第9話 伝説始動! 最強善人伝説!
前回のあらすじ。
それはそれ、これはこれ。
明くる日。俺達はアリシアとソウビと共に、事の顛末を王に報告をした。
ソウビの悩みについては気がついていたらしく、事前にアリシアに頼んでいたこともあり、やはりな。としたり顔をしていたが、趣味嗜好については完全に予想外だったらしく終始眉間にシワを寄せて理解に苦しんでいた。
「亡き妻と似たような事を言うておるわ、やはり親子だのう」
遺伝かー、遺伝だったかー。
この世界にしては時代の最先端を突っ走っていた女王様とは生きているうちに会ってみたかったな。
「マサルよ、お主を呼んだのは間違いでは無かった。まだ我の眼は曇っていない証拠よな! 今度こそ礼をせねばならぬな、宴をする!皆のものに伝えるが良い!」
それを聞いた家臣達は直ぐ様動き出し、宴の準備に慌ただしくなりはじめる。
「暫くは時間がかかるであろう。それまで自由にするがよい、では我もする事があるのでな」
そう言うと、いそいそと何処かへ行ってしまい、残された俺達は適当に時間を潰すこととなった。
「色々あったがこれで厄介事は終わりかな?」
「素直に受け取るならそうだけど、これ以上は勘弁してもらいたいわね」
さすがに宴ならば特に何も起きることはないだろう。そんな呑気なことを考えながら城の中をブラブラとしている。
誰も彼も忙しそうで暇潰しに付き合ってくれるような人は誰もいない、時間までに帰ればいいだろうと城を抜け出して城下街を散歩することにした。
「ウィルバレーとはまた違った感じの街ですね。いろんな種族の人がいるみたいで賑やかです!」
「おいしそうなものがいっぱい。」
街は活気で溢れていて、道行く人達の中には見慣れぬ民族衣装の様なものを着込んだ褐色肌の人や耳が生えた獣人にユリヤのようなエルフも混ざっていて、いかにここが発展した街なのかがわかる。
その中に見慣れた赤髪の少女がコチラに気が付き、手を振りながら近づいて来ていた。
「マサル! こんなところで会えるなんて奇遇ね、会いに来てくれたの?」
彼女はネルア、人間の姿をしているが竜なのだが、こんなとろとはこちらのセリフだ。何故いるのだろうか?
「俺達は王様から呼び出しがあってここに来てたんだ、お父さんの件とかだよ」
「私は可愛い洋服とかを買うためにこの街でアルバイトしてるの。そちらの方々は?」
「初めまして。私はカヤノよ」
「ワタシはユリヤと申します。この子はベルちゃんです」
「こんにちは。」
ふーん。とカヤノ達を見るネルアに何か嫌な予感が脳裏をよぎる。
「初めまして! 私はネルア、マサルの彼女です!」
ニッコリと笑い俺の腕に組み付くと彼女はとんでもないことを言い放つ、時が止まった気がした。
「いきなり何言ってんだよ! 俺達そんな関係じゃないだろ!」
慌てて腕を振りほどき言うと寿命が減ったのを感じる。
カヤノがゴミを見るような目でこちらを見ている。
ユリヤは今だに固まったままだ。
ベルは、何やら黒いオーラを放っている。
ネルアの方を見ると涙目になっていた。
「アンタさ、竜の鱗受け取ったでしょ、それ求愛の証よ」
ゴミを見るような目で見ていたカヤノが俺の腰についている赤い鱗を指差す。
静かに泣くネルアに知らなかったということを伝え、他の面々にもどうにか弁解したが俺達の中に漂う空気は怪しいもののままだった。
埒が明かなかったので、スキル『詐欺師のニ枚舌』でどうにか丸め込んだ。カヤノのが俺を糞にまみれたゴミムシを見る目に変わっていたが背に腹は変えられなかったのでやり通した。
怖くて彼女の顔を見ることはできなくなったが。
話を逸らすためにネルアを宴に連れてくることにした。街の中は何が起こるか分からないので早々に引き上げおとなしく城の中にいよう。
「大きい所だね! 私お城の中に入ってみたかったんだよね!」
とても上機嫌そうにあちこちを見ている彼女に微笑ましさを感じていると、更に災厄が舞い降りた。
「お兄ちゃん! ジェネイドというものがありながら、浮気です? その子達は誰です!?」
幼い少女(元老人)が演技過剰に無理やり昼ドラに巻き込んできたのだ。
今度は空気が凍りつく。
ネルアの事もあってか、裏でジェネイドにもこなかけていた疑惑が発生し、誤解を解くのに多くの寿命を犠牲にすることになり、生きている心地がしなかった。
「ごめんね。ジェネイド修羅場体験してみたかったの、誤解させちゃったね」
「そうだったの。マサルったら幼い女の子好きなのかと思っちゃった!」
「いや、その人元おと、なんでもないです」
「いわないほうがいいとおもう。」
陰で失敗したか、と舌打ちしていたジェネイドには触れないようにしておこう、これ以上は俺の命が本当の意味でもたない。
そんなゴタゴタをしているとメイド達が現れ、間もなく宴が始まるので正装にお着替え下さいと連れて行かれた。
「うーん、変じゃないですか?」
「大変お似合いですよマサル様」
ちゃんとした服なんて学校の制服くらいしか着たことのない俺には貴族が着用するようなコレは落ち着かない。
鏡に映った俺を見ると、なかなか様になっているかも。
この角度いいな、もしかして俺イケメンじゃないだろうか?
髪も整えられカッコよくなった俺に見惚れていると、はよ行けと急かされたので渋々パーティ会場にはいる。
「あ、マサルさんもう始まりますよ!」
「男の癖に遅い、あんたが最後よ」
「ごはん、早く食べたい」
扉を開けると豪華な食事が並べられており、大勢の人々の中に綺麗なドレスで着飾ったカヤノ達がいる。
飛び入りで参加したネルアもそうだが、専用に用意されたんじゃないかと言う程1人1人に合った服で正直少しの間見惚れてしまった。
「おお、今宵の主役がきよったわい! では始めよう、宴だ!」
王が声を上げると待ってましたと料理に手を付け始め、一気に賑やかな空気に包まれた。
「これがパーティと言うものね! パパやママにも見せたかったわ!」
「たべもの、たべものがいっぱい!」
豪華な装飾と食事に興奮気味なのを他所に俺は隅っこの方で大人しくしていた。
何もかもが落ち着かない、というよりこんなパリピなイベントなんて初めてなのでどうしていいかわからない。
場内には貴族らしき者達もいて、とても優雅で華やかな存在が俺の存在を上手く掻き消してくれているようだ。
ひたすら隠れ潜みながら胃に極上の食べ物を詰め込んでいく、入れ物を買ってきたのでコッソリ料理を持って帰ろう。
「マサル、主賓の貴方が何故気配を消してそんな隅にいるの?」
そんなひっそりとみみっちい考えをしていると呆れた顔をしたアリシアが話しかけてきた。
「隅っこにいるの癖になってんだ、ここなら背後を取られないからな。俺の後ろに立つと痛い目見ちゃうぜ?」
「…………」
冗談を言って和ませてやろうとしたのだが、全く面白くなかったのか彼女は真顔だ。
「ねぇ、何故お父様に呼ばれたかわかる?」
「それは礼をするついでに厄介事を押し付けるためだろ?」
「一国の王がわざわざそんな事すると本当に思っているの? 素性の知れないものなんて使いを寄こして済ますのが普通じゃないかしら」
彼女は真顔のままジッと俺の目を見つめてくる。
「あの人ならあるんじゃないか、王様なんて以外と暇そうだし無理難題押し付けてからかいたかったんじゃにいか?」
「本当は分かってるんじゃないの?」
見透かされる気がして目を見返すことができない。
「私がなんで暗部みたいな真似してると思う?」
「そんなこと聞かれても俺にはサッパリ! そんな話より飯食わないか? このケーキ美味いよな!」
「本来なら王家の次女なんて国を担う存在にはなれない上に政治目的での結婚をさせられる道具にすぎないの」
俺の必死の話題そらしを気にもとめず続ける。
今すぐ逃げたしてしまいたい。
「私もできたら恋をした相手と結婚したい、当然でしょ? 私にはそう言った才能があった。だから何でもやる代わりに相手を決める自由を18歳までという制限付きで貰ったの」
「ちょっとお手洗いに行きたくなってきたな、漏らしそうだよ」
「逃さないわよ、私の目を見なさい」
アリシアは壁に手をついて俺が逃げようとするのを封じてきた。
これが壁ドンか、やってみたかったが、まさかやられる側になるとは。
「マサル? どうされたんですか?」
「あの子だれ? なにやってんの?」
最悪のタイミングでユリヤ達が揃って声をかけてくる。それと同時かワザと見せつけるためにかアリシアが俺に向かって言い放った。
「貴方が好きよ、私と結婚しなさい」
「え?」
分かってはいた。
ここまで直接的に来られるとは思わなかったが時間の問題かもしれないとは思っていた。
人に好かれるようにとスキルで最善の行動、セリフを選んで言っていた俺はこの行いの欠点を理解しながらも大丈夫だと使い続けていたのだ。
「え、どういうことですか、王女様」
「なに、なんなの?」
「あら、皆様お揃いでどうしたのかしら? 聞いてらしたのならその通りよ、私達結婚します」
やはりアリシアは気がついてたのかもしれない、慌てる様子もなく堂々と彼女達に言い放つ。
俺は何も言うことができずに呆然としていた。
この場を収める方法がわからない、スキルを使うにも所詮その場しのぎだ。また同じことになるかもしれない。
「何か文句がお有りで? 貴方達はそういった関係ではないと聞いているけど?」
「確かにそうですけど……マサルさんはどう思っているんですか、この方と結婚するつもりなんですか!?」
「こたえて。」
「うっ、ええと」
黙っている訳にもいかないようだがどう発言しても俺は誰かをうらぎってしまう、そうなれば今の俺では命が。
「はぁ、何考えてるかわかるけどアンタの自業自得よ」
「カヤノ……」
黙って見ていたカヤノが口を開いた。
冷たい目で見て突き放す口調で言い放つが、でもねと続ける。
「まぁ童貞ニートには荷が重いか。助けてあげるわ、感謝しなさい。私もこんな事で死にたくないしね」
そう言って睨み合っている彼女達の中に割り込み、アリシアに向かって俺の状況について話しだした。
「王女様コイツは呪い、みたいなもので寿命がない死にかけの男なのよ」
「……どういうこと?」
「なんの話? 何を言っているの?」
「ネルアさん、実は……」
全てを話した。
俺が異世界から来た事、悪事をすると寿命がなくなること、今現在1万年もの負債があり、それを解消しない限りは普通に生きることもできないと。
「だから彼は貴方と結婚などできません。少なくとも今はね」
「そう、嘘は……ついている様には見えないわね」
「そんな事があったのね。それって結構、いやマジでやばいよね?」
なんとかなった。のか?
結局は時間稼ぎにしかならないのかもしれないが少なくとも今終わってしまうことはない。
「この負債を全部返したら逃げずに思いに答える。だからそれまで待っていて欲しい」
「いいでしょう、せっかく夫にしたのにすぐ死なれては意味がないもの。我慢してあげる」
「私もそれまで待つかな、少しの間くらいいい女ならまてるもんね!」
これまでは地道に善い事をしてゆっくりとしていればいいと思っていた。
どうもそうはいかないようで、このままでは駄目なようだ。
こうなればやるしかない、俺の命の負債1万年を全力で返済してやる!
これが最強の力を得た俺の、善人伝説の幕開けだ!




