第三五話
七月二一日 一四時三〇分
七月も下旬に入り、陽の光に照らされ、あまりの暑さと紫外線にこのままこんがり焼かれてしまいそうな気もした。ニュースでも熱中症に注意することが言われている中で、何もしているわけではない。ただ昨日、我が家のエアコンが殉職してしまった。団扇と扇風機、保冷剤、冷却グッズがこの猛暑をのりきる術。
「美幸、あんた社会人なのにだらしないわね」
リビングのソファーにうなだれている私こと美幸。理恵のご厚意で避難させていただいている。本当に家電というものは便利な分、壊れるとすぐに生活に支障をきたす。それだけ人間の生活は家電に支えられている。
「香澄さんこそ、年上の割に言えたものではないですね。里恵に買い出しを頼むなんて.......」
「ふっ、私は店の経営者なの! あの子の上長なの!」
念を押すように人差し指を私の顔に向けて言った。
「今の時代、上司がむやみやたら威張るなんて時代遅れのやり方ですよ。あっ、すいません。決して年齢がどうとかではないですよ(笑)」
「ほう、言うようになったじゃない」
香澄は眉間に皺を寄せ、今にも飛びかかりそうな様子で反論した。
そう私の向かいのソファーでももう一人横になってうなだれている方がいる。そう香澄さんだ。
同じ社会人に加え、私より半分以上生きている香澄さん。それも曰く付き。幼児の頃から男児を従えていたとか、やる気のない弱小ソフトボール部を半年で全国大会出場の強豪にしたとか、会社の役員を大泣きさせたとか、何が事実で何が嘘なのか分からない。里恵いわく、とにかく尾ひれがつきまくっているとのこと。
そんな女性を容易くダウンさせる『夏』というものは恐ろすぎる。香澄さんの母親も男勝りで、泣かせた男性は数知れず、礼儀知らずの不良に説教して土下座までさせたとか、ないとか。
ちなみに香澄さんの母親も夏と冬に弱いらしい。香澄さんの血すじとは......恐るべき。
「私は美幸より年というハンデがあるから。強者にハンデを付けるのは定番よ」
「敗者は勝負が確定する前に戯言を言うものです。負けを認めるということですね」
「認めないわ(怒)」
大人が二人の意地の張り合いは里恵が帰ってきた時まで続いた。そして子どものような意地の張り合いをしたことに里恵が、私たちを叱ったことは言うまでもない。




