第23話 二番弟子、伝説の踊りを披露する
入学式から約1週間が経った。
順調に友達もでき、休み時間は親友となった3人とつるむようになった。
そして次の授業は、初めての迷宮での実地授業である。
今日は初回ということもあり、「1階層より深くには入らない」という制限以外は何もなく、ただ自由に迷宮内を散策することが許されている。
1階層なら、ペリアレイ魔法学園の入試を突破できる人なら死の危険は無いので、そこでしっかり雰囲気に慣れてもらおうという事だろう。
当然、俺はいつもの3人と行くつもりだ。
「なあなあなあ、迷宮の中退屈やからさ、ワードウルフしながら行かね?」
「余裕かよ」
俺の提案にそう返したのはサム。
「それいいじゃん!」
提案に食いついてきたのはゼルト。
「迷宮、ワードウルフもええけどあそこガチウルフが出てくるやん」
「ガ チ ウ ル フ」
最後のマホートのツッコミはかなりツボに入ってしまった。
「ぷ……テーラス、お前笑い過ぎだろ」
お前だって笑ってるだろ、サム。
☆ ☆ ☆
「テーラス、お前なんだった?」
「ヨグ=ソトース」
「サムは?」
「ヨグ=ソトース」
「マホートは?」
「ヨーグルトソース」
「「やっぱお前か!!」」
「途中、吹きそうになったわ。マホートのさ、『異形。そーうやんけ、美味え異形やん』ってもう無茶苦茶過ぎじゃん?」
今回神役職を務めたゼルトが、そう言ってゲームを振り返った。
なんか今日の迷宮での実地授業、ずっと笑い通してた気がするな。
魔物も、全員で3匹しか狩ってないし。
……まあ狩った魔物の数が少ないのは、何もワードウルフだけが原因ってわけじゃ無いんだが。
「つかさ、今日テーラス魔物一匹も狩ってないやんけ?」
「そういやそうだな」
「お前さあ、4人なのに『いっせーのーで9!』とかやるからじゃん」
「ゼルトの言う通りだぞ。次は1匹くらい狩れよ。あんな頑丈な結界張れんだから、余裕だろ?」
「へいへい」
そう。
俺たちは、わざわざ「誰が魔物を倒すか」を指スマで決めていたのである。
俺が魔物を結界に封印し、逃げられないようにした上で。
「ねえ、テーラスってさ、もう部活決めた?」
ゼルトが話題を変えた。
「チア部。だから今日は新歓」
「「「マジ?」」」
「いや、そんなビックリする?」
「だってさあ、あそこ女子しかいないよ?」
「まあ拒否られはしないだろ」
「まあテーラスなら、それが最適解かもしんねえけどな」
「テーラスほどのイケメンは、そうそうおらんけえな」
「それもそうだがそうじゃねえ。俺、テーラスの剣術試験見てたんだけどよ……あんなのが剣術部に入りでもしたら、一周回って場違いだわ。それこそ、性別の壁以上に」
「そんな言うほど? ワザと指スマ負けてでも、今日狩るところを見てみたかったなあー」
「まあ、また今度な」
そんな話をしつつ、俺たちは集合場所に戻った。
☆ ☆ ☆
「え……男子?」
「何あれ、イケメンすぎじゃない?」
「ヤバイヤバイヤバイ! あの子さあ、入学式で新入生挨拶してた子じゃん!」
新歓のため貸し切られていた食堂に入ると、いきなり女子たちが騒ぎ出した。
「すみません、受付どこですか?」
「そんなのどうでもいいからさ、ここの席に座ろ?」
部員らしき人に質問すると、そう返されてしまった。
どうでもよくはないだろ。ってか、それじゃタコわさを配れない。
「シーラ。新入生を困らせちゃダメでしょ?」
俺を強引に誘おうとした人は、上級生に窘められたようだった。
その人がこう言った。
「ごめんなさいね。私はネフィア。今部長を……ねえ君、絶対この部に入ってよ?」
部長を名乗る人は、俺と目が合うなり態度を急変させた。
上級生たち、ほんとグイグイ来るな。クラスの女子は、1人も話しかけに来なかったのに。
サムたち曰く、俺は高嶺の花状態になってしまっているそうだが……半信半疑だったが、本当にその筋、あるかもしれないな。
程なくして、自己紹介タイムとなった。
名前と出身地、そして特技を言っていく形式だ。
その場で実演できる者は、軽めにお披露目している感じだ。
いよいよ俺の番。じゃあ、アレをやるか。
「1年A組、テーラス樹。樹領出身で、特技はコレです」
言って、俺は実演を始めた。
チャールストンから始まりポップコーンを2回、二回転して後ろに下がって首のアイソレーションを入れつつダウンのリズムを取る。
ブルックリン、ボックスステップと続いて、最後はブライアンターンで締めた。
ツーエイトなら、こんなもんだろう。
「ちょっと嗜んでいた踊りをやってみました」
すると……会場全体が、シーンとなっていた。
徐々に、方々からポツポツと声が上がり始める。
「あの踊りってさ……」
「うん、間違い無いわよね……」
「大賢者グレフミンの伝記にしか出てこないという、あの……」
「伝説の舞踊」
……これ、そんな扱いになってたのか。
「あと今日、僕は皆さんに振る舞おうと思ってタコわさを用意しています。是非美味しく食べましょう!」
この言葉で、俺は自己紹介を締めた。
☆ ☆ ☆
この日、タコわさは完売した。
レッサークトゥルフ、さまさまだな。
ストリートダンスサークル出身者として、今回の件は入れたかったものなんですよね……
【次回のあらすじ】
魔族、2度目の襲来です!
今度は、魔族についてもう少し詳しく分かることがあります。




