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お盆─桜・優理宅─

 お盆初日。今日から順番に友達の家に泊まり宿題を行っていく。初日は桜の家。

 ノースリーブのシャツにショートパンツの楽な状態で歩いていく。どちらも学校から近い場所にあるので、自宅から歩いても然程遠くはない。自転車ならなお速く着くけど朝の涼しい時間なので歩いていく。まあ、電車やバスを利用するウサミミやあーやが明日僕の家に来るときは歩きなので自転車で行っても帰りは押すのが面倒なのもある。

 今日は一泊だけなので然程荷物もないしね。バッグには宿題とお菓子、パジャマと下着などの着替えくらい。圧縮袋に容れているので嵩張る事もない。明後日からの方が荷物が多いけどね。

 桜の家に着いたら、何時ものように先ずはゴールデンレトリーバーのジュピターとお尻の匂いを嗅ぎ合ってご挨拶。

 挨拶が終わればインターホンを押して待つ。


「いらっしゃい、ユリちゃん。あーやはもう来てるよ」


 桜に自室に案内される間に、あーやと雑談していた事を教えて貰う。宿題以外で何して遊ぶか話していたらしい。


「あ、おはよユーリ」

「おはよう、あーや」


 一時的に彩姉ちゃん呼びをしていたけど、流石にそうそう呼ばない。あーやが妹扱いしてきたら、自然とお姉ちゃん呼びをするように調き……躾されて自然に切り替えれる様にはなったけどね。クラスで同級生にお姉ちゃん呼びをしていて変に見られたから、状況に応じて呼称を変えれるようになった。


「あとはウサミミね。それまで喋ってようか」


 ウサミミが来るまで話していたのだが、十時になっても来る所か連絡もない。ちなみに、集合は九時。


「電話してみるわ」


 暫く桜がコールを待つと慌てて出た様で、会話内容から今起きたみたい。あからさまに溜息する桜が少し話して電話を切った。


「また、寝坊みたいね」


 そうなのだ。また、なのだ。ちょくちょく寝坊しているんだよね。学校は遅刻しないのは親が叩き起こしているらしいけど、休日は目覚ましを掛けて起きていると話していた。ただ、無意識に消して二度寝しているらしく、こうして何回か寝坊している。


「先に少ししてようか。寝坊した人は自己責任で」


 桜が言い放つが、それも仕方がないか。早めに宿題をして遊ぶ予定なのだし。

 基本、午前に移動と宿題。昼食を摂ってから遊んで夕方にまた少し宿題。夕食やお風呂を終わったら、後は遊び談話してから就寝。宿題の進み具合で夜も少し勉強だけど、皆すでに少しずつは消化しているみたい。僕も少しは進めてるよ。ゲームばっかじゃない。朝夕に四足歩行練習後にシャワーしてから少しずつしています。お盆に皆すべて終わらせる予定だけど、半分は生き抜きという遊びをするのは決定事項。だから、貴重な時間を寝坊したら、放置。がんばれウサミミ。僕も手伝わない。


「時間考えるとウサミミはお昼食べる前には来そうだけど、それまでに朝の予定時間にはなるでしょ」

「そうですね。ウサミミは一人で頑張って貰いましょう」


 なんだか二人の笑みが怖い。お昼からは宿題させている横で遊ぶ計画を立ててるよ。僕に向けられなくて良かった。


「どうしたの、ユリちゃん?」

「どうしたした?」

「えっ! な、なんでもないよ」


 二人が怖いってのに気付かれたかな。うー、その笑みは止めて。


「ユーリで遊ぶのはまた後にして、宿題しようか」

「そうね。ユリちゃんも弄ばれて悦ぶだけだしね」

「なにそれ!」


 いや、何を今更みたいな顔で見ないでよ。そして、無言で鞄から宿題出してやろうとしないでよ。


「早く終わらせないと、花火大会も一人残って宿題だからね」

「それはヤだ」


 なんだかんだでからかわれながら、宿題を一段落した所でウサミミがようやく到着した。


「ごめーん。なんでか目覚まし止まってて」

「また、でしょ」


 すでに何回かやらかした事があるウサミミの言い訳を皆して無視し、近場にある桜家のお墓参り。お盆だから参らなきゃね。

 お墓参りから戻り昼食を摂って、お昼からは遊びと言うよりも女子力向上のクッキー作りとなった。バタークッキー、チョコチップクッキー、ココアクッキー、紅茶クッキー、メレンゲクッキー。


「ん、おいしい」

「この歪なのはユリちゃん? ウサミミ?」

「あ、ははは」


 メレンゲ担当のウサミミが腕をプルプルさせながら笑っている。まあ、疲れて手に力が入らなかったみたいだから仕方がないよね。


「ユーリの担当したココアクッキー、ココアがダマになってるよ」

「うぐっ」


 プリハよりは料理の腕はあると思っていたけども、女子力の高い桜とあーやには敵わない。ウサミミは……論外? いや、僕と同じくらいかな。

 作ったクッキーでオヤツを食べたら再び勉強。こっちがメインだからね。プリハや四足歩行の練習に時間を掛けているから、僕もこのお盆に終らせたい。

 

「お風呂は順番に入って。私は最後でいいから」


 夕食後にお風呂タイム。あーやの後に入らせて貰ったけど、僕の家より広い。あ、このシャンプー良い香り。銘柄覚えておこう。


「ユリちゃん似合うね」


 お風呂から上がったら持ってきたパジャマに着替えたけど、これは事前に皆で買いに行ったもの。

 着ぐるみパジャマで、僕のは犬。あーやがパンダでウサミミが兎、桜が猫のアニマル大集合。皆も似合っている。

 それから雑談中心にトランプで遊んだら、遊びに関してはウサミミが圧勝。


「それじゃ、明日はユリちゃんの家に移動だから寝ようか」


 桜の一声でトランプを仕舞う。さて、寝る場所は……。桜の部屋に四人で寝るには狭い。まあ、一応男の僕だけが他の場所を借りれば何とか三人は眠れるかな。ギリギリそうだけど。


「私の部屋に一つ布団は敷けるから、残り二人は客間で寝て貰う予定なんだけど」


 聞けば和室を親戚が来たときに使用しているみたいで、今日はそこに二人移動して寝るらしい。問題は組み合わせだけど、桜は自室で寝るので三人で決めることに。


「じゃんけんで決めようか」


 そして勝者が桜の部屋で寝ることに決定。結果はあーやの一発勝ち。


「私、じゃんけんは強いから」


 得意気に話すあーやは余程自信があったみたい。負けるのはプライドが赦さないとか。


「じゃ、二人は和室ね。あーやも布団はそこから運ぶから一緒に来て」


 桜や両親の自室は二階だけど、和室は一階にあった。僕達が布団を敷いている間に、桜とあーやが布団一組を持って行った。


「ねえ、枕投げしない!?」

「えっ。いやいやいや、もう夜だし桜たちに迷惑掛かるよ!」


 それにウサミミなら容赦なくやりそうで怖い。肉食獣の眼をしているよ、兎の着ぐるみを着たウサミミなのに。


「それに、早く寝ないとまた寝坊するよ」

「ユーリの意地悪」


 今日だけじゃなく、今までの期間でもあまりやってなかったみたいで、一番宿題を消化していないのがウサミミ。親からもこのお盆で終わらせるように言われてきたらしい。

 結局、一時間は無駄話をしてから並べた布団でそれぞれ寝ようとした訳だが。


「……眠れない」


 さらに一時間はゴロゴロしていたのだが、ウサミミが気になってとかじゃない。


「抱き枕がないと眠れないなんて」


 腕が淋しい。何かをギュッてしないと安心して眠れないなんて……。いままで、樹から貰った巨大ぬいぐるみを抱えて寝ることはあった。たまにね、たまに。毎日じゃないよ、一週間に七日程度だよ。数時間は離して寝てるからね。


「ユーリ、眠れないの?」

「ウサミミ? ごめん、起こしたかな」


 ゴロゴロも最小限に声も小さく呟いただけなんだけど、布団を並べていたら振動くらいは伝わるよね。


「友達の家に泊まるなんて中学にも数回程度だったから、ちょい興奮してるかなー」

「確かに楽しくて寝るの遅くなっちゃうよね」


 一時間は話していたけどまだまだ楽しみたいとも思うよね。樹や満光と泊まった時なんて徹夜したこともあったな。


「ユーリもなかなか寝付けないんだね。一緒だ」


 なにが嬉しいのか無邪気に笑うウサミミは何時もより更にあどけなくも大人にも見える。


「んー、実はね」


 僕は言うか言わないか迷ったけど、このままじゃ眠れないかもしれない。それで迷惑を掛けないように素直に抱き枕がないと眠れないことを話した。


「ユーリって子どもだね」

「な、べつに。寝ようと思ったら眠れるもん」

「でも眠れなかったんでしょ」


 さらに笑うウサミミに少しムゥとしていたら、ウサミミが僕の布団に入ってきた。


「仕方ないなあ。お子さまなユーリの抱き枕になって上げるよ」


 頭をヨシヨシと撫でられ、本当にただそれだけを思っているらしい。色気も下心もない無邪気な笑顔に毒気を抜かれる。

 いくら僕を女の子として見てくれても、身体は男なんだから少しは警戒しないのかな。それに、僕の恋愛対象はまだ女の子に向いているんだし。

 でも……、ウサミミの心使いは嬉しい。僕を僕として皆も見てくれている。こんな僕を偏見な眼で見ないで友達として扱ってくれている。ウサミミたちは本当に大切な友達。ううん、親友だ。僕の方が彼女たちに失礼だよね。


「ありがと」

「うん、おやすみ」


 抱き枕と言いながら向こうから抱きついてきたけど、この温もりで安心して眠れそうだ。ウサミミの髪も同じシャンプーを使ったからか、お風呂で使ったシャンプーの香りがした。


「くぼっ!」


 いつの間にか寝ていたら口に痛みが走った。


「なんだ……あし、か」


 原因を確認したら、安心して再び僕は眠った。


「ユリちゃん、ユリちゃん」


 小声で僕を呼ぶのは桜かな。

 揺すられで眼が覚めると、口に何かが入ってる。柔らかくて、何だろうと思っていると桜が教えてくれた。


「ウサミミの足ってそんなに美味しい?」

「んぶっ!」


 一気に眼が覚めた。慌てて口から出して、抱えていたらしい左足も放す。


「わ、真っ赤」

「暫くみていたけど、美味しそうに吸っていたしね。赤ちゃんが指をしゃぶってるみたいに」


 どうやら起こしにきたら、この惨状をみて暫く観察していたみたい。なに、ニマニマしているかな。


「さっ、ウサミミも起こすわ」


 桜が揺するがなかなか起きない。足の指をしゃぶっていたのに気付かれなかったのは良かったよ。


「ふわ。おはよ、なんか足がジンジンする」

「やっと起きた」


 ようやく起きたみたいだけど、足に違和感があるみたい。バレませんように。


「ユリちゃん、美味しかった?」

「ちょっ! しー!」


 バレちゃうじゃん。あと、少ししょっぱいけど美味しかったとは言えない。だって、変態だって思われそうだもんね。


「着替えたらご飯食べるよ」


 桜はそれだけ言うと出ていった。

 ようやく覚醒したウサミミと共に着替えて顔を洗って朝食に。一緒に着替え? もう慣れたよ。部活では皆と一緒に着替えるしね。ただ、若干僕より胸がありそうなのは不満。Aはあるかな。AAかな。

 この後は朝食を摂って、僕の家へ涼しい内に移動。移動途中で僕の家のお墓参りにも寄る。

 そして昨日同様午前に宿題。お昼からはホットケーキを作って食べてからまた少し宿題。食事、お風呂を済ませたら雑談して就寝。僕の家にも和室がある。桜の家はお風呂が広かったけど、僕の家は和室が広いので今日は四人一緒に寝ることに。

 ただ、桜がウサミミの寝相の悪さを見たので一番端に確定。それで、僕の朝の状態も見ていたのでウサミミの横で寝ることになった。さらに、然り気無くあーやを僕の横に誘導。安眠出来る場所をいち早く確保していた。

 またウサミミが僕に抱き付いて寝ようとしたことから、抱き枕なしで眠れないことが皆にバレた。あーやに可愛いって言われ、妹扱い。

 そんなこともあったけど、無事皆就寝。途中、僕の身体の上に乗ってあーやを蹴ったウサミミの寝相の悪さに起こされるまでは良眠できた。朝まで被害がなかった桜の一人勝ちで新たな朝を迎えた。


「ウサミミと寝るのはユーリの担当!」


 足を蹴られて、次はお腹を蹴られたあーやが朝から怒っていたのは言うまでもない。だけど、僕だってきちんと寝たい。

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