02 ミズーラ郊外での戦闘2
架空の兵器や、現状よりも高性能の兵器が出てます。
大半のキャラはモブです。一生懸命覚えなくても良いと思う。
多分。きっと。もしかしたら。
アルファ、ブラボー、チャーリー:特殊部隊の分隊
エコーワン、エコーツー:アパッチガーディアン(攻撃ヘリ)
ゴルフワン、ゴルフツー、ゴルフスリー:ブラックホーク(特殊部隊を乗せるヘリ)
ミズーラ郊外 MST(山岳部標準時間)AM5:02
南南東の降下ポイントに到着。エコーワン(アパッチガーディアン)が周辺を、特に森の入り口を警戒しながら飛ぶ。ゴルフツー(ブラックホーク)が荒れ地に着陸すると、特殊部隊の隊員達が少し離れた場所に向かって散開する。遮蔽物が殆ど無いため極力体を低い姿勢にして周囲を窺う。そしてスポット2が降ろされて、兵士のそばまで自動で移動する。
スポット2は四足歩行ロボットの改良型だ。約353ポンド(約160kg)の荷物を搭載したまま人の行軍速度に合わせて約30km走破出来る。弾薬や糧食、その他物資を乗せており、兵士を自動追尾する機能も有する。電動モーターなので稼働音は比較的小さい。
「こちらブラボーワン(特殊部隊分隊の指揮官)からグランマ(司令本部)へ。目的地に到着。行動を開始する」
「ブラボーワン、グランマ了解」
ブラックホークが上空に上がり、ガーディアンと供に周囲の警戒に移った。ブラボーワンがハンドシグナルで隊員に指示を出す。数人の兵士がドローンを起動し、隊の上空に浮かび上がる。
「ブラボーワンからグランマへ。フェアリー(偵察ドローン)を展開した、操作を任せたい」
「ブラボーワン、グランマ了解。こちらで操作する」
司令本部のオペレーターが自身のディスプレイに衛星写真を表示させ、そこにタッチペンで線を書き込むと、フェアリーが自動で偵察を開始する。フェアリーにはAIが搭載されており、簡単な指示を出せば自動で障害物を避けながら飛行し偵察が行える。通常のカメラ以外にも熱線映像装置が付いており、熱による発見も可能である。それらの画像はスポット2に搭載している機器により、司令本部側のコンピュータにも連携され発見精度を高めている。
森内部にフェアリーが進んだので、それに合わせて敵がいない事が確認された範囲がブラボーチームの眼鏡型ディスプレイに表示される。ブラボーワンがハンドシグナルでサインを出すと隊員達が森の入り口まで移動を開始する。しかしスポット2は動かない、だいぶ距離が離れた後隊員達が移動した方向に自動で歩き始める。
アルファ分隊、チャーリー分隊も降下地点に到着、順次フェアリーを展開して森の入り口に向けて移動を開始する。
ミズーラ郊外 MST AM5:25
「こちらアルファワン(特殊部隊分隊の指揮官)からグランマへ。AKと思われる痕跡を発見、北へ移動していると思われます」
北に降下したアルファ分隊がAKの痕跡、大きな足跡を発見した。それを基に司令本部側で移動方向や距離が計算され予想地点が割り出される。エコーワンとエコーツー(アパッチガーディアン)が予想地点に急行する。そしてオペレーターがフェアリーの探索方向を予想地点に変えるとフェアリーが方向を変えて飛んで行く。
「アルファワンからグランマへ、痕跡を辿って移動する」
「アルファワン、グランマ了解。ブラボーとチャーリーはそのまま探索を継続せよ」
ブラボーとチャーリーから了解の返信が返され探索を継続する。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
先ほどからおかしな音が聞こえる、多分空飛ぶ鉄の箱だろう。一度は撒いたと思ったが発見されたか? いや攻撃が来ないという事はまだ具体的な位置までは分かっていないのであろう。
森の中を歩き続けると森が切れているのが見えた。正面にも木はあるが間隔が広く隠れ難い、こっちは駄目だなリスクが高い、森の外には出ずに森の中を今度は右に移動していく。
ブーン。ん何の音だ? ブーン。やはり何か近くに聞こえる。身を隠し周囲を窺う。
小さな何かが宙に浮いていて、そして俺の横を通り過ぎた、と思ったら戻って来てフワフワと近くに留まっている。まるで俺を見ているような、同じような物が複数存在する気配がする。まさか俺を探しに来たのか?
弓を取り出して浮いている物体を射抜くと簡単に壊れて地面に転がった。弱い、弱いな。そして似たような物に矢を放つと、除けもせず更に2つ地面に転がった。まだ同じような存在が居ると思われる、しかしそれらは上空に急上昇して行った。これは位置がバレたか、転がった物を回収して更に右へ右へと移動していく。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
司令本部 MST AM5:45
「AK捕捉。正面ディスプレイに画像が出します」
司令本部のオペレータが操作を行うと正面のメインディスプレイに真っ暗な森の映像が映るが、どの辺にAKが居るのかは良く分からない。
「画像処理します」
少しずつ画像に修正が入り、人の輪郭というか形がはっきりと強調されて表示されていく。明らかに大柄の人のような存在が分かる。そしてAKが弓を構えて矢を打ち込むような仕草をした。
「フェアリースリーロスト…同じくフェアリーフォー、ファイブロスト。緊急退避します」
複数の自動偵察ドローンが破壊されて信号と映像が途絶えた。オペレータが壊されない様に緊急退避の命令を出した。
「司令。現地に向けてMUOからの増援を派遣すべきです。それとブラボー、チャーリーを回収し、この先AKが移動すると思われる場所にいつでも派遣出来るようにするのが良策かと」
作戦士官がグレースに提案をし、グレースが少し考え込む。
「MUOから増援を出して。展開中のヘリの残燃料は?」
オペレータが待機部隊に出動指示を出し、別のオペレータが残燃料を報告する。
「時間にして約2時間です」
「ブラボー、チャーリーを回収、適切な地点に送り届けた後、順番にミズーラ空港で補給を。ゴルフワン(アルファチームを輸送したヘリ)は、先にミズーラ空港で燃料補給。エコーワン、エコーツー(アパッチガーディアン)はゴルフワン補給完了あるいは増援到着後にミズーラで補給を。ブラボーとチャーリーの派遣場所を至急検討して」
グレースが士官に指示を出す。直ぐに作戦立案用AIが適切な地点を割り出し、士官とグレースにて内容を確認後、全部隊に共有が行われる。そして正面ディスプレイにAKと思われる人物の静止画像が、より一層綺麗な形で表示された。
「アレが素顔じゃないわよね? 何で夜中の森で仮面のような物を被っているの?」
グレースが士官に問いかける。
「分かりません。もしかすると暗視装置のような物かも知れません」
「なるほど一理あるわね」
特殊部隊の隊員達も暗視装置を付けているから夜の森の中でも行動が出来る。時期に日が昇れば分かるわね。
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ミズーラ郊外 MST AM6:00
「ぐっ」
ガサッという音の後に男性の小さな、押し殺した声が漏れた。一斉に周囲を警戒する兵士、しかし周囲に敵の気配は無い。声を上げた兵士のズボン、太ももの辺りが少し破れ血が出ている。木の枝と蔦を使ったトラップに引っかかったようだ。
「トラップだ。注意して進め。サム傷の手当てを。傷の手当て完了後ついてこい」
衛生兵のサムが怪我をしたトムの手当てを開始する。残りの兵士達も注意深く進むが、行軍速度が遅くなってしまう。そして別のトラップを発見しハンドシグナルで共有したあと枝を指してトラップの場所を指し示す。
「アルファワンからグランマへ。罠でアルファフォーが負傷、行軍速度が遅くなる」
「グランマからアルファワン了解。注意して進め」
アルファフォーの心拍数が乱れているのが司令部の左側面のモニターでも分かる。そして負傷のアイコンが付けられた。
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「エコーツー(アパッチガーディアン)。目標地点に到着、周囲を索敵します」
司令本部の正面モニターの二つが、エコーツーからの画像に変わる。一つは真っ暗な画像、もう一つが暗視装置に映し出されている画像だ。フェアリーの反応からこの辺であることは分かっている。
エコーツーは北の森の切れ目に対して正面を向け、その状態で横に滑るように東に移動する。しばらく移動すると森の中に何か動くものが見えた。一度上昇した後、距離を取りつつもう一度同じ場所の付近を飛び、やはり何かしらが隠れていると思われる場所を特定した。
「エコーツーからグランマへ。AKの可能性有。距離をとって警戒します」
「グランマからエコーツー了解。400m以上の距離をとって監視を続けろ。増援がつき次第補給に向かえ。エコーワンは先に補給に向かえ」
司令本部でも画像解析され、コンピュータの解析結果では95%以上の確率でAKとなっている。
「ゴルフワン、ポイントタンゴ到着」
司令本部右側面のモニターのいくつかがアルファ分隊の目線カメラに切り替わる。ヘリから降りて近くの茂みに入って警戒を行っている。
「ゴルフスリー、ポイントビクター到着」
同様に右側面のモニターのいくつかがチャーリー分隊の目線カメラに切り替わった。
「司令。AKの北300mにブラボー分隊、東北東に900mにチャーリー分隊、南南西300mにアルファ分隊。上空支援にエコーツー。後25分でゴルフワンが到着予定です」
司令官の前にある指揮官用机には、簡単な周辺地図と部隊の配置状況が3Dで表示されている。
「無理に近寄る必要性は無いわ。見失わないで」