死神の手帳Ⅱ 謎
私は深呼吸した。現世からここに来られたとはいえ、相手は人。自分よりも随分目下の者だ。
「……名をなんという」
自分も椅子に座り、次に口を開いた時には敬語をやめ、いつも通り話し始めた。
「中村顕子と申します。以後、お見知り置きを」
現世から来たというその女は、そう名乗った。側には白い杖があった。若いのに杖をつくのか? 不思議だ、彼女は。
「ならば、アキコと呼ばせてもらおうか」
そう言うと、アキコはうなづいた。
「私はリック。最上位の死神である……なんて言っても、お前はそれを知っているのであろうな」
「ええ」
お互い名乗り終わった後、私は一番肝心なことを訊いてみた。
「何故、ここに来れた?」
「間の国と越国の間に、お互いが行き来できる道がありますでしょう? 現世と間の国もお互いが行き来できるようになっておりますし……」
アキコはなんともないような顔で言った。彼女の言葉の通りだ。しかし、それでも疑問は残る。
「だとしても、間の国と越国を繋ぐ道は現世の者は通れないはずだ」
しかしこの問いにも、アキコは狼狽えない。
「ええ、そうです。ですが、現世に住む、間の国の血を引く者であれば、越国に来れます」
アキコの言葉を聞き、雷が落ちたかのような衝撃が走る。
「……そうか。間の国出身か。たしかに、間の国の者は、越国に行ける」
「いえ、現世生まれの現世育ちではございますが、母が間の国の出身でして」
「なるほど。ならば、間の国の者と現世の者の混血ということか。礼儀作法は、母親に教わったのか?」
「はい」
私はようやく納得がいった。
「ところで、要件は何だ?」
「ひとつ、知りたいことがございます」
アキコはそう言って、一度深呼吸をした。
そして。
「——回葬電車に、車掌はおりますでしょうか?」




