【第一章】第三十部分
美散が巨人軍に入団した翌日のこと。美散のクラスに転校生が入ってきた。
教師の隣に立った少女を見て、あまりの美しさにクラスは静まり返った。
眩く光る金色の長い髪を二本のロールにまとめている。小ぶりながらシャープな鼻筋、真っ白で透明に感じられるような頬、高い身長に八頭身モデル級の体型。胸ボリュームも完璧な美を演出している。まさにパーフェクトボディー。さらに異色虹彩で、左右の目が青と赤に光り輝いている、怪しいほどに魅惑的である。
完璧超人女子は、可憐かつ妖艶とも言える唇を開いた。
「今日カラ、コノ中学校ニ留学生トシテ、オ世話ニナリマス、観世絵ローザ、デス。不束者デスガ、ヨロシクオ願イ致シマス。」
カタコトの日本語だったが、声はしっかりと通る、凛としたものだった。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ス、スゴい美人だ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
クラスメートが満場一致で同時に叫んだ。横にいた中年男性教師もバンザイしながら雄叫びを上げていた。
この日の放課後。校舎裏に呼び出されたクラスメートのメガネ丸刈り男子。呼んだのはローザである。
「ワタクシハ、アタナノコトガ、好キニナリマシタ。ワタクシニ、学校ノコトヤ、ソレ以外ノ、コンナコトヤ、アンナコトヤ、ヒョットシタラ、ソンナコトマデ、教エテ欲シイカモデス。何ナラ、ワタクシヲ、手込メニシテクレテモ構ワナイデス。」
「ええ?そんな、いきなりですか?」
「ワタクシ、日本語マダ苦手デスカラ、ウマク表現デキナイデス。ゴメンナサイ。」
「じゃあ、こんなこととかの3フレーズの意味はわからないですよね?」
「イエ、ソレハ、ヨクワカルノデス。熟知シテイルト言ッテモ、過言デハ、アリマセン。ショジョデハ、ナイノデス。」
「えっ?今何と言いましたか?」
「ジョジョデハナク、一気ニ、知リマシタイナ、ト思ッテマス。」
「びっくりしました。聞き違いでした。じゃあ、日本のこととか、それ以外のこととか、いろいろ教えてあげますよ。でれ~。」
だらしなく涎たらしモードになったメガネ丸刈り男子。リア充という言葉にシカトされまくる体質にある男子だから、仕方ないことである。
「アンナ、コンナ、ソンナミッションヲ、達成スルタメニ、家ニ来マセンカ?」
「ええ?いきなり、女子の家に?そんなこと、急に言われても。でも男女交際って、ダンジョンの中で、チョメチョメするところから始まるんですよね?ひひひ。」
ここで、非リア充の間違った妄想が暴走する。これも思春期の性。
「こうして少し離れた港の方に歩いていくふたり。
船着場で自分の家を指し示したローザに対して、メガネ丸刈り男子は驚愕した。
「これが家ですか?まるで豪華客船?クィーンエリザベス号のような。」
「コレハ、船ソノモノデス。『クィーンエロザベスト号』ト名付ケラレテイマス。サア、中ニ入リマショウ。」
船に繋がるタラップを上って、中に入ると、そこは豪華客船らしく、レストラン、喫茶店、映画館、オペラハウス、甲板にはプールだけでなく、野球場まである。
ふたりは甲板に立っており、メガネ丸刈り男子だけが目を白黒させている状態。
「ス、スゴい!これってセレブそのものですね。船の中は夢のようです。」
「夢ハ、ツカメナケレバ忘レサラレマス。ツカメタ者ダケガ、記憶トシテ残セルノデス。」
いつの間にか、制服から、エプロン姿に着替えているローザは小柄なメガネ丸刈り男子を見下ろしているが、上目使いのような視線で、艶やかに見つめている。
ローザは、メガネ丸刈り男子に背中を向けた。彼の網膜に映ったローザの色はすべて肌色。すなわち、ローザは裸エプロンなのである。
「ソレデハ、ゴ主人様。ゴ用意サセテ頂イテオリマスモノハ、一番レストラン、二番オ風呂、三番ベッドルーム、デス。ドレニシマスカ?」
「謹んで三番ベッドを洗濯させていただきます!」
「戦場ヲ先ニ綺麗ニシテカラ挑ムトハ、ヤル気満々デスネ。デハ、コチラニシマショウ。腹ガ減ッテハ戦デキズ、デスカラ。」
「さっき提示された選択肢は何だったんですか。ガックリ。」
「オイシイ物ハ、最後マデ取ッテ置クベキナノデス。」




