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夏休み初日

 夏休み初日。いよいよ長い休みが始まった。

 だけど遅くまで寝ている訳には行かない。そう、今日から「四足歩行」の訓練を行う。

 時刻は朝の五時。今日は軽く試すだけなので訓練時間は三十分を予定している。最低でも一時間は訓練したいけど、初日だしね。昨日は夕方まで桜やウサミミ、あーやと遊んでから夜にプリハをしていたから寝るのも遅くなったしね。

 訓練は六時前には終わらせる。未だに続いているラジオ体操に来る小学生の迷惑にならない為にその前に終わらせる必要がある。その後はきっと、散歩やジョギングする人の迷惑になりそうだしね。早朝の犬の散歩は仕方がない。逆に参考にしたいから居てもらっても構わない。モフりたいし。


「よしっ、いってきまーす」


 体操服を考えていたけど、ジョギング用の服を買って今は身に付けている。可愛い女性物だけど、我慢して男性物を買うのも馬鹿らしいよね。今までユニセックスの中で可愛い服を選んでいたのが非常にもったいなかった。着たいものを着て何が悪い!

 そんな訳で公園に行き、ストレッチ後に訓練に入る。


「システム補助ないと、手足の長さがネックだね」


 《獣走》の常歩を行うも、リアルだと上手く行かない。プリハだと、歩方が変わっても意識しなくても歩けるようになったのに上手く歩けないもどかしさ。


「思ったよりも大変そう」


 不可能ではない。ゆっっっっくりとなら問題なく行える。手足の長さに注意してあとはプリハに近付けていけば良いだけ。


「はっはっはっ」


 かなり体力を使うようで、息が荒れる。全身運動に怪我をしないように注意力を高めないといけない。

 でもそのお陰で、三十分で多少マシな常歩になってきた。それでもまだまだだけど。


「はー、ふー。でも楽しい」


 歩くだけだけど楽しい。やっぱり身体を動かすのは良いね。ダニエルって言う目標もある。


「夕方か夜にも時間あれば訓練しようかな」


 汗を拭いて、水のみ場で水分補給して休んでいると小学生が集まってきた。もう少し遅れていたら訓練が見られていたね。

 まあ、犬の散歩に来た人は驚いていたけど。わんこには同族とまだ思われなかったので、頑張らないとね。

 注意しながら行ったので怪我もしないで済んだ。これが駆足や襲歩だと怪我もするかもしれない。それまでに常歩くらいは通常速度で歩けるようにならないと。


「帰ってシャワーしてからご飯食べよ」


 今日は夏休み初日。無理せず満喫しよう。


「宿題は今日くらいはいいよね」


 夏休みの予定は何日かは決まっている。それに向けて宿題は余裕を持って終わらせたい。


「まずは七月下旬の部活かー」


 七月下旬には二泊三日に及ぶお泊まり保育のお手伝いを毎年部活動として行っているらしく、今年から僕らも参加する。

 八月上旬の小学校登校日には着衣水泳のお手伝いも部活でしているらしい。今年は部員が多いので二年は参加しない。

 八月中旬には地元納涼祭と老人施設の夏祭りのお手伝い。こちらは三年が参加しない。一年は全部に参加です。


「部活が集中してる」


 代わりに訪問活動はないけどね。

 部活以外での予定では八月上旬に桜たちとの宿題合宿にお盆の花火大会。八月下旬の宿泊込みでの海水浴。

 あーやの親の知人に旅館の仲居さんがいるらしく、そこに泊まれるようになった。海からは少し離れているけど、あーやの両親も同行して海まで運転もしてくれるらしい。

 それ以外は予定なく遊ぶ事になる。

 最近は樹たちと遊んでないので予定もない。やっぱり学校が違えばなかなか遊ぶことが出来ないね。


「プリハでもしようかな」


 朝食を食べた後はテレビを観ていたらいつの間にか寝ていたみたいで、既にお昼近くだった。

 朝食にグラノーラとミルクだけだったので、少し早いけど昼食に冷やし中華とサラダを食べて部屋にやって来る。

 エアコンで部屋が適温になるまで食休めをしてから、イリューティスを装着してベッドに横になる。

 そして僕は今日もプリハへ旅立つ。


 この数日は検証やら在庫切れした薬品作りに大忙しだった。

 現在、精獣族の石の円環を使い自分の拠点に帰って来ている。だけど、それまでが驚きの連続だった。

 まずはあの後の事。疲労で眠った僕はシステム的にも疲労の溜まり具合が酷いと判断したのか、タイムリミット前に強制ログアウトになった。

 その日はそのままプリハへ帰らずに眠り、翌日─プリハ内では二日後─にログイン。その時、身体の異変と大量のログを確認した。どうやら、強制ログアウトだった為にログが保存されていたようで、そこは非常に助かった。

 身体の異変。それは僕の種族が犬妖精(クー・シー)に変化したことによるものだとログを確認するまでパニックになるほど。

 完全に犬。中型サイズの短足犬になっていた。髪の橙色の影響か、橙を主体に白の体毛。犬の毛色で例えるとレッドとも言うのかな?

 人語は話せるが、ただの先祖返りではこんなことはないらしい。精獣族の女性にモフられまくりました。

 そして、犬妖精。そのまま犬タイプの妖精で、長に崇められました。崇められて、階位【守護獣】を授かった。妖精なのに。


 【守護獣】:自身のテリトリー及び信仰地にて全ステータス30%上昇。特殊技能《番犬》の獲得。

 《番犬》:十秒間守護対象の全ステータス10%上昇。再使用時間五分。信仰度により効果に変更あり。


 信仰度なんてものがステータスに新たに追記されていた。

 精獣族の信仰度はなぜか既に100%。それにより精獣族に対して《番犬》が変化している。


 《番犬(精獣族)》:一分間守護対象の全ステータス30%上昇。再使用時間三分。


 こうなっている。どの割合で何が変更かは不明だけど、検証のやりようがない。無理強いで信仰度なんで上げられないしね。

 犬妖精になったことで変わったことはまだまだある。


『LiLi』

レベル01

成長率00

種族:犬妖精

生命力500

精神力300

攻撃力100

防御力100

 智力50

命中力100

素早さ100

器用さ50

  運50


【武器技能】

《獣撃》

【妖術技能】

《水属性》《幻惑属性》

【補助技能】

《獣侵》《隠密》《消音》《威圧》

【特種技能】

《人化》《仔犬化》《絶体領域》《番犬》

【常時技能】

《獣震》


 まず犬妖精に特殊進化したことでレベルが1になり、一部能力が低下した。だけど、上がったものもあり、レベルから考えたら非常に強力なステータスだと思う。

 次に技能だけど、色々と統合されている。変化があった物だけを上げてもかなりの数がある。

 《獣撃》は獣系攻撃技能である、爪・牙・頭・尻尾に格闘と同じか体術が含まれている。これに突進もこれに含まれていた。それぞれ技能レベルは引き継ぎなのか業は同じままだった。

 魔術が妖術に変わったのは妖精だからと予想。それにより《幻惑属性》なんて言うものが加わった。《水属性》は長に貰った魔導書で覚えた。

 《獣侵》は獣系と五感系に移動系などほぼ全てが統合された。《忍び足》は消えて《隠密》と《消音》に変化したみたい。《威嚇》は《威圧》に強化。

 《獣走》や《マーキング》はそのままだったけど、新たに《人化》は以前のコスプレ獣人に戻る技能。ただ、智力・器用さ・運が二倍になる代わりにその他が半減。主に生産特化と思える。さらに、身長が耳を含めて130あるかないか。実質的に120にちょい届かない。尻尾がさらにモフモフで耳が長くなったけどね。只でさえ身長低いのに、戦闘に不向きになっている。

 《仔犬化》は現在の中型犬の姿。この姿だと全ステータス20%減少みたいだけど、普段はこの姿が良いと思う。これを解除すると、本来の姿に戻るけど討伐されそうなんだよ。犬妖精の文献の通り、仔牛サイズの犬になる。体毛も橙が少し暗くなり茜色のようになり、白毛は灰銀色になる。文献のような暗い緑じゃないのは髪色が反映していると思う。通常サイズでも短足だけどね!

 《絶体領域》は《番犬》に近い能力で、自身のテリトリー内では全ステータス50%上昇。テリトリーはホームの事みたいなので、実質的に戦闘には関係しないと思う。ただ、《マーキング》で一時的なテリトリーを作れるみたいで、今後マーキングの育成を行わないといけないと本領発揮しないと予想。

 《獣震》は獣系技能の強化。細かい割合は不明だけど、熟練度上昇に能力のプラス補正と外せない技能だ。

 本来、レベル40で常時技能のセット数が一つ増える。だけど、僕は40になっていなかったはずなのに、二つ増えた。白蟲の討伐やレイドでレベルは上がっていたと思うので、それでレベル40に届いた所に、進化でさらにセット数が増えたと適当に予想するけど正直不明でしかない。レベルアップまでのログは残ってなかったから、調べようがない。

 残念なのは【ヌーディスト】が剥奪されたこと。犬の姿でも装備は出きるけど、装飾品以外は非表示になるみたい。他人が見たら裸も同然だから、その処置なのかな。かなり強力な階位だったのに。まあ、発動と通報が紙一重の階位なんだけどね、運営はどうしたかったんだろ。一応、全年齢対象だしね。ハラスメントコードをOff にしている僕が考えるのは可笑しいけど。


「頼まれていた家が出来たぞ」


 今日は予定で朝から精獣族の集落にやって来て、現在は女性陣に耳の辺りを掻かれて気持ちよくなっていると、ジルが呼びにくる。


「ほんと!」

「ああ」


 女性陣のブーイングを無視して、僕を抱え上げたジルが向かった先には……。


「おー、ちゃんと犬小屋になってる!」


 鼻息荒くジルの腕から飛び降りて、僕の家に向かう。

 本来は精獣族の家屋のようなツリーハウスを建ててくれる予定だったが、僕がこんな姿になったので急遽変更。

 どのような家で、どのくらいの大きさにするか相談を受けて、インベントリにある移動用犬小屋を取り出した。

 一番初めに造ったこの家に愛着もあり、このような家と大きさを要望した。元は人間サイズで眠れる犬小屋も中型犬サイズだと広い。

 予定よりもかなり小さいので直ぐに完成すると思ったのに、最高の材木で造ると言って今日まで完成しなかった。

 場所は住宅地よりのやや拓けた土地で、石の円環にも近い。


「だけど、なんでこんな……」


 犬小屋は文句なく満足。駆け回れる程の土地もある。だけど入り口の両脇に石柱があり、広場を囲むように太い蔦が張りめぐされている。注連縄みたいな蔦なんだけど。


「LiLiは守護獣として契約してくれた。だから、このくらいはしないとな」

「契約って、ただ何かあれば力を貸すって言っただけなんだけど」

「本来は家を契約の対価にしなくても良かったのにな」


 元からこの集落に家をくれる約束はしていた。だけど、僕が犬妖精となり守護獣の素質? があった。そこで、今回の件もあり非常時には力を貸すことになった。【守護獣】は対価に信仰心が必要で信仰を現す形として何かをしたいと言われた。迷った末に広い庭付きの土地を頼んだ。犬小屋が遅れたのはこの蔦とかの用意もあったんだね。


「LiLiは仲間である以上に、この地の守護獣でもある。もっと何かを要求しても良かったんだ」

「嫌だよ。そんな物で仲良くなるなんて。……それなら、今までみたいに接して欲しいな。それが要求じゃだめ?」


 物で信仰心を現すのはリアルでもあるから、あからさまじゃなければ問題ないと思う。ただ、犬妖精になってからジルは少し他人行儀になった。ガルなんて話しかけてこない。女性陣は……ただモフりたいだけだと思う。長だって畏まった感じで、唯一ドドルだけが変わらずに接してくれた。みんなの態度がこんなにも変わり、悲しく寂しい。


「駄目じゃないが……いいのか?」

「うん、おねがい」

「わかった。正直、皆も戸惑っているんだ。いきなり妖精になったLiLiにどう対処すればいいのか」

「そんなに妖精って怖いの?」

「怖い訳ではない。精獣族はエルフの血も混ざっている。精霊や妖精を信仰しているエルフの血がな。獣人も聖獣を信仰する。聖獣の中には獣の姿をした精霊もいるらしい。善き隣人だった時は聖獣も精霊の一部としてエルフにも信仰されていたのは事実だったと聞いている。LiLiは犬妖精となって、聖獣に近いものでもある。だから、どちらともの血が流れている我らはそんなLiLiを本能的に敬るような感じになっているんだろう」

「えーと……ごめん。難しくてよく解らなかったよ」

「難しいか?」

「あはは。まあ、今まで通りに接してくれた方が嬉しいのは事実だから。精霊とか妖精とか聖獣とかで態度が変わるのは悲しいよ」

「すまないな。皆にも言っておこう」

「うん、おねがいね」


 この数日の他人行儀な感じもこれでなくなると良いな。


「ああ、そうだ。木材やその他の用意が出来たぞ」

「ほんと!」

「後でドドルに確認してくれ」

「うん」


 少量の素材などは貰っていたが、約束していた木材などはまだ貰えていなかった。

 これで調薬室周辺や厩舎に取り掛かれるかな。

 人間姿になるのは生産時なので、家の見取り図には変更はない。

 では、目的の物を貰ってホームに戻ろう。


 この集落の庭付き犬小屋もホーム扱いになり、《絶体領域》が適用されるようになったことを知ったのは翌日のことだった。

遅くなりました。

細々用事をして、書き直していたら一ヶ月経ってました。ごめんなさい。

まだ、文章と内容が変なので修正入ると思いますが、一先ずアップします。本当にごめんなさいです。


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