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お盆─瑞樹・綾音宅─

 今日は朝からウサミミの家に向かう為に早めに起きて、徒歩と電車で移動をする予定だった。今回は二日分の荷物なのでそこそこ多いが、いざ家を出ようとした所でお母さんが車で送ってくれると言ってくれて、ウサミミの最寄り駅までスムーズに本来の消費時間を抑えられた。お盆でも早朝だったので渋滞もなかったのが大きい。

 そこからは徒歩十分でウサミミの実家であるマンションに到着。今日は夏祭りに行く予定なので、勉強は午前にだけ行う。ただし、その前に近くの納骨堂まで向かいお参りをしてきた。


「んじゃ、さっそく勉強しよっか」


 勉強の主導は頭の良い桜とあーやが握っている。ウサミミは遊びに、僕は流されるので勉強の時間や一緒にやる種類を二人に決めて貰っている。お陰で殆どの宿題は終わっている。

 途中ダラケて休憩を挟む事はあっても予定通りに、ほぼ全ての宿題が終った。残りの課題は個人でテーマを決める物のみ。これも夏休み初期から進めていたので終わりが近い。ウサミミはテーマ課題がまだ決まってないけど、そこは皆知らないフリ。

 昼食を摂り、少し休憩を挟んだら祭りに行く為に持参した浴衣をワイワイ言いながら着替えていく。


「皆、似合ってるね」

「ユリちゃんも可愛いよ」


 お盆前に皆で選んだ浴衣を着て感想を言い合う。だけど、僕のだけは種類が違う。

 桜は濃紺に桜が舞っており、あーやの着物は水色に金魚のデザイン。ウサミミは黄色時に向日葵が描かれている。

 そして僕のは、ピンク生地に子どもを中心に長年愛されている白い仔猫のキャラクターが様々なデザインで描かれている。さらに袖や裾にフリルが沢山付いており、膝上のミニスカ浴衣となっている。僕が選んで買った訳じゃない。


「私も作って貰いたいな」


 ウサミミはお気に召したようだ。

 言われたようにこれは皆で選んだ浴衣ではない。たまたま昨日家に遊びに着た従姉妹が製作した浴衣だったりする。従姉妹も今日の花火大会と祭りに僕と行こうと思い、自作した浴衣を持ってきた。それを皆が見て、面白半分に今日着ることになった。従姉妹は着て貰えるならと喜んでおり、友達と行くならと同行は辞退した。ただ、桜たち皆とアドレス交換をしており、僕の写メを要望していた。

 ちなみに、この花火大会と夏祭りは地元とは離れているので部活での手伝いはない。お盆明けの週末に催される。老人施設の納涼祭の手伝いはとっくに終わっている。


「これ、やっぱり短すぎないかな」


 ちょっと屈んだら下着が見えそうだよ。

 文句はあるけど、可愛いと思うのも事実。着るかどうかは別だけど。

 愚痴々々行っていたら、早くと外に連行された。あーやに何故か手を引かれながら移動を始める。少し距離があるので早めに行く予定で行動しているけど、すでに会場に向かう車もいるのか普段よりも車が多いらしい。お盆だから尚更か。


「迷子にならないようにね」


 あーやが手を繋いでいるのは、僕が迷子にならないようにらしい。身長がこの四人で一番低いので、はぐれたらまず捜せないとは思うけど。ウサミミは桜と手を繋いでいる。向こうは、ウサミミの暴走を抑える為らしい。信用されてないんだね。


「夕方近いけど、もう結構来てるよ」


 ウサミミが指差す先には臨時駐車場に案内する誘導員と列をなす車。さらに向こう側に屋体の背面が見え、続々と人が向かっている。花火大会は七時すぎから始まるけども、屋体は早い場所ではもう営業しているのもちらほらある。現時刻四時前。三時間以上あるけど、やっぱり考えるのは同じみたいだね。


「早く向かいましょうか」


 手を引かれながらの移動は、周りから友達に見えるのか姉妹に見えるのか。

 先ずは冷やかしに適当にぶらついていると、徐々に準備も終わり営業開始をする屋体も増えてきた。

 すでに僕とウサミミの頭には猫と狐のお面があり、それぞれ綿菓子やイチゴ飴を食べながら熱気が膨れ上がる屋体を梯子していく。

 猛暑の昨今、今日も暑く汗がうっすらとかいているが、河川敷だからか少しはマシなようにも思う。虫除けスプレーは必需品だけど。


「ごめん、すこしアレしてくるわ」


 桜が向かうのは射的。うん、なんか銃を持つのが様になる。

 店員がおまけで一発多い六発の内四発が当り、倒したのがお菓子二つに小さな人形一体。


「大きいのは落とせないからね」


 桜は射的で満足したのか、景品は僕らにくれた。余った握っているが僕に。なんの人形か不明だけど、女の子だとは解る変な民族衣装の人形。呪われてないよね。

 そこからさらに、たこ焼きを買ったり似顔絵屋の様子を眺めたり。現在の僕の装備は狐のお面に変な人形、あとは子どもに配っていた風船を何故か貰った。


「あっ、ヨーヨー釣りだ!」


 ウサミミが指差す先には祭りの定番の一つヨーヨー釣り。何れだけ時代が進んでも無くならない定番屋体があった。


「僕もしようかな」


 四人で移動すると、そこの店番は見知った人物だった。


「樹?」

「ん? お、ユーリか。あとは……一人は桜だっけ」


 同じ中学で友達の樹はテニス部の僕と満光を通して、何度か桜とも離していたので一応は顔見知り。あーやとウサミミには同中の友達として紹介した。


「ヨーヨーしてくのか?」

「うん、二人分お願い」

「あいよ。所でユーリ、似合ってるな」

「あ、ありがと」


 樹はバイトとして知人に頼み働いているらしい。うん、後ろで彼氏? とか話しているけど無視。友達って紹介したもん。


「どれにしよっかなー」


 ウサミミの邪魔に、いや邪魔されないように少し距離を離して僕もしゃがみヨーヨーを選ぶ。


「ユーリ、おまっ」

「ん?」

「……いや、なんでも」


 なに慌てているのか知らないけど、とりあえず赤いヨーヨーに狙いを定める。


「んっ、よし!」


 続いて黄色を取り、次はと持ち上げる時に二つ引っ掛かったせいか重さに耐えられずに紐が切れて閉まった。


「うー、惜しかったのに」

「残念だったな」


 ビニールプール越しに頭を撫でられ、また後ろが騒がしい。


「それで、隣の友達は……」


 見れば十個は釣り上げられて転がっている。さらに個数を増やして合計十四個。樹と話して五個だけ貰ったようだ。

 桜とあーやに一個ずつ選んで、ウサミミは三個同時にバシバシとヨーヨーしている。割れるよ。


「それで、ユーリの彼氏なの?」

「だから違うよ」

「ユリちゃんのパンツ、何回もチラチラ見てたけど?」

「へ?」


 話を聞いてみたら、このミニスカ浴衣でしゃがめば当然下着が見える。あー、だから慌てたりしてたんだ。って、僕の下着なんて見てもね。修学旅行とかで一緒にお風呂入ったりもしていたのに。


「ユリちゃんは解ってないね」


 なにがだろう。確かに恥ずかしいけど、樹だしな。あの真性ロリコン相手に。

 その後も冷やかしや買い食いをしていたら、花火大会のアナウンスが入った。


「移動しよっか」


 あーやに促されて皆で移動。続々と屋体から離れる人たち。僕たちは場所取りとか考えてないし、離ればなれにならないように手を確り繋いで移動していく。


「あ、あれ。桜」


 移動した先には、すでに場所取りでゴザやビニールシートを敷いている人たち。川の反対から上がる花火を今か今かと待ちながらそれぞれ話している。その中に見知ったような人物再び。


「あれって、満光くん?」


 男子テニス部長の満光と女子テニス部長の桜は何かと会話をしていた。だから、やっぱりあれは満光みたい。


「隣のは彼女かしらね」


 そうなのだ、満光が楽しそうに会話している女性。え、なに。夏休みもほとんど部活って言っていたのに。

 いや、それよりも。あの女性は僕らと同じくらいの年齢だ。あの、年上好きな満光があんなに楽しそうに話している姿が衝撃的だった。だって、満光には姉弟はいないし、なによりかき氷を食べさせたあったりリア充しているのが、彼女が満光と親密だと証明している。同年の女性は守備範囲外、社会人の包容力があって、でも少し強気な女性が理想と言っていた満光が。

 動揺して、満光の性癖を桜に話してしまった。


「なら、あれは満光くんじゃないのかしら。でも、見た目はユリちゃんみたいに幼いだけかもしれないし」


 そうういえば、年上とか強気とかは聞いていたけど、見た目の理想は聞いたことなかった。樹みたいにロリ巨乳や合法ロリはロリに在らずって名言も残していない。いや、僕の友達って二人とも……何も言わないで上げよう。

 そもそも、テニスの県内強豪校に進学した満光が僕らと遊ぶ時間を減らして毎日のように部活していたんじゃ。お盆に大会もあったような。あれは、お盆明けすぐだっけ。それでも、今は練習に集中する期間じゃ?


「ユリちゃんユリちゃん」

「んう?」


 つい、斜め前方に見える満光たちが気になって花火どこじゃなかった。だって、途中でキスしたりするんだよ! こんな人がいっぱいいるなかで。


「ちゅーしてたよ」

「ロマンチックですね」


 どうやら、ウサミミやあーやたちも花火の最中にチラチラと見ていたらしい。僕らの知り合いと聞いて観察していたみたい。


「あ、撤収するみたいよ」


 結局、桜も気になっていたみたい。皆、花火どころじゃなかった。


「ジャージだ」


 よくよく二人を見ると、二人はジャージだった。首にはタオル。花火大会にくる格好としてもどうかと思う姿だった。


「同じ部活の人だったのかな」


 僕らに気付くことなく方付けてから離れていく二人。終始楽しそうな二人だった。


「部活で知り合って恋人になったんじゃないかしら」


 中学の女子テニス部にはいなかった人だったみたいなので、高校で知り合ったんじゃないかと、桜。

 年上好きじゃなくなったんだね。なんか複雑だけど。


「あれ、満光くんは寮って言ってなかった?」

「あ、そう言えば」


 寮暮らしで、この花火大会会場とは離れている。さらに、今は部活の大会もある。桜は高校でもテニスをやっているので日付も知っていた。僕らの学校は緩いから大会は任意らしいとも話してくれた。その忙しく大事な時期に満光がここにいたなんて、何かあったのかな。でも、彼女と一緒だったし大変な事情ではない? それともやっぱり満光じゃなかった?

 悶々としながらウサミミのマンションに帰ってきた。いくら友達でも詮索のし過ぎはダメだよね。メールで聞く程でもなさそうだし。それよりも、皆で楽しく喋ってよう。

 僕には僕の繋がりがあるんだから。

 ウサミミの自室は狭いことで、リビングのソファーなどを端に避けて、固まって寝た。今日はたぶん蹴られなかった。ただ、腕や足をウサミミにかじられた。夢でも屋体巡りしているのだろうと、暢気に考えられない。だって、足の歯形はうっすらと血が滲む程に強く噛まれたんだもん。だけど、ウサミミの防護壁として寝るのも今日でお仕舞い! 

 

「あーやの家にレッツゴー!」


 僕を食べて満腹になったのか、朝から元気なウサミミに促されてあーやの家に。

 また電車で移動して、納骨堂でお参りして、先にプリン作りをしてから冷やしている間に勉強。お昼を挟み、最後は喋りながらダラダラと勉強しオヤツのプリンを食べて解散。

 花火大会は花火どころじゃなかったけど、宿題もほとんど終わり、楽しいお盆だった。

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