二学期突入
九月になり新学期が始まった。
久しぶりに会う友達と会話が弾む中、初めの一週間はまだ夏休みの余韻で浮わついたり、ダレたりする生徒が沢山いた。そんな中、僕はこの月から学校生活がほんの少しだけ変わった。
夏休み中に母親と共に学校へ来て教頭や学年主任、担任教師を交えて面談をした結果、体育などの更衣は空いていた準備室を借りて行えるように手配してもらい、トイレも多目的トイレか教員の女子トイレを使えるようにしてもらえた。トイレは教室から離れて不便なんだけどね。
本来は女子とし通えるようにとしたが、やはり途中から女子として扱うのは難しく段階を経ていく事になった。制服も一学年中は男子のブレザーを着ることになった。学校側も対応マニュアル等はあるが、生徒及び教員のトランスジェンダーの人は入学・就任前にすでに相応の生活をしていた人ばかりで、僕みたいに途中からのケースはこの学校では初めてだったらしい。
また、診断書も一医療機関からのみしかまだ貰えておらず、ホルモン療法もすぐには初められないので、一年生の間は着替えやトイレに健康診断の対応くらいで、様子を見て三学期から体育は女子と行うか決めていくらしい。その頃にはホルモン療法も始まってるかもしれないし。
気の迷いでもなく、僕は女の子として生きていく方がストレスがないので、いずれは性適合手術なども視野にいれている。胸も少しは欲しいし。ウサミミは女の子だけど、僕と同等なので発育のライバルとして勝ちたいしね。
そんなこともあり、ほんの少しだけ学生生活に変化はあったが、基本的に僕の友達や部活仲間は女の子として扱ってくれるし、他の女子も基本は男子として見てはいないので大きな変化はみられない。
リアルはそんな感じでゆっくりと新学期がスタートした。
そしてプリハでは、新学期が始まったことでアリスンとはログイン時間が少しズレてしまった。合わせようとしたらできるが、基本はお互いソロ活動だったので、無理して合わせる必要もなくたまにペットとして呼ばれる時だけ時間を調整する。
短期間だが、ペット生活も満更じゃなかったのでペットとして扱われるのは良い。むしろ大歓迎なんだけど、僕の所有地には僕の家族の犬や鳥、馬や羊等もたくさんいるのでお世話しに戻らないといけない。
暫く人間領にいたので心配だったが、戻ってみると体調の悪い子もおらず、逆に僕がいないことを皆に心配された。とくにこの土地のボスみたいな感じになっていった有翼馬のルークにはさんざん叱られた。僕はオーナーであっても、動物たちのボスじゃないんだよね。だって、一緒に遊んだりしてたら毎回のようにルークに叱られていたらね。向こうも立場上僕が主として見ているけど、まだまだ子どもとして扱うことも多い。いや、僕が不在の時はルークを中心に有翼馬の親子が群れを纏めてくれていたみたいだけど。柵はあるが有翼馬なので文字通り敷地内なら飛んで移動出来るんだよね。
マニアドッグなどは、特性で敷地からも出られるので有翼馬だって移動制限が広めに設定されているみたい。
「それにしても、家畜系モブってもっと思考力低くなかったっけ?」
ルークたち有翼馬も騎乗用ではあるが大まかなカテゴリーでは飼われるというので家畜系のモブに分類される。ペット系や収集系の犬や鳥も大まかなには家畜に分類されている。
そして家畜系は本能的には大人しく、そこまで思考能力もない。一説にはそこまでAIを細かく避けないので、単純プログラムで済ませているとも聞いたが、ルークたち有翼馬は論外な思考力を発揮しボスになっているし、なんとなく言っている事が解るようになってきた。
マニアドッグやコーギーコリーの犬種ま僕も犬なので言っていることがもうほとんど解る。雛からいたコレクタレイヴンの話も解るようになっていた。こちらは鴉なのにインコやオウムのように少しずつ声まねから人語を理解して喋るようにもなってきた。こんな特性は知らなかったので初めは驚いた。
今も「リリ、シカラレタ」と何度も言っていてムッとする。少し離れていたらこんな子に成長していた。
一緒に寝食を共にしている犬たちや鴉も独自の思考力を身に付けてきており、単純プログラムと言うのは噂か野生時のみだと知った。
あとコレクタレイヴンに言葉を教えていたのは、僕だけでなく、不在時にも様子を見てと途中で頼んだ見守り隊の人々だと判明した。彼ら彼女らは何でなのか僕のファンらしく、有用な情報を教えてくれたりもしてくれる。裏もないことを何ヵ月も交流していたら解るし、いまでは完全に所有地へのフリーパスを出している。もちろん、薬草園やダンジョン等は制限を設けている。
無害なんだけど、変な方に突き進んでもいると思う。だって、声まねで「リリニ×××シタイ」とか「リリニ×××サレタイ」とか間接的に聞かされるとね。ウチの子の教育にも悪い!
久しぶりにに家族の動物たちと戯れて、怒られて、遊んで叱られてとまったり時間が過ぎていった。
薬作りはしていたが、見守り隊が代わりに各店舗に代理納品してくれていたので、ほとんど引きこもって過ごしてしまった。
人間領に行っていたので、薬草が育ち過ぎていたり毒草が野生化仕掛かっていたり、果実が腐って落ちて酷かったりと暫く放置していたツケが回って、対応に時間が掛かったのだから仕方がない。
またシープもさらに赤ちゃんが増えており、ダンジョン拡張の趣味でやって来た棟梁と一緒に厩舎を拡張したり、産場を作ったりやることが相変わらず多くて大変だった。
ちなみにダンジョンだが、ダンジョンマスターの僕は一切触っていない。なぜかダンジョンマイスターの棟梁が未だに趣味で拡張したりして棟梁専用の遊び場と化している。もう好きにして。