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【第一章】第十九部分

「それは当然ですわ。内角には強いけど、外角はからっきしだめ。そういうクセをつけさせたのですから。それだけでなく、上半身があまり発達してないというからだの構造から、外角に弱いことを見抜いていました、打てないところを作るように鍛えましたわ。ほーほほほっ。」

「えええっ!や、優しいトモヨンさんがそんなひどいことを言うなんて、何かの間違いだよ!特に、上半身とか、上半身とは胸で、胸が弱点とか。」

「そこまでは言っておりませんけど。」

トモヨンはそう言いながら、折り鶴の首の部分を伸ばした。

「あっ!そういうことなんだ。」

美散は次の投球に対して、折り畳んだ腕を軽くほどいて、対処した。すると、せいぜいファールしかできなかったボールが、前に飛ぶようになった。

「口では厳しいこと言ってるけど、暗い森を照らしてくれる。やっぱりトモヨンさんは優しいんだ。」

「それはどうかな。仮面を被るのは、ライダーとガラス仮面女優だけじゃないんだぜ。」

キャッチャーのランボウが、眉間にシワを寄せながら笑顔で美散に言葉を飛ばした。

「ランボウちゃん、余計なことを言ってくれますわね。背中を押すのは時と場合を考えないと、大ケガしますわ。これでは、ちょこっと本気を出すしかありませんわ。」

トモヨンは、これまでの投球フォームはノーワインドアップだったが、ワインドアップに変えて、振りかぶって投げた。振りかぶった瞬間に、その勢いで猛烈な突風が吹いて、マウンドの土が平らになってしまった。

「あれ?なかなかボールが届かないよ。トモヨンさん、エア投球した?冗談大好き美人なんだね。あははは。」

美散はボールが自分の横を通過したことに気づかなかった。いや、あまりに速過ぎて、苦笑いして、気づかないフリをするしかなかったのである。

それから3球投げたが、美散の動体視力をはるかに上回る投球速度は変わらなかった。

これは美散のレギュラー昇格テストである。美散の顔からは血の気が引かれてしまった。

「どうして打ったらいいのかわからないよ。」

「打てなくて当たり前ですわ。基礎体力が足りないからです。レギュラーポジションは街で配られるティッシュではありませんわ。レギュラーを狙う者には、こうするのですわ!」

トモヨンは、首を伸ばしていた折り鶴の首を再び折った。さらに、もう一段折り曲げた。折り鶴はお詫びしているように見えた。

口元をJカーブにしているトモヨンを見て、ランボウがボソッと言った。

「エサだけ与えて蛇の生殺しにして苦しむ姿をビデオに撮るのが、トモヨンの趣味なんだよ。若鶏捌き、チキンprocessorの異名を頂いてるんだよ。」

「あのトモヨンさんがこんなことするなんて。きっと巨人軍に蔓延するチーム毒空気がそうさせたんだよ。巨人軍って、ヒドくて醜い世界だよ。これでは人間以下、いやはるかに未満だよ。」

「そりゃそうさ。人間じゃなくなったから、ここに送り込まれてるんだ。まともな神経を維持できるはずがない。あたいも前はもうちょっとはマシな神経をもってたがな。今は神経のシナプスは千切れてしまったよ。」

自嘲するしかないランボウだった。


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