったくタコ踊りの域を出ていなかったけど、観客もいないことだし、隣でクネクネ踊って根角さんのラップに合いの手を入れる。
「ハイ、理由ぅ。」
「はい、理由~」
「ハイ言うぅ。」
「はい、言う~」
「ハイ、ひとつぅ。」
「はい、ひとつ~」
「ハイ、素晴らしい~繁殖力ぅ。」
「はい、繁殖力~」
「ハイ、ふたぁつぅ。」
「はい、ふたぁつ~」
「ハイ、強靭な免疫力ぅ♪」
「免疫力~」
おっと、ここで根角さんの早口台詞
「ネズミは、あの、水俣病で猫がバタバタ死んでいった時も死ななかったんですよー」
「ハイ、みっつぅ。」
「はい、みっつ~」
「ハイ、高い知能ぅ。」
「知能~」
そして、また早口台詞。
「みんなが知らないところで、めっちゃ、頭を、使ってます。」
最後の「す」で根角さんは敬礼したまま、バタンと倒れて、グーグーいびきを立てて寝てしまった。
僕も、根角さん大丈夫ですかと声をかけようとしたところで、記憶が消えた。
結局、僕たちは、この日は根角さんの楽屋で酒盛りをしたまま、寝てしまった。
モリスは何をしていたのかな、あの子はいつだって自由だ。僕たちに交じることもなく何かやっていたようだけど。




