第27話 覆面更生員の戦い・1
これ本来なら日曜日にあげるべきだった分なので、次の更新は明日します。
戦いは、覆面更生員の1人が放った炎の球によって始まった。
……なかなかの威力だな。
前世基準なら大したことはないとは言え、普段の授業での教師の実演に比べれば桁違いの攻撃力だ。
それに続き、他の覆面更生員たちも魔法を放った。
どれも、狙いはリューナ以外の6Dの連中だ。
……まずは取り巻きを倒そうって判断か。
ありがたい話だ。
覆面構成員では、リューナには敵わないのかもしれない。
それでも、その取り巻きだけでも取り押さえておいてくれるとしたら。
俺が対リューナ用の威力の魔法を放った際、その射線上に取り巻きが入って、意図せず殺してしまう事故は防げる。
そこを気にせずに済むというだけでも、だいぶ戦いやすくはなるだろうな。
取り巻き側も、なかなかの応戦ぶりだった。
そこらへんに転がっている岩をぶん投げて魔法を迎撃するなどして、可能な限り魔力を温存する作戦のようだ。
覆面更生員は教師で構成された部隊というだけあって、人員の殆どは中高年だ。
不良側を魔力で圧倒することはできても、その差を体力でカバーする戦法をとられては互角……いや、かろうじて不良側に軍配が上がることも考えられるな。
と、思ったが……
「パイロ──」
「──ブリザード!」
1人の覆面更生員が放った炎の球が岩で相殺されそうになった時、今日の部隊唯一の若手がボレーシュートの要領で炎の球の軌道を変えた。
軌道が変わると同時に氷魔法を纏ったその炎弾は、別の不良へと飛んでいく。
「ぎゃあああああ!」
狙われた不良は氷炎球に反応しきれず、モロにダメージを負うこととなった。
おっと、迎撃に失敗した岩が、あらぬ方向へと飛んでいっているな。
このままでは、窓が割れかねない。
「よっと」
身体強化を胸に集中させて、岩をトラップした。
手出しはするなと言われているが……周囲への被害を防止する程度なら、矜持を逆撫ですることも無いだろう。
相手側の1人が行動不能となった事で、戦いの流れは一気に覆面更生員側へと傾いた。
1人1人を狙う魔法の密度が上がる分、不良側の応戦の難易度が上がったからだ。
相変わらず不良たちは周囲にあるものを形振り構わず投げて魔法を迎撃しようとするが、投げるものの選定が若干適当になってきているのか、たまに魔法を相殺しきれていない時がある。
このままいけば、ジワジワと戦いを終結させられるだろうな。
──リューナさえいなければ、ではあるが。
実はここまで、リューナは一切攻撃に参加していない。
リューナに向かって飛んでいく魔法さえ、その取り巻きたちが処理しているのだ。
仲間を顎で使って、自分は動かないタイプの人間はどんな場所にもいるものだ。
だが、リューナは過去に5人の殺害を行なっている。
まさか、ただ手下任せにしているだけということは無いだろうな。
そう思い、俺はリューナを観察した。
……なるほど、そういうことか。
倍率魔法を、やたらと量産していると来たか。
倍率魔法というのは、放った魔法の威力を倍増させる使い切り型のフィルターみたいなもので、魔法に触れない限りは術者の周囲を漂うという性質がある。
こう聞くと有用な魔法っぽく感じるが、デメリットも多い。
まず、構築に30秒ほど時間がかかる。
その上、倍率魔法の構築中には他の魔法の術式を組むことはできない。
この2つの性質故に、戦闘中にこの魔法を使うのは非現実的だ。
かと言って、戦闘前に量産しておけばいいかというと、そんな事もない。
同時に多数の倍率魔法を展開しっぱなしにするにはかなりの訓練が必要で、その訓練に時間をかけるくらいなら、同じ時間をRLC共振訓練に費やせば単純に威力2倍の魔法を撃てる基礎力が付いてしまうのだ。
その訓練の非効率性故に、前世では倍率魔法を磨く者は少なかったのだ。
……ん、待てよ。
それつまり、逆に言えば「倍率魔法訓練はこの時代の魔法技術レベルでは最も有用な訓練」って意味にならないか?
ははーん。
だから、リューナはこうもやたらめったら強い扱いになっているのか。
なんとなく、合点がいったな。
だが、残念だったな。
俺は、倍率魔法の使い手からすれば、殊更に相性最悪の相手だぞ?
今展開してあるやつは、もしかしたら対俺以外の覆面更生員で全弾消費してしまうかもしれないが、もしそうなったらもう一度倍率魔法を発動するチャンスを与えてやろう。
その上で、倍率魔法にとある細工を施してやれば……あわよくば、それだけで絶望を感じさせ、降伏を要求することも可能かもしれないな。
【次回のあらすじ】
いよいよテーラスvsリューナ!
テーラスの「倍率魔法への対応策」が明らかになります。




