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なまこ×どりる  作者: ただのぎょー
第1章 118年12月~使い魔の来た日常

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第15話 あれくささんがおてがみかいた

『――親愛なる父様、執事のエドガーはじめ、使用人の皆様。

 お元気ですか。わたくしは元気です』



 わたくしはいま、寮の居間で家族にお手紙を書いています。

 暖炉の傍の椅子に座り、持ち込んだ机の上にはペンとインクと手紙、そしていつもの金魚鉢の中のクロ。



『兵士の皆様は元気に魔を屠っていますか?大きな怪我など負ってなければ良いのですが。良く通っていた店は変わっていないでしょうか?ゴブリンの集落は、火山の竜の家族はうまくやっているでしょうか?

 ここ、セーラムのサウスフォードでは、海を、結界を隔てたポートラッシュの情報を求めようもありません。

 ただ、皆様の無事を祈るのみです』



 お父様はできれば年末年始にポートラッシュに戻ってくるよう言っておられたのですが、やはり海を渡っての帰省をするような時間はありませんでした。



『この手紙がいつそちらに到着するかわかりませんが、これを書いているのは冬至祭の翌日の夜です。

 そちらの冬至祭はいかがだったでしょうか。わたくしの書いたメッセージカードはちゃんとそちらに届いたでしょうか?』



 昨日は寮で冬至祭のパーティーが行われていました。みんなで遅くまで騒いで楽しんでいたのです。

 ですが今日はわたくしのように自宅が遠くない生徒のみなさんは、年末年始を自宅で過ごすために馬車に揺られて寮を出て行ってしまいました。

 昨日はあんなににぎやかだった寮の居間も閑散としていて寂しいものです。



『素敵なプレゼントもありがとうございます。寮のわたくしの机はお父様たちのプレゼントや、寮の皆さまからのプレゼントでいっぱいですわ。どれも素敵なものばかりで、見ているだけで頬が緩んでしまいますの。

 わたくしが皆様に差し上げた匂い袋も、落ち着く香りと好評でしたのよ』



 今使っているペンは、昨日セシリアからいただいたグリフィンの羽根ペン、インクはケイトからいただいた虹色インクですの。

 本来これらは魔術道具ですから、手紙を書くのにわざわざ使う必要はないのですけども。

 せっかくいただいたのですもの。さっそく使いたかったのですわ。



『成績は同封いたしました。

 魔術制御がC、座学のいくつかがB、あとはA判定で、薬草学は学年1位をいただきましたの。

 制御に関しては先生から、制御力自体は学年でも最上位であるが、元の魔力量に対してはどうしても不足だとのお話でした。

 あと、魔力量増加訓練の授業は受講を禁止されたので、評定なしですわね。空いた時間はこっそり訓練場をお借りして体術の訓練にあてました』



 暖炉の火がパチリと鳴ります。

 人がいなくて良いこともありますわ。いつもはすぐに占領されてしまう暖炉のそばも今日はわたくしが独占ですの。ふふふ。



『友人や先生方との人間関係は良好です。先生にも、先輩にも、同級生にも、後輩にも、本当に恵まれていると思いますわ。

 3年前、お父様がわたくしをサウスフォードに入学させたこと、そして今も学生生活を続けさせてくれていること。心から感謝していますの。

 ありがとう、お父様』



 ちょっと気恥ずかしい言い方になってしまいましたわね。んー、まあいいですわね。



『ただ、ルシウス殿下とはあまり話せていませんの。

 お父様はアイルランドから離れられませんし、わたくしもエスコートなしでライブラの社交界に顔を出せませんから。

 本来なら殿下がその役を担うべきではあるのでしょうが……、もしかしたら遠ざけられているのかもしれません』



 昨日届けられていた贈り物の栞を思い出します。

 夜明けの“月”の恋歌をモチーフにした素敵な栞。

 ……ちょっと殿下らしくないセンスの良さですよね。



『……最後にわたくしが楽しみにしていた、使い魔の召喚についてですの。

 わたくしの使い魔――クロと名付けましたわ――は、』



「ですが……。」



 そこまで書くと思わず声が出ました。ゆるりと顔をあげ、机に置かれた金魚鉢の中で砂に半分埋まって動かないわたくしの使い魔を眺めます。



 わたくしも、自らの使い魔がその見た目において一般的ではなく、また侮られやすいものであるということは理解しました。特にそれが辺境伯令嬢といった立場にふさわしくないとみなされているということも。



「わたくしの使い魔がなまこであると急に言われたらお父様も卒倒してしまわれるかもしれませんね……。」



 右手のペンを柔らかく頬に当てながらしばし考えます。



「……ぼかした表現で伝えることにしましょうか。」



『わたくしの両手におさまるくらいの黒い棒状のもので、さわっていると硬くなったり、先端から白いねばねばしたものをだしたり、やわらかくなったりしますの。とっても素敵ですのよ。

 夏休みにお見せできる日を心待ちにしておりますわ。



              愛をこめて。

                アレクサ』

 はい、ちょっとしんみりするような感じの手紙なのにそのオチはどうなのよアレクサ!


ξ˚⊿˚)ξ <人のせいにするんじゃないですのー!


 という訳で第一部完!

 ここまで書いてこれたのは全て読者の皆様の応援のおかげです!


 つまり感想下さい。あと評価とかポチりましょう、是非。


ξ˚⊿˚)ξ <…………。


 いや、キリがいいから!ほら!

 第二部もまたよろしくお願いします!


ξ˚⊿˚)ξ <よろしくお願いいたしますのー。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一章の終わりにふさわしいしっとりとした閑話だと思ったら…… やっぱりわるいなまこじゃないか!
[一言] アレクサのお父様。お気持ちお察しいたします。
2020/06/07 15:25 退会済み
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