首輪って安心するね
アリスンのペットとなってしまい、ペット達との上下関係もスムーズに決定した。一番下っ端です。
「えっと、LiLiって名前なんだ。……ネームド。それに妖精なの? 犬なの?」
妖精犬だよ。
飼い主になったから、僕のステータスも一部閲覧できるみたい。内容は、名前と種族にレベル。あとはステータス数値だけで、技能や階位は見られないみたい。
こっそりヘルプを見てみると、親密度によって互いの閲覧箇所が増減するらしい。ただ、僕からはアリスンのステータス数値までは見られなかった。ヘルプには載っていなかったけど、主従の関係でアリスンが上の存在だからかな。
「ま、犬みたいだし犬でいっか。んじゃ、時間もないし従魔登録しないと」
どうやらアリスンはリアル小学生で、ログイン時間が残り一時間くらいと話していたのは本当らしい。プレイヤーと教えてないから、プライベートなことを少し聞いたけど不可抗力だよね。会話の間に愚痴として言われるから、耳塞ぐ事もできないし。
「LiLi、着いてきて。走って行くから遅れないでね」
そう言うなり、アリスン始め皆が移動を開始した。慌てて僕も追い掛ける事十五分くらい。
「わおーーん」
え、ここが人間領の首都!? 確りと石の城壁で都市を囲み、所々の尖塔での見張りや城壁上を肖歩している兵士が見られた。
獣人領は落とし穴や逆茂木と昔らしい防衛だったのに、ここは完全に攻められるのを防ぐようになっている。もし、これで戦争になったら獣人領ヤバくないかな。
「ほら、行くよ」
アリスンに促され、門番に僕の従魔登録をこれからすることを伝えてから都市へと入った。あの門番、アリスンにデレてたね。もし手を出すなら噛み付かないといけないかもね。
首都は凄かった。石畳の広い道に、三階建ての多くの家屋。メインストリートだからか、一階は店舗で二階からが自宅な様子。中には、五階建ての巨大な建物全てがお店というのもある。
なに、この獣人領との格差。まあ、獣人は自然的な環境が好きだから石造りは少ないし、木造でこんな巨大建設を幾つも造ったら木材は足らないし、耐久度も低そうだもんね。そもそもプレイヤーの数も差がありすぎるし。
「わふー」
「LiLiも驚いてるんだね。私も始めは吃驚したからねー」
彼女の足にまとわり着くようにミーケが歩き、その後ろを歩いているけど、よくミーケを踏んだり蹴らないな。歩くにも支障無さそうだしと、地域格差から眼を反らし着いていくと然程門から離れていない場所に通りに面した部分一面が硝子張りの洒落たお店があった。どうやら目的地らしい。
「このペットショップで従魔登録するよ。テイマー互助会本部でもあるんだよ。ペット用品販売からトリミングやシャンプーとか。ペットホテルやペット用広場も完備。まあ、テイマー同士の交流の場所だね」
どうやら、冒険者─獣人領のヤオロズ─とは別にプレイヤーが組織した各種職業的システムらしい。それぞれの専門的な雑談や会議、コンテストやオークションなど行っているらしく、今では住民にも広まっている。ここはペットショップに頼み込んで雇って貰ったプレイヤーがその後テイマー互助会を立ち上げたらしい。
今では、ペット可の宿屋もあるけどログアウト時に設定していればペットホテルに従魔が転送されるらしい。僕もなのかな?
「入るよー」
僕たちを連れだって店内へ。はえ!? 猫耳メイドがいる! え、店員のコスチュームなんだ。他にも犬耳執事や兎耳セーラー服とか、アニマルでコスプレなのがこの店の売りの一つなんだ。みんな動物好きらしいけど、変な店に思うよ!
「店ちょー、このワンコの従魔登録お願い」
現実逃避している間にアリスンに抱えられ、カウンター脇の台に乗せられた。
店ちょー、いや店長と言われた三十くらいの女性が僕を見るや眼をキラキラさせながら、身体をあちこち弄られた。ここでも股間を見て雌と言われた。いや、いいんだけどね。
「アリスちゃん、この子初めて見る種類だね」
「うん、ちょっと迷子を拾ったらなつかれて」
いやいやいや、迷子じゃないよ強迫だったよね。それにアリス? アリスンの愛称かな。
「ああー、このアホ顔癒されるわ」
「あっ、やっぱり? このバカっぽい顔和むよね!」
なに僕の顔見てアホとかバカって! 可愛いとか凛々しいとか言ってよ!!
「従魔登録だったね。名前はLiLiで妖精犬? 雌ね。登録したわ」
「ありがとう。登録証よろしく、私は首輪選んでくるね」
プレイヤーが立ち上げたっていうけど、登録って何に利用出来るんだろ。てか、首輪ってあの首輪だよね。
「LiLiはどんな首輪がいいかな」
店舗入り口側はペット用品を陳列していて、そこの首輪コーナーにアリスンが向かうので、心配になり後を着いていく。ちなみに、店内ならペットは放し飼いで大丈夫らしい。
「来たの? ね、赤と黒どっちがいい?」
他にも色は有るが、アリスンはこの二種で迷っているみたい。なので、赤に顔を向けて「わんっ」と鳴く。だって、赤のほうが可愛いしね。
「赤ね。じゃー、始めは躾もいるからこのショックカラーでいいかな」
一つの首輪を手にして、それの対になるリードや餌皿にドッグフードをカゴにいれていく。
どうやら一部商品は実際に販売しているものを、こちらの世界で提供しているみたい。CMで見たことあるドッグフードだった。
「これお願い」
「はい。あ、登録証も完成したから、これ登録証ね。鑑札は首輪に付けておく?」
「うん、お願い」
住民の店長だけど、どうやらアリスンとは仲が良いみたいだね。仕事をしながらも、楽しそうに雑談も交わしている。
「はい、代金も大丈夫ね」
買い物は終わり、早速インベントリに送られていた首輪をアリスンが取りだし、僕の首に着けてくれた。
あれ、なんか落ち着くっていうか安心する。ウサミミもチョーカーを着けてたのは安心するからなのかな。心が暖かくなるのを感じでいるとアリスンも嬉しそうにする。
「うん、似合ってる。ころからよろしくねLiLi」
この後、強制ログアウトまでそう時間がなかったので、慌てて僕らをペットホテルに預けられた。
他の仲間はスリープモードのように眠りに就いたけど、プレイヤーでもある僕はそんなこともなく。
仲間単位で入れられる巨大なケージの中を観察したり、ミーケやクールさん─さんまでが名前だった─の毛繕いをしてからログアウトをした。