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信頼の百合の華  作者: 魚を食べる犬
始まりから結ばれるまで
25/51

第一五話

本編第一五話です

 香澄さんが倒れてから、一週間が経った。検査入院してから、容体に異変無く、回復に向かっている。店は里恵一人でやらせるわけにはいかない上に香澄さんの事で気持ちがいっぱいなので、開業日を限定し、営業時間を短縮する事で乗りきった。今日は検査結果が分かる日でもあり、私と里恵はドキドキしながら朝を向かえた。結果を聞く前に病室に寄り、香澄さんに話したら、『あなた達、私以上に気にしすぎよ!!自分の身体だから、私が一番気になるのよ。まったく、美幸が歳とか言うからよ』と説教された。里恵には『美幸さん・・・勇者ですね。香澄さんに歳の話をするとは』と尊敬された。悪気で言ったわけでないが、里恵にそう言われるとショックだ。

 医者から検査結果を聞き、結果は『異状なし』単なる、貧血という事で収束し、すぐに退院が決まった。今晩は快気祝いという事で常連客が腕を振るってくれる。快気祝いについては、美姫に任せている。以前、頼ってほしいと言っていたので、お言葉に甘えてそうさせてもらった。結果を聞いた私たちは香澄さんの家でひと段落している。

「一週間ぶりの我が家は、最高だわ。う~ん、やはり我が家が一番!!」

 幸せそうに片づけをする香澄さん。

「だとしても、帰って早々、大人しくしていても良いんですよ」

 香澄さんの隣で片づけをする自分。

「一週間もベッドにいたら、身体が訛ってしまうのよ」

「やはり、歳・・・」

「それ以上言ったら」

「はい、すみません」

 それ以上の事は言われなくても分かる。

「くすっ」

 このやり取りを里恵に笑われた。

「父が言ってました。父が三〇代になって、体力の衰えを感じた時、香澄さんが父に『それ、歳のせいじゃない』と言ったらしいです」

「あぁ、そんな事あったわね」

 香澄さんは懐かしそうな顔をした。

(香澄さんも私と同じ事を言ったんだ)

「あっ、私、洗濯物を干してきます」

 大量の洗濯物が入った籠を持って、庭の物干し竿のもとへ行った。

「あの子もあの子で大きくなったわね。今回の事でも、店の事と両立して。美幸、ありがとう。そして、あの子をよろしく頼むわ」

 香澄さんのその一言が気になり、言葉が出なかった。

「間違っても、変な事したら承知しないわよ」

「香澄さんは里恵の事を思っているんですね」

「そうよ。親代わりでも、子を思う心は同じよ。あの子は・・・辛い過去があったんだから。これからは幸せに生きていってほしいわ」

「辛い過去ですか・・・」

 里恵の過去については詳しく知らない。ついさっきまで和気あいあいとした雰囲気が、一気に引き締まった。

「美幸、あなたには言ってなかったわね。今から言う事は他人には秘密よ」

「はい・・・」

「結論から言うと、里恵は両親から虐待を受けていたのよ。それも中学から高校まで。あの子と両親は誰もが認める模範的親子像だったわ。でもある日を境に親子関係はおかしくなったわ。あの頃、私は月一であの子の家に遊びに行ってたわ。ただの怪我だと思っていたけど、日に日に傷が見受けられるようになって、さすがにおかしいと疑ったわ。会う度に、傷が増えていたわ。怪我の形や痕の残り方、里恵の両親の態度から、間違いなく虐待だと気づいたわ。あの子に聞いても、『転んでしまったんです』『料理で失敗したんです』と笑顔で返答してたけど、実親への純粋な思いから打ち明けられなかったんだと思うわ。あの子が高校二年の時に、あの子は自殺未遂をしたわ。親からの虐待、周囲からの嫌がらせ、今まであの子に溜まっていた負の感情があふれ出したのよ。そして私が虐待を明るみに出して、あの子の親権を両親から私に移して、私が育てる事にしたわ。虐待からあの子を救った身だけど、早くに気づいていたのに救えなかった自分が悔しいわ」

(里恵に・・・そんな事があったの・・・)

 あまりにも衝撃的な内容で、どう返事をしたら良いか分からない。

「その原因は何だったんですか?」

「以前話したあの子が小六の時に遭難した話を覚えているかしら。あれが原因よ。前にも言った通り、里恵と親戚の子数人が実家近くの山で遭難した。里恵が無理やり連れまわしたという事になっているけど、今になっても不思議に思うわ。あなたも知っている通りに、里恵は他人に強引な事はしない性格で、実際はあの子のせいではないわ。でも、あの時はあの子のせいになっていたわ」

「なぜですか・・・?」

「遭難した子の親が、大事おおごとにしてしまったのよ。元々、あの遭難は里恵以外の子供たちが勝手に山に行った事が原因よ。私が里恵から話を聞いた時は嘘をついていないと目で訴えていたし、その目が嘘をつく目でなかったから、あの子のせいではないとすぐに気づいたわ。でも、遭難した子の親が事を荒げてしまい、里恵の両親は責任を追及されて親族内での立場を追い詰められた。そしてあの子の両親は里恵に当たるようになった」

(里恵にそんな事があったなんて・・・)

「あの子は悲しい過去を経験したから、もう二度と苦しい思いはしてほしくないわ。私は全力で幸せにしようと頑張ってきたわ。引き取った頃は私を慕ってくれたわ。でも今は、美幸あなたを慕っているわ。だから、あの子を支えてあげて」

里恵の辛い過去を知る香澄さんが私に里恵を託す。それだけ私は香澄さんから認められているという事だ。

「分かりました。ご期待に添えるように努力します」

「頼んだわよ・・・」

 真剣な眼差しで、香澄さんを見つめて、私は返事をした。そうこうしている内に、里恵が洗濯干しを終えて、戻ってきた。

「そろそろ店に行く時間ですよ♪」

「もう、そんな時間!!」

 香澄さんに話を聞いていて、あっという間に時間が過ぎたと驚いた。急いで身支度を済ませ、香澄さんの店へ行った。香澄さんが店に入ると同時に、店内で待っていた常連客が一斉にクラッカーを鳴らした

「香澄さん、退院おめでとうございます」

「あらっ、嬉しいわね」

 退院祝いに手料理や千羽鶴など香澄さんを思う常連が必死に用意した。

「ありがとうございました。ここまでやってくれて助かりました」

 私は美姫に小声で言った。

「良いのよ。今度、お礼に出掛けましょう♪」

「検討します」

 誘いを濁したが、まぁお礼はするつもりだ。

「では一言、香澄さんからお言葉を頂きましょう」

「今回は心配を掛けたわね。無理をしすぎた事が原因で皆に心配掛けちゃったわね。申し訳ないわ。これからは元気に店をやっていくわ!!」

 私も含め、香澄さんからの言葉が心に染み、涙が出た。

「それじゃあ、楽しい会にするわよ!!では、乾杯~」

 香澄さんから託されたものを必死に受け止め、里恵を幸せにする事を決意し、楽しい時間を過ごした。

読んでいただき、ありがとうございます

里恵の過去話が出てきましたが涙を流しながら書いていました

敏感というか、書いたり読んでいる時に共感する事が多く、気がついたら今回のように涙を流す事があります

今回は、この作品を我が子のように愛しているから涙が出た考えています

今後も「信頼の百合の華」をよろしくお願いします

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