第二七話
本編第二七話です。
四月一四日 二一時
四月に入り、新たな環境の始まりの季節である。私の職場にも新入社員が入り、後輩たちは彼らの指導に努めている。しかし、私が担当しているプロジェクトは厳しい状況にある。市場調査や試験を行ったが、まだ期待通りの結果が得られない。上層部はプロジェクトリーダーの私に力不足という理由で強く当たる。これほどに辛い経験は私の心に来る。部下は私のことを庇ってくれるから、少しは耐えられる。そして、部下以外にも私のことを庇ってくれ、癒してくれる人がいる。私はその人に甘える。
「今日もお勤め、ご苦労様です」
「ありがとう、里恵♪」
里恵と付き合い始めて、三ヶ月。最初は甘えられる側だったが、いつの間にか甘える側になっていた。仕事疲れにある私を里恵が優しく癒してくれるため、ついつい甘えてしまう。一言で言えば「里恵には母性」があるということだ。
「美幸、以前のあんたはどこへ行ったのよ。保護者兼経営者の私として、見過ごせないわ」
「すいません・・・」
いつもこんな感じのやり取りをするため、香澄さんや美姫、千夏からの視線が痛い。
「でっ、里恵、美幸とはどこまでいったのよ」
「えっ、どういうことですか?」
「だ・か・ら、美幸とは美幸とどこまでいちゃいちゃしたのということよ」
「えーと・・・」
香澄さんは里恵に私と付き合ってから、どこまで関係が進んだか聞き始めたが、里恵は口を開こうとしない。
「香澄さん、無理やり聞くのはいかがなものかよ・・・」
「あらっ、美幸が答えてくれるのね」
(いやっ、誰も答えるとは言ってませんよ)
「まぁ、良いわ。あなた達のことだから、キス程度だと思っているわ」
(香澄さんは意地悪だな)
「美幸と里恵の二人に言っておくわ。恋は全てうまく行くとわ限らないわ。時として迷い、壁にぶつかることもあるわ。ただ、迷い、壁にぶつかってもだから、初心を忘れてはいけないわ。だから、お互いの気持ちを確かめ合いなさい」
香澄さんからの一言に私と里恵は惹きつけられた。それは私たちより長く生きる経験者の言葉のように聞こえた。
「はい、絶対に里恵を大切にします」
「何言っているのよ、あんたは」
香澄さんから怒られたが、里恵は顔を赤くしながら手で顔を隠した。
「それにしても、あの子、遅いわね」
「あの子?」
「あぁ、美幸には言ってなかったかしら。新たに人を雇ったのよ。まぁ、親戚の子で、今年の春から大学に入るという事でこっちに住むことになったのよ」
その子の話をしていると、里恵と同じ服装をした見覚えのある子が入ってきた。
「すみません、遅くなりました」
「遅いわよ。もう近くのコンビニくらいで」
「まぁ、初めてなんですから、多めに見ましょうよ。私だって同じでしたから」
「いや、里恵の場合、働く前から、この辺の地理を理解してあったから、苦労はしなかったはずよ」
「ははっ、そうですね。美幸さん、こちらがその子で琴音と言います。琴音、こちらだ以前話してあった美幸さんだよ」
「美幸さん、初めまして、琴音です。よろしくお願いします」
「美幸です。以前、お会いしましたよね」
「あーあの時の方ですね」
「」あらっ、二人とも面識あったのね
「ええっ、桜見に行ったときに会ったのです。これから、お世話になるね、琴音ちゃん」
「よろしくお願いします」
新しいメンバーが増え、お店はより盛り上がった。春という出会いの季節に感謝して。
読んでいただき、ありがとうございます。
次回の「信頼の百合の華」は三月一七日の投稿になります。また、三月一〇日は百合小説「夢の中で」を投稿します。




