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アリスンにカミングアウト

 翌日もプリハにログインすると、代わらずスリープモードの従魔仲間がいた。


「どうしよ。タイミング合わないと出れないのかな」


 まだ飼い主のアリスンはログインしていないらしい。

 プレイにも影響するし、直に二学期になる。その前に友達と泊まりがけで海に行くので、僕がログインしていないとアリスンが不安になると思う。


「やっぱり言わないとダメだよね」


 獣人が人間領にいるのは問題になると思って言わないつもりだったけど、さっそく一人に事情を話さないといけない状態になった。ペットになるなんて思わないよね。


「うーん」


 なんて言おう。そもそも話しかけたら驚かれるよねと、考えていたら三十分は経ったみたいでアリスンがログインしてきた。


「おまたせ、みんな」


 ペットホテル区画の僕らのケージ前に来て扉を空けてくれる。そして順番にモフモフされる。気持ちよくて漏らしそうな程の技術はなかった。頑張って。


「今日はどうしようか」


 僕の首輪にリードを取り付けながら僕らに訊ねてくる。猫のミーケや鳥のルークさんにはリードはない。まして蝶にも。犬だから戦闘以外はリード着けるらしいよ。たしかに、散歩でリード着ける犬はよく見掛けるけど、猫はテレビで一回しかリード着けて散歩しているのを見ていないので、先入観的にも僕にのみリード着けるのは理解出来る。

 とりあえずホテル区画から出て、僕たちに餌を食べさせて貰うために、裏手に併設された広場へとやって来る。


「みんな、ご飯だよー。食べたら散歩して……またダンジョン行く?」


 今日の予定を考えてながら僕らのそれぞれの餌皿に各自の餌を入れてくれる。このドッグフードうまい!


「LiLi、まだ待ても言ってないよ」


 冷えた声が頭上から聞こえたと思ったら、首輪がバチッと静電気の強いものを発した。


「ガッ」


 口に入れたドッグフードはそのまま皿に落ちる。

 なに、今のは。一瞬痛くて、丁度良い気持ち良さが。


「いいよって言うまでは待てだよ」


 犬にするような躾を僕にもするみたい。ここは素直に聞いた方がいいよね。気まずくなると、話も出来ないし。

 そして、よしの合図を貰うまでは確りと待機してから、美味しいドッグフードを綺麗に食べた。これがリアルでも売ってるなんて素敵だね。


「んー、やっぱりダンジョンは数日行ったから、今日は買い物だね」


 カミングアウトするなら、このタイミングがいいかな。

 アリスンのログイン時間は僕より短いし、行動を始めたらなかなかタイミングは掴めないだろうし。

 あー、ドキドキする。もし彼女が周りに獣人だと言ったらどうなるか。そもそもペットになってから言ったら、何かを企んでると思うかもしれない。ペットは不可抗力なんだけどね。


「くぅーん」


 先ずは僕に意識を向けて貰おう。


「どうしたの? おかわりはないよ」


 そんなに食いしん坊に見えるのかな。いや、考えている時に餌皿を見ていたし、その後に前足でアリスンの足を掻いて鳴けばそう思うよね。


「そんな悲しそうな顔しないで。いつもの馬鹿顔になって」


 いやいやいや、馬鹿顔って。人間からみたらそう見えるの? 店長もアホ顔とか言ってたし、さすがに凹むよ。

 そんなことより!


「……あ、あの。僕、一応ヒトにもなれるよ」


 って、違う。これじゃ、プレイヤーだって思われないよ。


「すごい! 喋れるんだ!! やっぱりネームドのレアキャラだったの!?」


 凄く驚いて、喜んでもくれているみたいだけども。うん、ごめん。まだモブだと思うよね。


「そ、その。プレイヤー……」

「うん、私プレイヤーだよ。……あれ、ここの人たちプレイヤーって言ったっけ?」


 まだアリスンは理解していないみたい。

 そりゃ、ペットがいきなりプレイヤーだって言うほうが無理があるよね。


「えっと、僕がプレイヤーなんだよ」


 近くには僕ら以外にはいないけど、この広場はペットショップに併設された場所だし、ショップ側からこちらを見る事もできるので【人化】までしたら騒ぎになりそうなので、これは出来ない。


「えっと、LiLiがプレイヤー?」


 信じられないよね。僕だって、いきなり言われたら嘘だと思う。どう証明したらいいのか。そもそも、ログイン時間とかの関係でカミングアウトをしたのだから、どこまで言えば良いんだろ。


「うん。えーと、プレイヤーで今は犬になって……そもそも獣人で」


 カミングアウトしようと思ったけど、内容まで考えてなかった。自分でも意味不明になってきたけど、なんとか全部言えた所でアリスンは賢いのか、理解してくれた。


「聞くけど、LiLiは獣人のプレイヤーなんだよね。ログイン時間とか合わない場合もあるから話した、と。あとは周りにバレてトラブルにならないように、犬として生活していたら私がテイムしたって事でいい?」

「わん!」


 あ、つい。でもアリスンは僕より賢いかも。一回で理解しちゃったよ。犬として生活はそれほどしていないつもりだけど。


「ふーん。今は犬なんだよね」

「え、うん。そうかな」


 犬だけど、プレイヤーでもある。そもそも犬妖精は犬なのかなと、思考が迷走してきた。


「なら、私のペットで変わりないね。ログイン時間とかは解ったし、私がログアウトの時は設定で自由になるようにするから」

「ホントっ!」


 あっさりとログインに関する問題は解決したみたい。


「それにしても、犬だよね。待ても出来ないダメ犬。躾はちゃんとしてあげるからね」


 あれ、やっぱり犬として見られてる? 

 躾って言うときの冷笑にゾクッとしたけど、アリスンてかなりSっ気あるのかな。テイムもそうだったし。

 それからも色々話してから買い物に繰り出して、アリスンのログアウトを見送った。他の皆はペットホテルに預けられたけど、僕は自由になった。一匹ずつの設定が面倒と足てで踏み踏みされて弄られたけど。

 あとは、アリスンがログインしたらなるべく合流するように言われて別れた。

 これで懸念も一つ解消したし、最後の夏休みイベントのみ!

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