拡がる噂
新学期から二週間。徐々に夏休みの余韻もなくなり、学生のリズムが戻ってきている。
夏休みにテニスの大会に出ているはずの満光が花火大会にいたことを久しぶりに電話で話したら、恥ずかしそうに高二の先輩と付き合うようになったらしい。年上好きな満光だけど、たった一歳しか違わなくても守備範囲に入っていたことにはビックリした。また、大会にはすでに予選敗退しており、先輩が地方大会を勝ち進んだらしいが、練習中に一人が捻挫で棄権。他の選手は全国大会に向けて練習中だが、お盆全て練習に費やすことはしていないと説明を受けた。練習と休養をしっかり設けているとか。強豪校だから、もっと練習練習と部活漬けだと思っていた。昔はそうだったらしいが、今の監督は休養も大事と部員にしっかりと休むように言っているとのことで、この間の花火大会は休養日だったらしい。見られて恥ずかしそうに説明していたが、途中からのノロケにそっと通話を切った。
樹は相変わらずのロリコンで彼女の気配もなく、プリハでは社会人中心ギルド『リベラシオン』に所属している。おっさんばかりだけど話は合うし、おっさんばかりだからこそ心の清涼剤のロリの有り難みがより実感できると、こちらも次第にロリ談義が白熱したのでそっと通話を切った。
変わった友人に変わらない友人。樹は僕の女性姿は見たことがあるが、改めて僕のことを二人に伝えたけど、男女関係なくユーリはユーリといつもの台詞に二人の友人がさらに大切な存在になった。
「さて、宿題も終わったし行こうかな」
プリハでは放置していた土地の修繕もなんとか終わり、また資金稼ぎに薬作りに引きこもっていた。
もうすぐ九月連休だけども、新しい公式イベントの告知はないので、どう過ごすかも考えないといけない。基本行き当たりばったりなのだけども。
プリハの地に降りたって、動物たちと触れあいながら状態の確認をして、畑や薬草園では採集しながら水やりなどの管理を行いながら連休の大まかな予定だけでも考えていく。
「やっぱりアリスンの元でペット生活かな」
メール機能でやり取りはしているが、やはり生活リズムが合わないのでそう一緒に行動できない。そりゃ、小学生と高校生じゃなかなかタイミングが合わないのは仕方がない。
それに人間領に行くには首都経由で転移するのが楽だが、犬の姿で人間領に転移をしたら注目されるのでなかなか難しい。はやく他のプレイヤーも領の往来が楽なら良いのに、中間に高レベル帯のエリアがあるために未だに攻略が進んでいない。
僕と一部見守り隊でもう一度河を渡ろうとしたら、モブの攻撃性のアップと流木などの障害物が増えており、運営が修正したらしい痕跡があった。ただ、僕への攻撃は見守り隊よりも少なかったので、進化で難易度が変わるのはそのままなのかもしれない。
「そういえば……」
見守り隊で思い出したが、ここ最近の首都や副都市できな臭い噂があると教えて貰った。
なんでも夜に不審な一団を見たとか、首都周辺で木を切る音がしたや夜営跡があったとか。
それも最近は住民全体に噂が拡がっており、警備を増やしているとのこと。
その中で、確かに不審な一団を夜に確認され、都市を囲む柵の一部が壊されていたりと警戒を強めるには十分な要因が見付かっているらしい。
住民に不安も拡がっており、何かあったらのために備蓄を増やす動きや食料品や医療品に鉱物や武器防具の流通に影響が出始め、値上がりまで起き初めているとか。
プレイヤー側は何かのイベントかと情報を集めているが、近々なにかがあるとだけの認識で、一部が素材などの買い占めが発生している。公式アナウンスもないので、隠しイベントか何かだと思われているが各領で同じ噂が流れているので確実に何かはあるとだけ認知している。
スレッドでも噂関連の物が各領と総合で建っており、噂の拡散具合と住民の動きで時期的に九月連休にイベントがあるんじゃないかと憶測が飛び交っている。
そして内容が防衛イベントか敵拠点襲撃イベントだと噂から予測されている。
スタンピート的なものからの防衛か、不審な一団の討伐と拠点襲撃イベントのどちらかとしても、プレイヤーの準備期間も短く物資も不足していると慌ただしく行動しながらも、スレッドを通して情報の共有化も行っていると見守り隊から教えて貰ったんだと思い出す。
拠点を手に入れてからより一層、他のプレイヤーとの交流が減り、攻略にも力を入れていないのでメインクエストすら4で止まっている現状。僕の情報源は見守り隊か街に行った時の知り合いの住民からだけ。九月からは引きこもっていたので、見守り隊くらいしか交流がなかったので、公式アナウンスがないイベント情報なんて忘れてたいた。
アリスンとは僕以外のペットの話が中心だし、スレッドは二つ名とか変な物を見てからは極力見ないようになったから知らなかった。
「少し噂の情報集めた方がいいのかな」
イベントに参加するかはそれからにしよう。そう思い、久しぶりに公式サイトを開き目当てのスレッドを探し始める。