第15話 二番弟子、魔剣使いの友達ができる
「信じられない。追尾型の攻撃で高威力を出すのって、ベテラン冒険者でも難しいのに……」
「お礼、バーベキューで確定していいかな」
「って言うか、ベテラン冒険者でもあの威力は無いでしょ……」
「独り言の前に、お礼のリクエストをだな」
「しかも今、標的を見ずに甲羅弾を打った……? 追尾攻撃とは言え、放つ瞬間は標的を見てないと高確率で誤射するはずなのに……」
「い い 加 減 バ ー ベ キ ュ ー で い い か な」
少し語気を強めると、少女はハッとしたように口元を覆った。
「あ、私としたことがごめんなさい。うん、私はバーベキューは大好きだけど……その、今の引ったくり退治、多分私必要なかったでしょう。それなのにお礼してもらってもいいのかなって」
「気にするな。結果だけ見ればそうかもしれないが、俺は善意で反射的に動ける性格の持ち主とは仲良くしておきたい。よかったら奢らせてくれ」
「ほんと? ありがとう!」
「じゃあ、明日昼に声をかけるから。楽しみにしといてな」
そう言って、俺は少女と別れ、予約した宿に戻ることにした。
また一つ、試験までの楽しみが増えたな。
☆ ☆ ☆
次の日の朝。
俺はバーベキューの準備のために、昨日開通させかけた迷宮を開通させにいった。
「気功──いや、昨日懐かしい技を見たしな。今日はこっちを使ってみるか」
そう言って、俺は1つの技を発動させた。
「棘甲羅弾」
棘甲羅弾。
甲羅弾に気でできた棘を混ぜ、甲羅弾の物理的な威力を上昇させる魔力と気の複合技だ。
これも本来は追尾弾なのだが……昨日掘った穴に投げ入れるだけなので、コントロールもへったくれも無いよな。
投げ入れた直後。
轟音が鳴り響いたので穴を覗いてみると、洞窟部分まで穴が開通しているのが見て取れた。
昨日の衝撃波と先程の棘甲羅弾の威力や指向性を上手く調整したおかげで、空き地自体は崩落していない。
穴の直径はワイルドブルが脱出するには狭すぎるので、ダンジョンそのものが異常をきたさない限り、この穴から魔物が溢れ出す心配も無いだろう。
「とうっ!」
穴から飛び降り、1頭のワイルドブルの首に気功剣をずぶりと突き立てる。
まだあと何匹か残っているが、2人ではどうせ食べきれないので威嚇魔法で退散させた。
気功剣の形状を解体用ナイフに変形させ、肉を解体していく。
魔石だけポケットにしまい込み、収納術に可食部を放り込んだ。
収納術の容量は、気の場の整い具合によって決まる。
今の俺なら、ワイルドブル丸々一匹程度なら余裕で入れてしまえるのだ。
収納する時と取り出す時に魔力が必要なだけの技なので、便利なことこの上ない。
ダンジョンでの用事が済んだので、俺は表通りに戻った。
そして、百貨店でまな板と肉を焼くための網を購入した。
……そろそろ昼か。
昨日の少女を呼ばなくては。
俺は、転生探知を発動した。
……見つけた。
そう、俺は昨日の会話の裏で、転生探知で探せるように少女の魂の波長を覚えていたのだ。
魂の波長の偽装は、前世でさえも俺と師範、そして三番弟子のウェルマクスしかできなかった技。
今の時代に使える人がいるとは考え難いので、昨日の少女と断定していいだろう。
☆ ☆ ☆
「やあ」
転生探知に従い、この都市の中心を流れる川の川沿いに来ると、案の定昨日の少女を見つけることができた。
「あ、昨日の甲羅の人だ!」
それはこっちの台詞だと言いたいが……まあいいか。
「なんでこんなとこにいたんだ?」
「だってさ、昨日バーベキューの約束をしたのに、どこで会うとか全然決めなかったじゃん。それで、もうダメかなって思ったんだけど……とりあえず、バーベキューが出来そうなところで待ってたらもしかしたら見つけられるかなって思って!」
「賢い作戦だな」
「でしょでしょ? それでさ、私思ったんだけど……お互い自己紹介まだだよね?」
「そうだったな」
「私はマリカ。周りからは、『魔剣使いのマリカ』って呼ばれてるの!」
「……俺はテーラス」
一応、変な距離感になるのを防ぐため、貴族証明古代文字は伏せた。
にしてもだな、自分から二つ名を言うなよ。
魔剣使いってさ……あれ、魔剣?
待てよ。
ってことは、コイツ気功剣に魔法を付与して戦えるのか?
なんだ、この時代にもいたんじゃないか。
魔法と気の双方が扱える奴が。
そういえば、師範が魔法と気の双方を扱う方法を確立する前も、10年に1人くらい「感覚だけで魔力と気の相互作用を扱う天才」が現れたという。
気の適性があり、魔法も一応甲羅弾が打てる程度には習熟している。
そうなれば、確かにその魔力を気功剣に付与すれば「魔剣と呼んでもいい物」は完成するか。
期せずして、稀代の天才に出会えるとは。
これはいい友達ができたみたいだな。
【大事なお知らせ】
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【次回のあらすじ】
テーラス、「自分だけの秘密基地」ならぬ「自分だけの秘密のダンジョン入り口」のことだけは語らないようにしようとするのですが……それにより、会話がちょっとアンジャッシュってしまうようです。
※アンジャッシュる……「アンジャッシュのコントのように会話がすれ違う」という意味の造語




