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なまこ×どりる  作者: ただのぎょー
第5章 119年3月~義兄の魂を奪還に
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第95話:騎士団着任ですの!

「ああ、ナタリー。こんなにふらふらになって」


「うっぷす、お姉さま……。船の上で揺られながらあの高速飛行は……うぇっぷ」



 顔色が真っ青ですの。

 飛行時に長く接続するのは不味いですわね、気をつけねば。



「それと、戦いを間近で見るのも辛いんじゃないの?」



 クリスが付け加えます。

 むむむ、確かに刺激が強かったですかね。どうしたものかと悩んでいると、崩れ落ちそうなナタリーがひしっとわたくしの服を掴みます。



「慣れます」



 む。



「慣らしますので」



 まあ、そう期待しましょうか。

 翠獅子騎士団を整列させ、街の中央へ。西の門が開かれ、領軍がこちらへと進んできます。その先頭には見覚えのある偉丈夫。

 わたくしは大きく手を振りました。



「お父様!」


「アリー!」



 兵士たちがざわざわとわたくしの名前を呼びながら集まってきます。



「帰ってきましたのよ!」



 歓声が上がります。



「よく帰ってきた、アリー。お前の後ろの人々を紹介しておくれ」


「えーっと、使い魔のクロとサリアはいいですわよね。こちらはクリスティ・キャリッジ。わたくしの同級生で侯爵家令嬢ですの」


「お会い出来て光栄ですわ。ロード・アイルランド」



 クリスは軽やかに淑女の礼をとり、お父様は返礼されます。



「こちらがナタリー・ブレイスガードル。わたくしの1年後輩で魔法使い。卒業後、ポートラッシュでわたくしに仕えたいと言ってくれてますの」



 ナタリーがわたくしから離れ、あわてて淑女の礼をとります。



「は、はじめまして。おとう……ロード・アイルランド」



 ふふ、お父様じゃなくてよ。顔色は良くなってきたけどまだ不調なのかしら。



「2人とも、こんな遠いところまでよく来てくれたね。見ての通り、ばたばたと忙しない地ではあるが、歓迎しよう」


「そして、こちらがハミシュ・ファーガス。わたくしのいとこにあたる人物で、スコットランド、ハイランダーの末裔になりますの」



 ハミシュは複雑な感情を押し殺したように平坦な声で告げました。



「ハミシュ・ファーガスだ。ロード・アイルランド、あなたの甥にあたる」


「……そうか、君が。初めまして。あー、ディアドリウについては」



 お父様がお母様の名前を出しました。

 ハミシュは手を前に出し、言葉を止めます。



「このような人目のある場所で話すべきではないでしょう。後日お時間を頂けますか、辺境伯」



 お父様はほっとした表情で頷きます。

 うん、ここで複雑な話はできませんものね。ハミシュが後にしてくれて助かりましたわ。



「最後に彼らが、元ライブラ第六騎士団にして、現在はわたくしの麾下にある翠獅子騎士団ですの。団長はレオナルド義兄様、副団長はイアン・ノースレイク卿、総員50人ですの」



 ずいっとレオ義兄様が前に出ます。以前王都に行った時のような白のトーガの上に騎士団の紋章入りマント。追従するのはイアン副長。



 義兄様が腰の魔剣を鞘ごと外し、鞘じり(Chape)で地面を突き、柄頭(Pommel)に手を乗せると、イアン副長が号令をかけます。



「気をつけ!」



 騎士団員が5×10に一糸乱れず並びました。



「団旗掲揚!」



 その横でイアン副長の従者、ヤーヴォ君が団の紋章の描かれた巨大な旗を持ち上げます。

 重たい旗をふらつくこと無く掲げました。



「捧げ剣!」



 マントを払い剣を抜き放ち、切っ先を上に。両手で柄を持ち剣を掲げる。剣林が日差しを反射させてきらきらと煌めきました。

 イアン副長が挙手での敬礼をします。



「アレクサンドラ・フラウ・ポートラッシュ麾下、翠獅子騎士団!

 これよりアイルランドの地にて、人類守護の防人たる務めの一翼に加わらせていただくべく参りました!」



 お父様がこちらにちらりと視線をやってきたのでわたくしは頷きます。

 視線を正面に戻すと右手を上げて答礼なさいました。



「着任の挨拶痛みいる。翠獅子騎士団がアイルランドの地へと無事訪れられたこと、幸いに思う。

 我等は貴殿達を歓迎しよう」


「感謝いたします。休め!」



 彼らが剣を納めると、その威容にポートラッシュ領軍がおおと感嘆の声を漏らし、子供たちはきらきらと目を輝かせ、若い女性たちの中には顔を赤らめて彼らを見つめる者も。

 ふふふ。ほら、やっぱり揃いの衣装にした方が格好つくじゃありませんの。



 そしてその後、バリーキャッスルの町の破られた壁などを工兵たちが補修し、ポートラッシュへと帰還しましたの。

 町ではあらかじめ用意されていた歓迎の式典が執り行われ、その後は皆で食事を、音楽を楽しみました。宴会ですの!



 ナタリーやクリスも一番簡単なリールの踊りのステップは憶えてきたので、皆で踊りも楽しみましたのよ。

 翠獅子騎士団のみなさんも住民の娘さんたちにつかまって、ステップを練習させられていますが……ああ、鼻の下を伸ばして。

 周りであぶれている女性たちが次はわたしの番と虎視眈々と狙っているのも気づかずに。いやまあいいんですけどね!

 レオ義兄様を狙うのがいないのは分かっているので。



 レオ義兄様にとっては3年ぶりのアイルランドでしょうか。

 当時の義兄様の部下、ポートラッシュ突撃部隊の面々が義兄様と酒を酌み交わしていますの。

 義兄様は何を答える訳でもありませんが、目の前に積まれていく肉を食らい、杯をあけていきます。



 歓迎の宴の後、わたくしや客人は屋敷へ。翠獅子騎士団の皆様は仮設の宿舎へ。サリアは実家へと戻りました。

 クリスとナタリー、ハミシュをそれぞれの客間へと案内し、お父様の部屋へと向かいます。

 さてさて、大事な話し合いですのよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 騎士団員が5×10に一糸乱れず並びました このように何気ない中にも統制、誇りを感じるシーンって大好きです! 少し泣きそうになりました。
[良い点] 翠獅子騎士団たしかにモテモテですね! 実際、揃いの衣装で規律のとれた挨拶なぞされたら100倍カッコよく見えますもんなー。 私も住民だったらキャーキャー言ってたと思いますっ
[一言] さてさて、これから大事な話し合い。
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