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人間との邂逅

「はっ、ふう」


 川を渡り、周囲を探索した後には人間領の首都に向けて駆け出した。

 このプリハにはマップ機能や技能はないので、前もってネットで調べた。どの種族領も首都は領地の中心に存在しているので、大体の当たりをつけて進んだ。なのに……。


「いま、どこなんだろう」


 駆け出したは良いが、途中で大量の土埃が接近してきたので慌てて逃げた。なのに、謎の土埃の発生原因は僕を追うように進路を変えて猛然と向かってきたので、がむしゃらに逃げたら案の定現在地が把握出来なくなった。発生原因がなんだったのかは逃げるのに必死で確認出来なかったが、逃げきることは出来た。

 最近、こんなことばっかだよ。


「どっち行こう」


 暫く休憩してから歩き出そうと立ち上がる。

 人化はステータスが生産向きなので、フィールドではあまりその姿にはならない。

 本来の犬妖精姿は子牛サイズなので、もし人間に見つかったらモブと思われて襲われるかもしれない。それ故に人間領に来てからはずっと仔犬サイズで過ごしている。まあ、そのせいで謎の土埃に最接近を赦しちゃったんだけど、なんとか撒いたので結果良かった。逃げ出した時のリーチが足らなかったらと思うとゾッとしちゃうけどね。


「とりあえず迷っても時間だけ過ぎちゃうし」


 動物の勘を働かせて、適当に歩き出す。川に逆戻りだけはしないでと思いながら。

 人間領のモブを把握している訳ではないので、慎重にかつ速やかに移動するも、基本アクティブ仕様のモブには襲撃される。

 まずは首都でゲート登録を試してみたいので戦闘はせずに逃げの一手。獣人領のモブは風魔術を使う種類もいたが、人間領は種族と同じく火魔術を放ってくるのを確認したので、逃げていても情報は少なからずあった。獣人領ほど素早いモブがいないのも発見したので、仔犬サイズでも逃げられるみたいだ。


「って、油断した途端にこれだよー!!」


 接近されても逃げられると解り油断していた。

 再び襲撃を受けている。今度は巨大な裸の凶鳥。羽がないのによく翔べるね!


「今日はなんなの!」


 よく追われる日だと嘆きながらも、必死で四肢で地面を力強く蹴る。あの巨大な鳥は一羽だけみたいなので、巡回型のレアモブだと思われる。勝てる気がしない。

 草原にいるが、凹凸があり岩や樹木、茂みがあるので隠れやすくはあるものの、鳥は上空で位置を確認しているのか急降下してその鋭い爪を向けてくるので、また走る。

 走っていると街道を見つけたが遮る物のない街道よりも、下草が長く隠れやすい脇を選んでひた走る。仔犬サイズなら完全に隠れる長さの草もあるが、一ヶ所に留まることも出来ない。


「はっはで、やば……はひっ、すた、みな」


 スタミナが尽きかけて、精神的にも追われ続けてきつい。地上の動物が空を翔ぶ鳥との戦闘は厳しい。なにより、《クロー》を始めとした《獣撃》はどれも超接近系。魔術も急降下の時にタイミングを合わさないと届かない上空にいるので、迎撃はかなり困難。まあ、スタミナが尽きればお仕舞いなんだけど。


「もう、だめだ」


 スタミナが切れて倒れこむ。最後の力を振り絞って樹木の影に入る事は出来たけど、そこで意識が途切れた。

 最後に聞こえたのは鳥の声ではなく、「肉鳥が現れたぞ!」という人間の声だった。

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