つなぎ
ただひたすらに暗い空間を、回葬電車は走る。
花畑や死の国をちらりと見て、現世の周りを走り、間の国の隣を通り、越国の前を通る。
一番明るく見えるのは、やはり越国だろう。神々や天使、悪魔といった超越した存在が暮らす世界だからだろうか。
二番目に明るいのは、現世だ。
人が作り出した光も明るいけど、それだけじゃなくて、命の明るさに溢れている。明るくて、優しい世界だ。
三番目に明るいのは、間の国。
間の国は妖や幽霊、妖怪が住む世界。妖の類にとって、人の生み出した現世の光は明るすぎるのだろう。
一番暗いのは、やはり死の国だ。
死の国には、生きている命がない。命の明るさが存在しないのだ。そして、死の国はもともと色彩が少し暗い。
そして、これら4つの世界を繋ぐのがこの空間、「つなぎ」だ。
つなぎは、無の世界。
何もない。暗闇だけがこの世界を支配する。誰のものでもない。生も死もない。ただただ、暗闇でしかないのだ。
そんな空間を回葬電車は走る。
現世と死の国を繋ぐために。
「——ちりか、お客さんだ」
ある意味、私はこの電車の意味を無くす仕事をしているのかもしれない。
……いや、している。
だから私の仕事は忌み嫌われるべき仕事であって、禁じられている仕事なのだ。
それでもいい。
私は、後悔をしてほしくない。
「……うん」
私は、帽子と鞄を手に取った。




