第14話 二番弟子、引ったくりを丸焦げにする
ゾファレン学宮都市。
ここゾファレン王国において、迷宮が2つあり、そのそれぞれを2つの学園が一つずつ保有していることからその名がついた都市。
その都市で、俺は暇を持て余していた。
それもそのはずだ。
馬車で樹家の屋敷を出たのは、試験の10日前。
屋敷からペリアレイ魔法学園までは馬車で一週間かかるので、不測の事態に備えて3日の猶予を持たせるためその日に出発したのだ。
だが、俺は旅程の初日に盗賊の駿馬を手に入れてしまったことで、その旅程を2日で終えてしまった。
そのせいで、試験まであと8日もの暇が出来た。
この退屈を、どうやって潰せば良いものだろうか。
「あ〜暇。ミスリルでもあれば、オーラバズーカとか作って暇つぶしできるんだがな……」
そんな事を考えながら、裏路地の空き地にふらりと寄った時。
俺のLC共振探知に、妙な反応があった。
「……ん? 地面の下にワイルドブルか。これは……」
地面の下から魔物の反応がある場合、2つの可能性が考えられる。
一つは、地中に潜む魔物が存在すること。ワーム系統や、モグラ系の魔物の場合が多い。
もう一つの可能性は、地下に洞窟ができていて、そこに魔物が棲みついているというパターンだ。
ワイルドブルは、牛系の魔物。まず間違い無く、今回は後者の事例だな。
「……そうだな。する事も無いし、バーベキューでもして暇を潰すとするか。気功剣!」
と、唱えたものの、実際に顕現させるのは気でできたシャベルだ。
剣の形状じゃあ穴掘りは難しいからな。
身体強化を付与し、気功シャベルには土属性の魔法を付与する。
これで、プリンを掬うようにサクサクと穴掘りを進めることができるのだ。
掘り進めること約30分。
俺は、地面の異変に気付いた。
「これは……」
土の感触を、触って確かめる。
うん、間違いない。僅かだが、ミスリルを含有している。
「どうりで、掘るのが重いと思ったんだよな……」
ミスリルを含む土。
これが意味するのは、「直下の洞窟はただの魔物が棲んでいる洞窟ではなく、迷宮の一部だ」ということだ。
このまま掘り進めても、開通までギリギリ気や魔力は持つだろうが……ヘトヘトになったところでのワイルドブルの相手はしんどいし、効率的なやり方を選ぶか。
俺は気功シャベルを全力で地面に突き立てる。
そして、シャベルの突き刺さっている部分から衝撃波を放った。
迷宮の土は硬く掘りづらいが、その分衝撃には脆い。
これをあと1回繰り返せば、崩落させられるだろう。
ま、今日はこのくらいにしておくか。
今からもう一度衝撃波を放ってワイルドブルを殲滅したとして、その後バーベキューをする気力が残るとは思えないからな。
肉は鮮度が命なのだ。
基本的に、迷宮内の魔物が迷宮の天井を攻撃する事はない。
このまま放って帰っても問題無いだろう。
そう思って、俺は空き地を後にした。
☆ ☆ ☆
裏路地を出て、てってけてーと暫く歩いていた時。
突如、後ろから誰かにぶつかられた感触がした。
「なんだなんだ? ……あ! んの引ったくり野郎!」
俺の全財産が入ったバッグを、ぶつかっていった男に取られてしまったのだ。
まあ最悪、盗賊から奪った馬を売れば生活に支障は無いのだが……容易に取り返せるのに見逃すのも何か違う気がするので、制裁を加えるとするか。
身体強化を加え、全力疾走を……
しようとしたのだが、その時後ろから魔法の反応がしたので、まずはバク転してそれを避けた。
「あ、甲羅が行ったか」
飛んで行ったのは、甲羅弾という追尾型爆撃魔法だ。
懐かしいな。この時代で見るのは初めてだぞ。
恐らく、狙いは先ほどの引ったくりだろう。
世の中捨てたもんじゃないな。
何十メートルか先で、甲羅弾が炸裂する。
引ったくりは、その爆心地でうずくまって爆撃に耐えていた。
今度こそ、身体強化で全力疾走。
引ったくりの首筋に、気功剣の剣先を突きつけた。
「鞄を返せ」
「ひ、ひいぃぃっ!」
思いっきり怯えたような声をあげ、引ったくり犯はバッグをこちらに寄越した。
さてと、コイツはもう用済みだし、甲羅弾を打ってくれた人を探すか。
周囲を見渡すと、今の俺と同い年くらいの少女がこちらに向かって駆けつけてきていた。
「う、うわああぁぁぁ!」
引ったくり犯は、俺が見逃したとでも思ったのか、一目散に逃げ出そうとした。
コイツ、甲羅弾を受けたのに怪我してないのか。
さっきの甲羅弾は、俺が引ったくり犯に追いつく為だけのこけおどしだったのか?
いや……この時代の人々の水準を考えれば、あれが全力の甲羅弾だったって線もあるな。
じゃあ、反省してもらうために前世水準の甲羅弾を投げるとするか。
俺がそこまでやる筋合いは無いが、制裁は加えられる奴が加えた方がいいだろうしな。
もっとも、俺には正規の甲羅弾を投げるのに必要な「追尾の才能」が無いため、ただぶん投げてぶち当てるのみだが。
改竄転生で調整していれば俺も使えたんだろうが……ぶっちゃけ、投擲に熟練した者にとってはそこまで使い道の無い才能なので、面倒くさくて妥協したのだ。
LC共振探知で位置と逃げ足は把握しているので、後ろ向きに投げても当たるだろう。
俺は助けてくれた少女の方を見たまま、甲羅弾を放った。
「さっきは助けてくれてありがとう」
「取られたものは取り返せたのね! 私の甲羅弾、役に立ったでしょ? だからさ、お礼に──」
少女がそこまで言った時。
俺が放った甲羅弾が、けたたましい爆音とともに引ったくり犯を焦がした。
後遺症がギリギリ残らないくらいの火傷を負うよう調節したので、生きたまま地獄を見ることだろう。
「……な、な、な、何なの今の威力! あれ甲羅弾の範疇超えてない?」
むしろあれが本来の用途です。信じてもらえないでしょうが。
「お礼、か。そうだな。バーベキューくらいなら、奢るぞ」
【次回のあらすじ】
ダンジョン開通します。
あと、今回の話の少女の名前も判明します!
【謝辞とひとこと】
僕と、僕の作品を育ててくれている人。それは、紛れもなく今ここにいるあなたたち、読者の皆さんです。
僕はそんな皆さんと、できれば友達になりたいとずっと考えています。
僕と仲良くしたいと言う方がいらっしゃれば、是非感想欄で一緒に盛り上がりませんか?
お待ちしてます!




