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第8話 二番弟子、冒険者登録をする

家庭教師のマイアさんが来てから一週間が経った。

始めはさっぱり分かっていなさそうだった正負の魔素の理論も何とか理解してもらえ、マイアさんは自力で一通りの訓練メニューをこなせるようになった。


残念ながら気の操作の感覚はまだ掴めていないようだが、今の調子でいけばそれもあと1か月でいけそうだな。

魔圧はてんで低いが、そうとう狩りの経験を積んだのだろう、最大魔力量だけなら俺より多いからな。成長が早いのはそれもあってのことだろう。


そして今日だが、俺はそろそろまた狩りに行こうかと思っている。

今度は、マイアさんと一緒に。

魔法と気の複合技を、早いとこ実演した方がマイアさんのモチベーションアップに繋がるだろうからな。


「行こっか」


「そうね。私も、家庭教師を続けるためのお金を稼がなければならないもの」


「……授業料免除は、マイアさんが気を扱えるようになってからだぞ?」


「分かってるわよ」


そう。

一週間前、マイアさんは「私が教わってるのにお金をもらうのはおかしいから」と授業料の免除を提案してきたのだ。


だが、実際に授業料を免除するにあたっては、俺の実力について両親に話さなければならない。

マイアさんが気を扱えないうちは、それは時期尚早だ。

そう判断したので、妥協案として「マイアさんが気を扱えるようになったら、授業料免除について親に話す」としたのだ。


……ちなみに今ため口で話しているのは、俺の世渡りスキルで自然に移行した賜物である。


「そういえば、テーラスはもう冒険者登録は済ませてるの?」


「あ、それまだだな。まず先そっちにしよっか」


マイアさんありがとう。重要な事を忘れていくところだった。

前回魔物を狩った時は気にしてなかったのだが、マイアさん曰く「冒険者と一般人では戦利品の売値が倍違う」らしい。


冒険者を保護する措置なのだそうだ。


小遣いは多ければ多いほど良いからな。

ちゃんと冒険者登録は済ませよう。


☆ ☆ ☆


屋敷をでて30分ほど歩くと、冒険者ギルドが見えてきた。

そこで、俺はマイアさんにこう言った。


「先、ギルドの中入っといて」


「……え? 何で?」


「いいから」


そう言うと、マイアさんは不思議そうにしながらも先に行ってくれた。


そこで、俺は人目につかないようミスディレクションで存在感を消した。


冒険者には、性格が野蛮な者も多い。

子どもがギルドに入ろうとしていれば、ちょっかいをかけてくる奴が出てこないとも限らない。

ギルドの中こそ喧嘩厳禁なので入ってしまえばどうという事は無いのだが、入り口付近は最も危険なのだ。


だから、俺は手品師が使うような視線誘導を駆使し、冒険者の目につかないようにギルドに入ることにしたのだ。

言っておくが、ミスディレクションは魔法でも気でもないただの技術だ。


マイアさんを先に行かせたのにも理由がある。


マイアさんは単体で見れば優秀な魔法使いに見えるはずだが、俺を連れていれば「ただの子連れの女だ」とたかを括られかねない。

さすがの俺も、目立つ美人の隣でミスディレクションは成功させられないからな。


お互いのために、別々にギルドに向かったのだ。


ギルドに入ると、マイアさんもほぼ同じタイミングで入ってきた。


「お待たせ」


「……テーラス? 今、どこから出てきたの?」


「え、普通にミスディレクションで人目につかないように入って来たよ? 野蛮人に絡まれないように」


「何さらっと高等技術使ってんの!?」


……ミスディレクションが高等技術だと?

前世では、町内会の防犯教室で子供の人気ダントツ1位を飾った技術だったんだがな。


ちと平和ボケしすぎではないだろうか、今の人類。


まあいい。冒険者登録をしよう。


「すみません、冒険者登録をしたいのですが」


「……失礼ですが、年齢をお聞かせしてもらえないでしょうか」


「6才です」


「でしたら、特別登録試験をお受け頂くことになります。こちらへどうぞ」


そう言って、受付の人は俺を別室に連れていこうとした。

なんでも、ギルドのルールとして12歳未満の冒険者登録は原則認められていないため、例外となれる実力があるかの試験を受けさせられるのだそうだ。

それも、12歳でも8割が落ちる難易度の試験をだ。


……もっとも、俺はその試験は受けるつもりは無いがな。

マイアさんが、俺たちの会話の間に入る。


「ペリアレイ魔法学園83期特待生のマイアです。私がこの子、テーラス(じゅり)君の実力の保証人となります」


マイアさんはそう言って、魔法学園の卒業証書の写しを見せた。

そう、実はこの試験、一定の優秀さを示す者の推薦があれば免除できるのだ。

エリート魔法学園の元特待生なら、言う事なしだ。


……別に俺なら、今の時代の基準で良いなら12歳児の上位20%に食い込むくらい訳は無さそうだ。

だが、マイアさんは就任以来、碌に家庭教師らしいことができないでいた。

だから、こういう所でしっかり花を持たせてあげようと思ったのである。





数分後。

俺はギルドの会員証を受け取り、受付カウンターを後にできた。

【次回のあらすじ】

テーラス樹、冒険がてらに最高級のお肉を「前世流の調理法」で調理するようです。

マイアさんの常識は、またもや塗り替えられてしまうのか?

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新作始めました! 「俺の前世の知識で底辺職テイマーが上級職になってしまいそうな件について」という作品です。是非読んでみてください!

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あと僕の別の連載も載せときます。本作と同じく、ストレスフリーに読める主人公最強の異世界転生ものです。
転生彫り師の無双物語 〜最弱紋など、書き換えればいいじゃない〜
良かったら読んでみてください!
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