第55話 二番弟子、異形を討つ──前編
「それで、そいつはどの方向にいたんだ?」
「あの方向です」
俺がサイボーグに問うと、サイボーグは1方向を指差した。
「分かった。ちょっと行ってくるから、ここで待っていてくれ」
サイボーグにそう言い残し……俺はゴドウィンと共に、空を飛び始めた。
「ゴドウィン、もっと上昇気流を起こしてくれ」
そう伝え……俺たちは、ぐんぐん高度を上げていく。
せっかく、一方的に相手の存在と位置を把握しているんだ。
今後ニャルラトホテプに奇襲をかけることを思えば、ここで俺たちの存在を知られるわけにはいかない。
ここは、俺たちが点にしか見えないほど高くまで舞い上がり……望遠魔法を駆使して、敵の位置や狙いやすい地形を把握していくのが得策だろう。
「よし、そろそろ進もうか」
対流圏と成層圏の境目くらいまで来たところで、俺たちはサイボーグが示した方向へと進み出した。
この高さまで来ると、人間にとってはかなり厳しい気候となってくるが、ゴドウィンが風魔法で酸素が十分にある温風を出してくれているおかげで、俺はそのことを気にせずに済んでいる。
俺は俺で、望遠魔法にのみ集中するとしよう。
そうして、地上を見下ろしていると……同心円状に壊滅した地形の中心に、1人の男が佇んでいるのが目に入った。
「現在の『混沌を執行する』の効果範囲はあの辺りまで……あそこでオーラレールガンを展開すれば、照準もつけやすく敵からも姿をくらませる……」
一通り確認を済ませると、俺はゴドウィンに戻るように伝えた。
まずはサイボーグと合流し、1日休もう。
今日の偵察で、ゴドウィンは結構魔力を消費しただろうからな。
ニャルラトホテプ 討伐にあたって、オーラレールガンを数発撃つことになるであろうことを考えると……討伐は、ゴドウィンの魔力が万全の状態で行った方がいい。
そして明日、サイボーグから更に情報を話してもらいつつ、今決めた狙撃ポイントに向かうとしようか。
☆ ☆ ☆
「それで……お前はあの男に会った時、どのくらいの嫌悪感を感じたんだ?」
「そうですね……俺としては、今までの殺戮対象との比較で言えば、中の上くらいの殺意を覚えましたね」
俺の質問に、サイボーグはそう答えた。
中の上、か。
ということは……ニャルラトホテプは、割と高位の魔族ではあるのだろう。
となれば、呪詛活性化も割と高い効力を持つと期待できるな。
そんなことを考えていると、俺たちはついに、狙撃ポイントまでやってきた。
「じゃあ、ここから狙うぞ」
ゴドウィンとサイボーグにそう言いつつ……俺は収納術から、オーラレールガンを取り出した。
「照準良し……。じゃあゴドウィン、早速、オーラレールガンに魔力を流してくれ」
俺が指示すると、ゴドウィンはオーラレールガンに魔力を流し始めた。
そして……俺は、オーラレールガンの魔力の流れが安定しだしたのを見計らうと、即座に1発目の気弾を発射した。
前回クトゥグアを討伐した時は、ゴドウィンには余裕を持って長時間魔力を流しっぱなしにしてもらったが……今回それをやると、ゴドウィンの攻撃意思を敵に気づかれてしまう恐れがある。
だから今回は、即撃ちが勝負の要となるのだ。
それもあってか……どうやらニャルラトホテプは、こちらの攻撃には気づいていない様子だ。
……と、思いきや。
「……今のタイミングで避けるのか」
なんと……ニャルラトホテプは、普通なら絶対に避けられないようなタイミングで気弾に気づいてから、気弾を躱したのだ。
流石、異形級というだけはあるな。
まだ幼体だというのに……クトゥグアとは、まるで格が違う。
そう思いつつ、俺は収納術でオーラレールガンを収納した。
そして……LC共振探知に、全神経を集中させた。
直後……ニャルラトホテプは、こちらに向かって猛然と突進してきた。
「……2……1……今だ」
『混沌を執行する』の効果範囲から、あらかじめ予測をつけていたニャルラトホテプの加速力を元に、俺はニャルラトホテプが呪詛活性化の効果範囲内に入るタイミングを見計らい、発動した。
それにより……急に走った苦痛からか、ニャルラトホテプは途端にバランスを失い、俺たちを素通りして反対側の地面に激突した。
それを見届けると、俺は再び収納魔法からオーラレールガンを取り出した。
……こうなることは、初めから予測が付いていた。
この場所を狙撃場所に選んだのは、180度反対方向を狙う際も、比較的狙撃がしやすい場所だからだ。
今のニャルラトホテプの体勢なら、次の気弾は避けられないだろう。
【次回のあらすじ】
お楽しみに!(このシーンに関してはこれだけ書くのが最適解な気がする)




