表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回葬電車の車掌録  作者: 花籠ちりか
19/21

大鎌と光の糸

 私は、信じられない思いでそれを見ていた。気づかぬうちにローブのフードを被り、髑髏の仮面をつけていたその少年——陸くんを。

 その姿は、よくある子供向きの怖い本に出てくる死神の挿絵そっくりだった。

 すっくと陸くんは立ち上がる。胸に手を当て、そのあと一礼するなり、はっきりと言った。


「私の名はリック。最上位の死神である」


 その声はさっきまでの幼い声とは違う。若くても私と同年代ぐらいの声だ。

 私はあっけにとられながらも、胸に手を当てて、一礼した。陸くん——いや、リックさんがしたように。

「——チリカに会うために、ここに来た。どうやら私から隠れて車掌をしている者がいるらしいと聞いて」

 ——そうか。

 死神なら……しかもそれが、最上位の死神なら、私が『死の国にいなければならない』ことを知っていてもおかしくないのかもしれない。そして、私が死の国に行くことなくここで車掌を続けているから……そうか。だからさっきはあんなことを言ったのか。『()()()()()車掌をやってるなんて』——つまり、最上位の死神である、リックさんに黙って車掌をしているなんて、『勇気あるよね』なんてことを。

 リックさんはふっと右手を挙げた。

「そしてこれからどうなるかは……分かっているな」

 その右手には、緩やかな黒い炎が舞っていた。そしてその炎が消えた時……


 そこには、大鎌が出現していた。


 それを()()()が一振りすれば、全てが無かったことになるのだと思った。勘が、第六感と呼ばれるであろうそれが、そう言っている。

 きっと私は、死の国に強制的に送られるだらう。もしかしたら、もう完全に私という()()は消えてしまうのかもしれない。

 死神様は大鎌を両手で持ち直した。鎌を構え、振り上げ、ゆっくりと私に向かって振り下ろそうとする。その動作が全て、酷くゆっくりに見えた。

(運転手さん、聡美さん……)

 思わず、目をつぶってしまう。


 ——パチン!


 甲高い音が聞こえ、目を開ける。

 足につけていた糸が、聡美さんがつけてくれていた糸が、切れていた。

「——そうか。光の糸か」

 死神様は驚きつつも、納得がいったような声で言い、うなづいた。

 一方私は、訳が分からなかった。ただ、聡美さんが私を守ってくれたのだと感じた。

 死神様は再び大鎌を持ち直す。

「もう光の糸の守護はない。これで最期だ」

 そして、ゆっくりと振り上げたのだ。


「——待って!」


 振り下ろされるその直前。

 私は叫んでいた。

 私は肩からかけている鞄の中に片手を突っ込んでいる。鞄の中には、聡美さんからもらったミサンガ用の糸。完成しているミサンガもあるし、ただの糸もある。でもそんなことは関係ない。きっと、私の足についていたものと同じ。私を守ってくれるはずだ。

 それを握りしめ、心の中でつぶやいた。

 聡美さん、少しだけ力を貸してください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ