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海水浴

 アリスンにカミングアウトした翌日、人気のないフィールドで【仔犬化】を解いた本来の仔牛サイズをお披露目し、軽く連携の確認を行った。【人化】は人間領じゃ獣人とバレる要素でもあるので、使用する予定もないので秘匿したまま。

 翌日には海水浴に行くので、準備をする為にプリハ時間で二時間しか時間は取れなかったけど、アリスンたちの戦闘の仕方は理解出来た。

 主であるアリスンは、従魔に指示を出しながら回復と鞭での牽制を担当。そう、鞭だよ鞭。お願いして打たれたときの気持ち良さと、皆の冷めた眼が最高だった。

 ……今は戦闘の担当の話だったね。アリスンはテイマーになるまでは片手剣だったらしいけど、街中のクエスト中に保護したラヴィキャットのミーケが前衛を担当するようになり、テイマーぽい感じのある鞭に切り替えたらしい。人間領にはテイマーになるクエストがいくつかあるらしいね。クエストを通さなくてもなれるみたいだけど。

 そのラヴィキャットのミーケは接近で素早さと柔軟性を兼ねたトリッキーな攻撃を行う。爪や尻尾と僕にも共通する獣系の物理アタッカー。魔術は使用しない。

 次にブラックピジョンのクールさん。彼は飛行型として偵察と奇襲。魔術型であり、人間領のモブに多い【火属性魔術】以外に【風属性魔術】も行使できる魔術アタッカー。

 最後にセイランチョウのバーミル。蝶らしく燐粉での支援が得意で、回復量は少ないが全体回復と状態異常を引き起こす燐粉を操る。漏斗による【吸収】はLFとMSを両方相手から奪うが、接触しないと行使できず、吸収速度も決して早くはないので専らデバッファーとして担当。あ、【吸収】は採血されるような感覚で少し苦手。

 すでにかなり形になっているパーティーがアリスンたちだった。そこに物理メインの魔術も使う遊撃手として僕が加入した。

 プレイヤーだと知ったが、アリスンは犬としてペットとして僕を見ている。それでも、自己判断で動きやすい遊撃手として配置してくれた。これはログイン時間が合わないとき、僕がいなくても大丈夫なようにと苦肉の策でもある。うん、面倒くさいペットでごめんなさい。

 こうして連携を確かめて、次に会うのはほぼ二学期だと確認してアリスンたちと別れて今日に至る。

 夏休みが終わる五日前。二泊三日の海水浴当日となった。


「みんな、おはよう」


 あーやの家まで親に送って貰い、親と一緒にあーやの両親にもご挨拶状してからあーやの部屋に行く。二泊三日はあーやの母親が付き添ってくれるので、僕の親も確りと挨拶していた。

 相変わらず最後にやってきたウサミミが合流すると、あーやの母親が運転する車に乗って隣の市にある知人が中居さんとして働く山間の旅館へと行く。

 海まではやや離れているので、海沿いの旅館よりは空いているが避暑としてやってくるお客さんもいるので、閑古鳥が鳴く寂れた場所でもない趣ある老舗旅館だった。

 そこに露天付きの離れを予約してくれた、あーやの母親共々泊まる。離れは和室二部屋にトイレと内風呂、露天風呂が付いており、隣の離れとは竹の仕切りで見えないようにされていた。うん、本館で泊まるよりも高いけど事前予約と中居さんを通して幾らかの割引きに親もお金を出してくれたのでなんとか貯金を少し引き出して泊まれた。リアルでも相変わらず金欠病だね。


「広いし、綺麗」


 竹林に囲まれた隠れ家的な離れは、その竹林が青く風が奏でる涼やかな音を届けてくれる。避暑にはもってこいだね。海もいいけど、こういうのもいいかも。

 今日は移動もあったので、旅館の近場でお昼を食べた為に今から海水浴に行くには中途半端になる。

 なので、僕らは旅館の売店などを見て回ってから近隣の散策に出る。コンビニもあるけど、避暑地でもあるので割りと静かで自然が多い。見付けた小川で裸足になって水遊びをしてから帰った。転んでずぶ濡れで下着が透けたけど、少し経てば乾いてきたので助かった。透けた状態で皆に見られるのも、それはそれで素敵だけどやっぱり恥ずかしいしね。


「ゆーり、どう?」

「んあ、て、みんなっ!」


 それは夜に起きた。一人露天風呂に入っていたら皆が入ってきた。水着を着てだけど、もちろん僕は裸。

 一応、僕の身体はまだ男なので別れて入ることにしたのに。ちなみに、あーやの両親は僕の事情も知っており女の子として接してくれるけど、一応別れて入った方がいいかなって僕らが話していたのに。


「ユリちゃん一人だと、寂しくて泣いてるんじゃないかと思ってね」

「仲間外れは可哀想ですし、水着も着ましたから」

「ユーリ、裸だけど女の子っぽいね。ぺったんこだけど」


 桜、あーや、ウサミミと続けてそう言いながら湯船に入ってくる。ぺったんこって、ウサミミもそう変わらないじゃん。


「ふふ、付いてるか分からないね」

「ネットで見たけど、普通は三十センチはあるんだよね」


 一部を隠しながら身体を洗うのに立ち上がったらそんな事を言われた。下着はお互いに見たことはあるけど、裸はないからそりゃ隠します。それより、どこの海外サイト見たの。それよりも、皆はそういうの見たことあるんだね。


「ユリちゃん、それくらいなら大丈夫そうだね」

「な、なにが」


 いらないけど、小さいって言われるのも傷付くんだね。ぺったんこよりはマシだけど。


「明日の朝、六時前なら大浴場も人少ないらしいから行こう?」


 どうやら、旅館のパンフレットを見て大浴場も入ってみたいと言ったのを聞いていたみたい。あーやはそれを知人の中居さんに人の少ない時間を聞いてくれたらしい。

 まあ、男湯にいけば良いんだろうけど、精神的に入りにくいと感じるようになったしね。

 そんな話をしながら露天風呂を満喫して、五時過ぎに起きてすぐみんなと大浴場の女湯へ。中居さんから上の人に話が行って僕が入っても問題ないことになった。僕みたいな性的小数者も今まで宿泊しているから、経験済みだからそこそこスムーズに話が纏まったので感謝だね。ただ、今回は水着着用なんて出来ないから皆裸。まあ、女性の裸はプリハで見慣れているし、同性だし反応はしない。恋愛対象も女の子だけど、それは別だと無意識に思ってるんだね、きっと。とくに何もなく広い浴場と景色を堪能できた。緑とその向こうの海が朝日に輝いていて綺麗で入れて良かった。

 朝食を食べて、いざ海へ! まあ、車に乗せて貰って近くの駐車場まで移動があるので、すぐに海に突撃は出来ないんだけどね。


「うーみー!」


 ところで、なんで海を見るとテンションが上がって叫びたくなるんだろうね。

 場所取りはあーやの母親が気を利かせてくれて、僕たちは更衣室に向かい着替える。

 僕は白地にピンクのドット柄のフレアビキニを着ている。下もフリルとリボンが付いた可愛いデザイン。

 桜は上が白で下がピンクのタンキニ、あーやは黄色のホルタービキニ、ウサミミは白地に水色ストライプのワンピースと言う出で立ち。みんな可愛いね。

 普通に泳いで普通にバレーとかで遊びました。変なトラブルなんてなかったから、詳細は想像にお任せ。

 お昼は海の家が人でごった返していたので、道路を挟んだ食堂で食事を摂った。ここは水着のまま入ってもいい食堂で、近所のコンビニなども水着で買い物している海水浴客がいたので高い海の家よりこちら側に需用があるらしく、水着のまま街を散策出来たのも楽しかった。

 夜は普通に水着なしで露天風呂へ。皆も一回入ったら気にしないみたいだった。そもそも僕を女の子として見ているので、元から気にしてないらしい。

 そして、体際を気にして水着で入った昨日だけど、結局は僕の事情も知っているあーやの母親はこの二日を見て、完全に女の子として扱うようになった。男として警戒されなくなって良かった。

 最終日は旅館を引き上げて、最後に海で泳いでから午後には帰路についた。漫画みたいにナンパなんてなかったね。

 こうしてあっと言う間の楽しい海水浴が終わり、とうとう夏休みも終了した。

 あ、『四足歩行』は襲歩まで形にはなりました。あとはもっとフォームを整えて速度を上げるのを頑張る。この夏休みでこの訓練も公園を訪れた人には馴染みの光景となりました。

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