第38話 二番弟子、充実した連休を過ごす
過去話見返したら、美少年コンテストは夏休み前でしたね。
前話の「次回のあらすじ」で、今回の話で美少年コンテストの結果までいくと書きましたが、それは次の章が終わってからにします。
次話から次の章に入り、その章が終わったらコンテスト結果って流れにします。
混乱させてしまい申し訳ありません……
「テーラスさん、ゴドウィンさん、カッコよかったです! すごく楽しい気分になれました!」
演奏が終わると、マイアの教え子がそう言いにきてくれた。
1曲目の前半あたりまではまだフェンリルへの畏怖が抜けきっていなかったのか、教え子さんは固まったまま曲を聞いていた。
様子が変化し始めたのは、2曲目に入る前のMCのあたり。
ゴドウィンが気の利いたジョークを言ったのをきっかけに、教え子さんの表情が少し緩んだのだ。
あれ、今日イチのファインプレーだったんじゃないかと思う。
そしてそれ以降はだんだんと雰囲気に慣れてきたようで、3曲目に入る頃にはすっかりノリノリになり、リズムに合わせて体を揺らしてくれていた。
……作戦成功ということだろう。
「何というかこう……初めて聞く感じの音楽でした! 特にあの『ギュイ〜ン』って感じの音。あれすっごく元気になります!」
ギュイ〜ン……ああ、ディストーションのことか。
歪んだ魔導弦楽器の音は、確かに俺も気に入っている。
今回演奏した、「ロック」というジャンルが前世で大流行したのも、このギターの音あってのことだったしな。
今回はゴドウィンによる再現だったが、きちんと特徴を掴んでいて質の高い再現だったと思う。
「まあ、歌詞は何言ってるかさっぱり分からなかったですけど!」
……そして最後に、こんな感想を付け加えられてしまった。
「歌詞……分かんなかった?」
「テーラスさあ、どの曲も前世の言葉で歌ってたでしょ? だから、通じなかったんだと思う」
俺が聞き返すと、マイアがそう助言してくれた。
……そうか。
これ、前世の持ち歌だもんな。
作詞したのも当然前世だから、今だと古代語で歌ったことになってしまうのか。
若干、盲点だった。
「ごめんな。間違えて、古代の言葉で歌ってしまったよ」
「ううん、いいの! 私、とっても楽しめたから!」
俺はその一言で、つくづくこの子がいい子でよかったと思った。
美少年コンテストには「特技タイム」というものがあり、せっかくゴドウィンと再会したので歌でも披露しようかと思っていたが……それまでには翻訳ないし新曲書き下ろしをした方が良さそうだな。
この子の前で歌ってそのことに気づけたので、結果オーライとしよう。
☆ ☆ ☆
連休は、あっという間に過ぎた。
予定より早く「妖艶なるもの」を討伐でき、そして帰りも時短できることになった俺は、休みの間マイアの教え子の家に居させてもらうことにしていたのだ。
そして、そこで新曲を作詞作曲したり、化粧品を加工したり、マイアの指導の様子を見てアドバイスを出したりと、充実した時間を過ごしたってなわけだ。
タダで泊めて貰うのも悪いので、マイアが教え子と森で実戦する時にはそれについて行き、狩りに参加した。
俺とゴドウィンが狩ったぶんだけで1ヶ月は暮らせるらしいので、まあまあ恩は返せたんじゃないかと思う。
連休最終日、マイアたちと別れてペリアレイ魔法学園の寮に戻る際には、ちゃんと泊めてもらった民家への挨拶にも行った。
「妖艶なるもの」を無事倒してきたことを報告するとホッとしたような表情を見せてくれたが、そのあとゴドウィンを紹介すると、家族全員が腰を抜かしてしまっていたな。
民家の主人、ヘリオには「とんでもないコネが出来てしまったのかもしれない……」などと言われてしまった。
そして挨拶を済ますと、再び高速飛行。
そんなこんなでようやくペリアレイ魔法学園が見えてきた時……俺の「LC共振探知」に、とんでもないものが写ってしまった。
「なあゴドウィン、気づいてるか?」
「何にだ?」
「奴の襲来に、だ」
空を指差し、俺はゴドウィンにそう言った。
「奴……」
そう言って、ゴクリと唾を飲み込むゴドウィン。
「あれ、俺たちで倒すしかないよな」
「そうだな。奴の襲撃を事前に止められる者は、今は我らしかおるまい」
……こんなタイミングで、来てしまったのか。
気づくのが遅くなってからではまずいと思い、週一で探知するのをノルマとしていたので、襲撃までにはまだまだ時間はある。
それでも今、奴の襲来が確定した以上、こちらも武器を完成させなくてはならなくなった。
これは、今後ちょっと忙しくなりそうだな。
【次回のあらすじ】
いよいよ新章突入!
まずは、「完成させなければならない武器」の材料を集めにいきます。
定番のあの金属やこの金属も登場するので、お楽しみに!




