第三六話
期末試験も終わり、学生にはご褒美に相応しい夏休み。海、花火、バーベキュー、夏祭り。楽しいことがこれから待ち受ける。
「暑い......暑い......」
過去最高気温を更新した大学所在地。そもそも更新したことを報道する意義とは何だろうか。暑いことに変わりはなく、暑いという言葉を聞けば余計に暑くなるのだから、もっと気を使って欲しいものだ。
今私は何をしているのか。
友達と海
好きな人とお出かけ
夏祭りで出店の料理を制覇
家でぐうたら
否、私は大学の希望制の夏期講座に参加している。資格試験と就職試験 、各一つずつ受講する、俗に言う意識高い女史だ。家でぐうたらすることもできるが、香澄さんに『学生の本文は勉強。勉強したくないならインターンシップでもしてきなさい』と言われ、九時から十七時までの在宅は基本禁止になった。里恵が言うには香澄さんがぐうたらできないから。ちなみにまだ十八の娘ということもあって、店の手伝いは買い出しや店の掃除、ブラックボードの記入で良いとのこと。それ以外店内では自由にしていいらしい。
「なんで日本の夏はここまで暑いのかな。友人の家で涼めたら良いのに......」
友人の家に行くという選択も出来なくはないが、やることといえば部屋の片付けか よく分からない理由で巻き込まれる運命の二択。三週間前は鍋。二週間前は焼き肉。一週間前はたこ焼きパーティー。この三つは突然誘われた。先月の七夕には彦星織姫コスプレ。無茶なことに巻き込む割には、対価として星付き料理やナイトプールにも連れていってくれる、誰もが憧れる『お嬢様』。本人は「堅苦しい生き方よりフリーダムな生き方の方が私には似合っている。金や地位、人脈があっても、それらの重みで潰れるか酔いしれて果てしない欲の二択が待ち受けていると思う。今まで会った大人や歳の近い人達の多くが後者で本当の彼らと交流した気がしなくて嫌気が差す。だからといって彼らの生き方を否定するつもりはない。生き方なんて人それぞれ。千差万別。私は彼らのようになりたくない」と目を輝かせて言っていた。
彼らのような生き方に憧れている人が聞いたら妬みを買うに違いない。聞いた時の私がそうだった。
神が居るなら、私と彼女を入れ換えて欲しいと願う。それでも私は今の生活が好きだ。里恵や香澄さんと出会えているのだから。
「ピンポーン」
高く鋭い、そして学内。学内に設置されたスピーカー。
「午前の講座の参加学生に連絡です。冷暖房の故障により会場を変更します。詳細は大学よりメールを送信しましたので、該当学生は確認するように。繰り返します」
どうやら今年の暑さは一段と厳しく長く、胸が騒ぐような気がする。




