第18話 二番弟子、キャラを認められる
「驚かして申し訳ございません。なにせ、友人に『ギルドで目立てばランクアップしやすい』とアドバイスされたものでして」
「は……はあ」
「こちらが今回の素材です」
そう言って、俺は予め収納から出しておいたレッサークトゥルフ2匹をカウンターの上に出した。
マリカのアドバイスは失敗に終わってしまったが、ここで何も素材を出さずにギルドを出てしまえば本当にただの迷惑な人で終わってしまう。
誠実路線に切り替えて、売るもの売っていこう。
「……!」
「どうなさいました?」
受付の人の動きが固まってしまったので、業務を続けるよう促した。
すると。
「これ……本物のレッサークトゥルフじゃないですか!」
受付の人の声が、建物中に響いた。
さっき騒ぐなっつったの、どこのどいつだ。
それに呼応して、周囲の冒険者たちまでもが「え……あの子本当にレッサークトゥルフを?」とか言い出す始末だ。
「じゃなきゃあんなこと言いませんよ」
「い、いやでも、レッサークトゥルフってBランク冒険者がパーティーを組んで倒す魔物ですよ? 見たところパーティーを組んでいるわけでもなさそうですし……単独でこれを?」
「Bランク冒険者がパーティーを組んで、ですか。では、限りなくAランクに近いBランク冒険者なら、単独で討伐できるとは思いませんか?」
そう言って、俺はギルド会員証を提示した。
敢えて、オーラバズーカを使ったことは伏せておく。
魔力と気の相互作用が忘れ去られた時代である以上、その原理を応用した武器の紹介はますますの混乱を招くのみとなりそうだからな。
「……これは!」
再び目を見開く受付の人。
一体今度は何だ。
「本当に存在したんですね。ペリアレイ魔法学園特待生による、『奇跡の推薦者』。私、あれ完全に眉唾物だと思ってました。すみません!」
ああ、そう言えば、その事も会員証に載ってるんだったな。
マイアさん、元気にしてるだろうか。
「確か、魔族討伐の経験があると聞いております。それなら確かにレッサークトゥルフも倒せそうですが……実際に目にすると、もう何が何だか分からなくなってきますよ」
「ちなみに、素材はもうちょっとあるのですが」
収納から、ジェネラルコングの胸筋11個とレッサークトゥルフ3匹を取り出し、カウンターに並べた。
「ままままま、まだあったんですか!」
受付の人がいちいち大げさなので、とうとうギルド内の冒険者全員が周りに集まってしまった。
「レッサークトゥルフ5体とかどんな持久力だよ……Aランク冒険者でも力つきるぞそんなん」
「レベチにも程があるだろ……」
「もはや人間に化けたクトゥルフって言った方が説得力あるわ……」
口々にそう言う男性冒険者たち。
うーん、流石にエイリアンへの転生は考えなかったな。
流石にそこまで大幅な変更となると、改竄の術式組むのが100年単位の作業になっちゃうからな。
あと、どうせそこまでやるならクトゥルフみたいな微妙な奴じゃなく、異形級のアザトースかニャルラトホテプにするわ。
その方がロマンあるだろ。
「いや、てかさ、あの子イケメン過ぎん?」
「ほんと。なんて言うか、私じゃ手が出せないけど誰とも結婚して欲しくない、みたいな……そんな風に思ったの初めてなんだけど」
女性冒険者は、専ら外見にしか注目してないみたいだな。
チアリーダー部の全女子がその価値観になれば、平和だろうな。
友達としては仲良くして欲しいが。
「え、ええと……素材の状態も全て良好ですし、買取金額は金貨43枚となります!」
言い渡されたのは、中堅冒険者の月収程度の金額。
この時代なら、この程度の実力で遊んで暮らせてしまうのか。
薄々気づいてはいたが、本当に学園生活は青春を謳歌する事だけ考えていれば良さそうだ。
お金を受け取り、カウンターを去ろうとしたその時。
「なあ坊ちゃん」
1人の男性冒険者が声をかけてきた。
「さっきはすまなかった」
「何の話でしょう?」
「お前のこと、変なやつだと思ってしまってよ。俺、お前みたいな気さくな天才って貴重だと思うんだ。だから、入って来た時のをもう一回やって欲しい」
ああ、あれか。
そういう事なら、お安いご用だ。
「超絶美少年、レッサークトゥルフを狩って参上! ナイスゥ〜ゴイスゥ〜俺イケメン──」
「「「「「オケーーイ!!」」」」」
なんかジーンと来た。
これだ、この一体感。
これこそが、俺の求めていたものだと直感してしまった。
「そのキャラ、一生大事にしろよ!」
「ウィーッス!」
Aランク昇格に近づけたのかは定かではないが、ノリノリな雰囲気を主導することはできた。
こういった思い出の1つ1つが、後々宝物となっていくんだ。
最高のプレゼントをありがとう、冒険者たちよ。
☆ ☆ ☆
それから更に6日が経ち、とうとう試験当日になった。
あの日以来、俺はひたすらレッサークトゥルフを狩って来た。
理由は簡単。
あれ、ぶつ切りにしてタコわさとして食べると絶妙に美味いのだ。
大量に用意したのは、新歓パーティーで振舞って先輩たちとの距離を縮めるためだ。
これが取らぬ狸の皮算用とならないよう、しっかりと試験で結果を残さなければな。
【次回のあらすじ】
いよいよ試験です。
試験には、(テーラスにとって)想定外な受験者も来ています!




