閑話:ぺいんと・いっと・ぐりーん
第5章始まりと言いながら閑話。
過去に上げた4年前のサリア視点の短編をちょっと修正したやつ。過去短編の方は検索除外しちゃってます。
次話はナタリー視点。
今回のネタ。3/17は聖パトリックの祝日というアイルランド系キリスト教徒にとって重要な祝日。
なんでも緑色にする。画像検索するとわかります。楽しい。
みどりにぬれ
ポートラッシュ小学校
3年 サリア・ウッド
――大どうめいれき115年3月17日(17 March G.A.115)。
きょう3月17日は、みどりの日というしゅく日です。
ポートラッシュの町では、この日は、はるがやってきたのをよろこぶおまつりとして、まい年、みんなでおいわいします。
おとなの人たちはみどりのビールを。わたしたちはきゅうりのソーダという名まえのみどりのジュースをのみます。
きゅうりのあじはしないです。あまくておいしいです!
コンビーフとキャベツをたべます。お母さんはそれをスパゲティーのぐにしました。ほっぺたおちました。
みどりの日は、まい年、みどりのようふくをきて、三つばのクローバーをかみにさして広ばでパレードしたり、おどったりします。
でもことしはちがいました。りょう主のブライアンさまからふこくがあって、ことしは三つばのかざりだけつけてあつまるように、だって。
「サリア、いくわよー」
お母さんがよんでいます。なんでみどりじゃないんだろうねとはなしながら、わたしも三つばをかみにさし、きいろいワンピースをきて、町のまん中の広ばにむかいました。
バグパイプとたいこの音がひびきました。りょう主さまのおやしきの方からへいたいさんたちが行しんしてきます。
へいたいさんのれつの中に、たいこをいっしょうけんめいたたくお父さんがいました。わたしが手をふると、うなずいてくれました。うしろからゆっくりとば車がやってきます。おうまのミックとチャックがしずかにば車をひき、広ばのまん中に止まりました。
ば車からはりょう主のブライアンさまと、ブライアンさまに手をひかれてアレクサねーさまがおりてきました。
アレクサねーさまは、わたしより3つ上のおねーさんで、はくしゃくれいじょーというえらいおねーさんなんですが、いつもわたしたちとあそんでくれます。どの男の子よりも足がはやく、どの男の子よりもつよく、どの男の子よりもやさしーです。
そして、学校がおわると、へいたいさんたちのところに行き、くんれんをしています。お父さんもよくアレクサねーさまにはかなわないといっています。
きょうのアレクサねーさまは、白いドレスをきて、ゆっくりとおひめさまみたいにば車からおりてきました。
体のりょうがわにたれたかみの毛はくるくるとたてロールになっています。お日さまの光をあびて、金いろにかがやいていました。
ドレスはかたが出ていて、こしから下がふわりと広がっています。足には、白いひもであみ上げたサンダルをはいていました。
「ねーさま、きれー」
わたしがみていると、アレクサねーさまはよういされただんの上に立ち、くるりと回って、スカートをつまみ、わたしたちの方におじぎをしてから、ま力をあつめはじめました。
アレクサねーさまの体がゆっくりと光りはじめます。
そして、ねーさまはさけぶように、うたうように、じゅ文をとなえました。
「赤いとびらをみどりにぬれ!
他のいろはいらないみどりにぬれ!
ば車のれつをみどりにぬれ!
心もみどりに!
赤いとびらをみどりにぬれ!
せかいの全てをみどりに!
青いうみまでみどりに!
赤いとびらをみどりにぬれ!
他のいろはいらないみどりにぬれ!
かおをみどりに!
しょくぶつのように!三つばのように!
ぬれ!ぬれ!ぬりつぶせ!みどりに!
――〈染色〉!」
アレクサねーさまからま力がばくはつするようにポートラッシュの町全てをおおいました。
ま力の光がおさまると、町は全てがみどりいろになっていました。いえも、みちも、川も、ふくも、うまも、お母さんも、わたしも。
アレクサねーさまは、ま力をぜんぶつかったのか、ちょっとよろけました。ねーさまの白いドレスも、かがやく金のかみもみどりでした。
みどりのおひめさまは言いました。
「パレードをはじめますの!」
みどりいろになったお父さんがたいこをたたきます。へいたいさんたちがバグパイプを、シンバルを、がっきをならして、みどりのおひめさまを先とうに、パレードがはじまりました。
すてきなパレードでした。けしきはどこまでもみどりで、川の水はエメラルドのようでした。みんなわらって、おいしいものをたべて、うたい、おどりました。
パレードがおわり、わたしは言いました。
「お母さん!アレクサねーさますごかった!かわいかった!かっこよかった!」
お母さんはにこにこしていいました。
「そうねえ、すごかったわねぇ」
「わたしもアレクサねーさまみたいなまじゅつをつかいたい!」
お母さんはまゆをひそめます。
「あそこまでま力つかうのはむずかしいんじゃないかしら」
「つかうのー!」
お父さんがいいました。
「ははは、アレクサンドラさまはかっこいいよなぁ。でも、ことしの9月にサウスフォードのまじゅつ学校にいってしまうんだよなぁ」
お父さんがためいきをつきながら、わたしのあたまをなでます。
「わたしもついていきたいなー」
「さすがにむずかしいかなぁ」
サウスフォードは海をわたったとおいところにありますし、へーみんの行く学校ではありません。だってすごいお金がかかるんですもの!
でもしっています。とくたいせーというものになれば、お金はいらないって。
「とくたいせーになれば行ってもいい?」
お母さんがわらいます。
「すごいたいへんなことよ?」
わたしはうなずきました。
「わたし、きょうからたくさんべんきょうするわ!明日からのわたしのあだ名は“ガリベン”サリアよ!」
だから先生、べんきょうとまほうをいっぱいおしえてください。
がんばります!おわり。




