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説明と復興

皆さんも熱中症には気を付けてください。

「んで、あんなおっきくなってどうしたの?」

「わふっーん」


 住民が悲観に暮れているなか、僕は絶賛モフられ中。

 あれから消火と倒壊した物から救出し手当てが進められ、ようやく落ち着いた所でオリヒメに捕まった。

 そして現在、本来のサイズだと邪魔になるし目立つので《仔犬化》をして、それにオリヒメのギルメンが黄色い声を上げて滅茶苦茶にモフられている。

 その中には以前に共同浴場で仲良くお仕置きされたレインもおり、離れて相変わらずレインを盗撮している姉のサンライトもいた。

 戦場跡でここだけ異空間と化している。


「ギルドで飼えないかな」

「飼いたいよね」

「ちゃんとお世話するから、姉御ー」


 僕そっちのけで、姦ましく話ながら最終的にオリヒメに確認を取るギルメンたち。いや、だから僕はアリスンに既に飼われてるから。

 モフられてそのことを話す事も出来ない。あちこちから手が伸びて揉みくちゃだ。ハラスメント設定を切っている弊害が出てしまっている。まあ、嫌じゃないけど。


「残念だけど、リリは既に飼われてるみたいよ。首輪してるでしょ」

「えー」

「そのことで話があるから、皆一旦やめて……ね?」

「はい、姉御!」


 そしてオリヒメの絶妙な指捌きで快楽を与えながら、レイド解放の際に進化したこと、人間領に行ったこと、そこでアリスンのペットになったことを洗いざらい話してしまった。


「ふーん。私には飼われなかったのに。それよりも九月前のワールドアナウンスはこのことで、それを発生させたのがリリなんだね」


 そう、あのインフォメーションが本当ならこの戦闘は僕が切っ掛けなんだろう。

 確かにいつかは誰かが他領に行くだろうし、侵攻イベントは避けて通れないものだったとは思う。だけども、やはり僕が切っ掛けだと思うと責任を負う必要はあると考えてしまう。僕に何が出来るかは解らないけど。


「リリ……、落ち込まない。確かに今回はリリが始まりだったかもしれない。でもね、いつかは必ず発生していたことだと思うよ。あのワールドアナウンスの通りならね。それに情報の精査や初動が遅れたのはプレイヤー全員の責任。私たちも復興は手伝うから、ね?」

「うん……」


 僕の考えてることは解りやすいことなのかな。でも、誰かに肯定されて、協力もしてくれるのは嬉しいことだよね。


「そうだよねっ! それじゃあ、早く皆が元の生活に戻れるように頑張らなきゃだね」


 亡くなった人は帰ってこないけど。うん、ここにも慰霊碑を建てて祈ろう。安らかに休めるように。


「ところで、尻尾が上がってると可愛いリリのお尻の穴が丸見えだね」


 決意もすぐにオリヒメによって羞恥に変わった。今まで気にして無かったことを指摘されると、そりゃ恥ずかしい。慌てて駆け出したけど、すぐに捕まりギルメンに変わり番こに抱っこされながら人手が必要な場所に数名ずつ別れていく。

 同じ場所に沢山集まっても迷惑だからってことで別れて、最終的にオリヒメと二人……一人と一匹になった。


「リリ、辛い事があったら頼っていいからさ。今はギルドでなかなかタイミング合わないけど、チャットでもメールでもくれれば出来るだけ会って話し位は聴くし、手伝えることは手伝うから」

「ありがと……オリヒメってこんな性格だったっけ」


 つい漏らした疑問はオリヒメにも聞こえたのが、眉間をグリグリされた。痛い!


「はあー。私だってギルドのマスターになったしね。そりゃ、好きな小さくて可愛い子ばかり集めてるけどね。……中にはリアルで問題を抱えてプリハに逃げてきた子もいるからね。さりげなくフォローしてると、それがデフォになってね。まあ、可愛い子は幸せにならなきゃね。プリハも、リアルもね」

「そう……だね」


 小さくて可愛い子限定で幸せって言うのがオリヒメらしいけど、僕もアリスンには幸せになってもらいたいと思う。

 リアルのことはログイン時間の関係で小学生とカミングアウトされたけど、他のことは聞いていない。でも、時々見せる辛そうな顔を僕は見ている。アリスンは気付いてないだろうけどね。部活で園児や小学生と接するから尚気付けたんだろうし。


「おや、えーとオリヒメと……もしかしてチビかいな?」


 オリヒメと話ながら人手が必要そうな場所を探していたら、久しぶりに彫金師のキンリーに出会った。僕らはキンリーに弟子入りしたけど、長いこと行っていなかったので怒られるかな。


「チビは姿変わったみたいだけど、二人とも元気だったかい?」


 驚きから優しい顔になったキンリーの頭には包帯が巻かれ、左手も三角巾で吊り下げられている。顔にもうっすらと擦過傷が見られた。

 キンリーの腕力を考えると戦闘に参加して負傷したのかな。間接的にも僕が怪我をさせたようなものだ。例え仕方がなくても、知り合いのこんな姿を見るとやはり罪悪感が湧いてくる。


「あんたらも助っ人に来てくれたんだね。敵は弱かったが、家屋の下敷きになった人を助けてる時に、ヘマして退ける木材を間違えて更に倒壊してね。巻き込まれてしまったわ」


 僕らの視線に気付いて怪我のことを説明してくれる。救助の二次被害で負傷したんだね。それにしても、敵が弱いってキンリーはやっぱり強いんだね。


「しばらく仕事もお預けさね。家も直さないとだしね」

「え、家崩れたの?」

「仕事場は大丈夫だったが、玄関あたりが崩れたのと火の手で少し壁が焼けた位だから、まだ被害は少ないほうさね」


 確かに倒壊や全焼した家々は多いが、居住部分に被害が出ているなら少なくはないと思うんだけど。


「じゃ、直すの手伝うよ」

「私は技能取ってないけど、手伝える範囲は手伝うからね」


 オリヒメも協力を申し出てくれる。ただ、キンリーは優しく僕らを優しく撫でて首を振った。


「ありがとうね。でも、他にもっと困ってる人たちがいるで。そっちを手伝って……いや、あんたらに手伝えるか解らないが一ついいかい?」


 そして、キンリーが口にしたことは生命に関わるので出来るだけ早く解決したい案件だった。

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