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信頼の百合の華  作者: 魚を食べる犬
始まりから結ばれるまで
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第一一話

本編の第一一話です

 母が亡くなり、実家を跡にして、二週間が経った。まだ、この世に母がいない事に実感が湧かない日々が続いている。仕事を休めるわけでもなく、無理して職場に出勤している。今でも両親が亡くなる前と今を比べると仕事のミスが格段に目立つようになっている。例の後輩も私を元気づけようと昼食に誘ったり、差し入れにお菓子をくれたりする。今日も『先輩の好きなパスタが美味しい店を見つけたので行きましょう。そこは職場から距離はありますが、お昼限定でサラダやデザートが無料で付くらしいです』と誘ってくれた。断るのも悪いので二つ返事で了承し、食べに行った。後輩の言う通り、パスタが美味しく、デザートはフルーツの乗ったケーキで、おしゃれだった。同僚やプロジェクトの関係者は私の事情を知っているので、気を使ってもらっている。その時は笑顔でいるが内心は辛い気持ちでいっぱいで、このまま心配かけるのも申し訳ない。同僚やプロジェクト関係者のみならず、里恵や香澄さんにも心配を掛けてしまった。

 毎週通っているのに、すでに一ヶ月も来ないという事で、里恵から『最近、美幸さんがお店に来なくてみんな心配しています』とメールが来て、私は『プロジェクト関係で忙しくて。今度の金曜日に行くよ』と返事を送った。そして、私は今、お店の前にいる。なんて言って、入店しようか考えたが思いつかず、いつも通りに入店した。

「いらっしゃいませあっ!?美幸さん、お久しぶりです」

「久しぶり、里恵。心配かけてごめんね」

 久しぶりに里恵に会えて、とても心が満たされる。里恵の髪が以前より短くなっていた。それも、自然で柔らかさを感じさせるショートカット。そして店内はいつも通りに満席で、安心感を得た。

「てめぇ、何しに来た!」

「あらっ、美幸ちゃんじゃない。久しぶり♪私に会いに来たの。いつでもどこでも美幸ちゃんが会いたければ私は会いに行くよ♪」

 一ヶ月前のバーのイベントで私と戦った千夏と美姫が声を掛けてきた

「お久しぶりです。二人ともお元気ですね」

「美幸ちゃんに会えなくて、寂しかったよ。てっきり、嫌われたかと思ったよ」

(確かにあそこまで、執着されたら誰でも避けたくなるわ)

 いつもの面々に迎えられて、元気が戻ってきた

「そういえば、香澄さんの姿が見えないけど」

「香澄さんは買い出しです」

 里恵は私の問に答えた。その後、スーパーの買い物袋を手にした香澄さんが戻ってきた

「あらっ、美幸、久しぶり。元気そうでなによりだわ」

「ご心配をお掛けしました」

「まぁ、今回は大変だったとか」

「はい・・・。いつまでも悲しんでいては両親に怒られますから、元気に頑張っています」

「それでこそ。美幸じゃない♪」

 香澄さんはいつもの笑顔を私に向けた。そして私がいない間の出来事を聞かされた。

『里恵が女性雑誌で有名な美容室に言って、一新した話』や『香澄さんは怖いものが苦手で、ハロウィンの日に常連が香澄さんにドッキリをして怒られた話』など、段々落ち込んだ気持ちが晴れていった。気が付いたら、スマホの時計は閉店一五分前になっていた。

「もう閉店の時間よ。『帰りなさい』と言いたいところだけど、久々に美幸が来た事だし、今までの穴埋めとして、もう少し居て良いわよ。しかも、今から無料で料理を振る舞うわよ」

「香澄さん良いんですか?」

私は香澄さんの発言を疑った

「気にすることないわ」

(香澄さんも私の事を心配してくれて、そう言ってくれたんだな)

「良かったですね、美幸さん」

「うん、嬉しいよ、里恵」

香澄さんの言う通りに、閉店時間の後も、みんなと過ごした。香澄さんが腕を振る舞うと聞いたので、内心賄いかなと思ったが、驚いた事に私の好きな料理であるナポリタンや鶏肉のトマト煮など計五品目を作ってくれた。

(さっき手にしていた袋の中身は、このための物だったんだ)

 前に里恵から料理をしないとは聞いていたから、里恵と一緒に香澄さんの事を料理が不得意だと思ったが、そんなことなく、むしろ『なぜレストランを開かなかったんですか』と聞きたくなる程に美味しかった。美味しい料理があるものだから、みんな、お酒が進み、酔いつぶれた人もいた。帰る人もいたが、みんな楽しそうに、私に挨拶して去っていった。

(明日は、いや正しくは今日は土曜日だから、遅くまで飲んでいても良いか)

 閉店時間を四時間も過ぎていた時にはほとんどの人は帰っていった。

「じゃあ、私たちはこれで失礼するわ。じゃあね、美幸ちゃん。また会いましょう♪」

「じゃあな、美幸」

 そう言って、例の二人も店を出ていった。そういう事で、店内は私と里恵、香澄さんだけになった。

「美幸、あなたが元気になってくれて良かったわ」

「はい。そういえば、なんで私が落ち込んでいた事が分かっていたんですか?」

「こないだ、里恵が買い出しに出ていた時にあんたが浮かない顔していたと聞いたからよ」

「はい、美幸さんがとても浮かなく、思い詰めていたので心配になり、メールを送りました。そして、今日、来店すると分かり、元気づけようと常連の皆様に連絡して来てもらったんです」

(街中で里恵に見られていたなんて。しかも私を元気づけようとしてくれたなんて)

「里恵、ありがとう」

 私は泣きそうになりながら、里恵に感謝の言葉を言った

「こんな事で泣きそうになるなんて。美幸は子供ね」

「素直に嬉しいからです。では、そろそろ失礼します。今日はありがとうございました」

「これからも来なさいよ。あなたには温かく迎えてくれる人がいるんだから。あんたが辛い時は話くらいは聞いてあげるわ。」

(そうだ。確かに私は家族を失って、帰る場所がないと思っていた。しかし、私には里恵や香澄さん、常連のいる、この店がある。)

「美幸さん、これからもお待ちしてます」

 二人の言葉を聞いて、私は店を出た。外を出ると、まだ暗いが、スマホを見たら時間は五時ちょうどだった。

(今度、里恵や香澄さんにお礼をしないと)

 私は心の中で思いながら、嬉しい気持ちと店内での時間を思い出し、家へと向かった

読んでいただき、ありがとうございます

美幸が元気を取り戻したように、私も体調が回復しました

まだ声がガラガラですが、明日から小説書きを再開しようと思います

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