夏休みに向けて
期末試験もようやく終った。手応えはまあまあといった感じかな。
試験も終わり、今日は皆で遊んで解散となった。久し振りに行く桜の家で、ペットのゴールデンレトリバーのジュピターと遊び癒された。いや、なんで皆して僕にもお手とか言うのかな。条件反射でやっちゃったよ。
試験も終わり、もうすぐ夏休みと言うことで何処かに遊びに行こうと盛り上がり、日時は未定ながらも海に遊びに行く事になった。出来れば泊まりがけも計画に入れる。うん、僕の水着を選ぶって予想は付いていたよ。
「じゃ、また明日」
学校帰りの寄り道で桜の家に遊びに行ったので、二時間位で解散。明日から暫くはまた一日授業が控えている。それも夏休みが近いので頑張ろうと思える。
「少し散歩しながら帰ろうかな」
本当は身体を動かしたいけど、制服だしね。親が言うには女子の制服は来年まで待ってと言われた。別にこれでも良いのに。
高校入学してからテニスを辞めたから運動不足で体重が増えた。いくらプリハで身体を動かしても、やはりリアルでも運動しないとね。
さらに、夏休みに行いたいことも出来たしね。運動不足解消にも良さそうなので、幾つかの公園を見て回る。芝生があって、広いと言うことはないんだけどね。
「良いとこないな。広いって言えばあの公園くらいだし」
芝生がない児童公園。小学生の二人と出会った公園は確かに広いが、馴れるまでは芝生の方が安全なんだよね。破傷風とか怖いし。
地元の公園をこうやって見て回るのは小学生ぶりか。昔より公園が少なくなったり、小さくなっているのが寂しい。
どうして公園を見たりしているのかと言うと、先の通り運動をすることもあるが、プリハにも関係してくる。
普通、ゲームには平等性の為にリアルスキルは関係ないことが殆どなのだが、バーチャルリアルゲームだとリアルスキルが反映されやすい。
そして、ないと思うが愛用している《獣走》がレベルアップしないのはリアルスキルが関与しているのではと邪推してしまった。全ての移動を《獣走》にしてからレベル4に上がった。なら、次はどうしたら上がるかを考えても思い付かなかった。この間までは。
試験勉強中の時にそれを知った。BGM代わりのニュース番組でそれが紹介された。なんでBGMにニュース番組かは、まあバラエティー番組や好きな音楽だと意識がそちらに向いてしまうからなんだけどね。無音でも集中できないし。聞いてない?
そのニュース番組で紹介されたのが、とある世界記録を更新したこと。変わり種も多い世界記録本。その中にあった「四足歩行」の数人による競争。かつては日本人が記録ホルダーだったことも紹介されて大変興味を持って注視した。
現在の記録所持者二十六歳のアメリカ人。二回連続で記録を更新したのを、面白可笑しく紹介していた。
ニュースが終わっても、勉強所かそれに興味を抱いてこの日は勉強なんか出来なかった。
記録保持者のアメリカ人、ダニエルがインタビューで言っていたことも気になった。あるゲームでより身体の使い方を学んだと。ダニエルについてネットでキーワード検索をすると何件もヒットして、その上位に本人のブログも発見することが出来た。
自動翻訳機能は優秀だが、所々に残念な変換も見られたが欲しい情報は拾う事が出来た。
「アメリカサーバーのプリハやってるんだ」
それがまず確認した事。リアルでの「四足歩行」練習やプリハでの事以外にも、日常の出来事も綴られているブログ。
ダニエルはプレイヤー名『Fourlegg』と言うレベル51の獣人。黒豹のアバターもスクショで公開されていた。
彼の一部技能も載っており、「四足歩行」と関連付けて《獣走》にも触れており、そのレベルは5。《獣走》のレベル上限がそこまでらしい。
もうこれで、リアルスキルと関係しているのではと思えるだろう。アメリカサーバーでは獣人は多いが《獣走》のレベルが5に達しているプレイヤーは少ないのではと推察されていた。今回の世界記録更新での数名の内、ダニエル含めて三人がプリハプレイヤー兼ギルドメンバーだと言うことも知る事が出来た。
日本では獣人が不遇で獣プレイもしているプレイヤーは僕自身以外は直接知らないが、海外サーバーだと不遇でもなくて嬉しく思えた。気が付いた時には、メールを書いていた。
迷った末に送信。簡単な自分のプレイスタイルと共に、未だにレベルが上がらない《獣走》の件と「四足歩行」について。リアルスキルが関係しているのかの質問など。自分でも、こうして行動したことに驚いてしまったが、同じようなスタイルが見つかって嬉しさの方が強かった。
「返信来てる!」
返信は翌日。よく考えたら時差とかもあったので当然だよね。返信は英文だったが、自動翻訳されるので読むことは問題ではない。やはり、一部文章が変だが仕方がない。
「えと、同志って……」
初めの一言が、「メールをくれて感謝する同志よ。」と言う内容だった。ここから、僕とダニエルがメル友としての交流が始まった。
「技能に関しては、元から四足歩行をしていたから判別は付かない。レベル4から5に掛けてはかなり時間が掛かった。やっぱり、時間とか距離とかが関係するのかな」
ダニエルも移動は常に《獣走》を使用しているみたいだ。日本よりも発売が遅かったのに、レベルが高いのは成人としてのタイムリミットが長いから。そして、毎日タイムリミット近くまでプレイしているからだろう。アーティストらしく、家にいる時間が多いから可能みたいなので羨ましい。プレイヤーレベルが低めだが、それに反して戦闘外の技能レベルが総じて高い。生産寄りのプレイヤーらしい。
「四足歩行」については簡単なアドバイス。ただ、《獣走》を使用しているなら身体の使い方は解るはずだとも書かれている。全身運動なので、運動量もかなりのもので初めは筋肉痛を覚悟するようにとも注意してくれている。擦り傷から破傷風等の病気にも気を付けるように心配までされた。
「良かったらアバターを見せて、か。まあ、良いかな」
僕は『LiLi』と名乗ってメールを送っている。学生であんまりゲームが出来ないから、効率的な《獣走》の上げ方もあれば教えて欲しいとも図々しかったが書いてみていた。サーバーが違うから向こうのゲームバランスには影響しないし、こちらで使用するプレイヤーは知らないし良いよね。日本サーバーのゲームバランスには殆ど影響はしないと思う。サイトでも効率的なレベル上げのスレッドはあるしね。
試験期間中に数回の交流で見事に女性プレイヤーと勘違いされた。日本の攻略サイトで『LiLi』のキーワードで僕の事を見付けて、こっちから送ったスクショとも同一人物だと知られてしまった。
「LiLi,Hentai?」と送られてきて思わず叫んでしまったよ。二つ名とか出来事とか知られた。恥ずかしい。
ちなみに、向こうではアバターとの性別不一致が十数名確認されている。公表しているプレイヤーはそれも含めて楽しんでいるし、理解もされているみたい。でも、僕が言っても信じてくれなかった。なぜ?
「いつか、競争しよう。かー」
「四足歩行」についての話では、世界記録に挑んでこいと言う挑戦もあった。単に競争して高めようとも。
こうして、僕は夏休みに「四足歩行」を練習することにした。
メールの内容を思い出しながら、公園の視察を終えて帰宅する。やはり、児童公園が一番練習に向いていると思えた。事前に消毒薬や絆創膏なども準備しないと。
「今日は久し振りにフルでやれるね」
試験期間中は薬品製造と、採取ポイントを含めて流木集め位しかやっていない。あとは勉強疲れを動物たちと戯れて癒されていた。
出費が素材購入くらいなので、少し所持金も増えた。本当に少しだけだけど。
期間中には新たにアケビのような実を付ける蔓植物と、メープルの若木も手に入った。メープルシロップが早く欲しいが、育つ前に傷を着ける訳にはいかない。植生が違ったりするがゲームなので深く突っ込んだら負けだろう。
「装備も流石に更新しなきゃだし、メインクエストもしなきゃ」
厩舎や本邸などにもお金が必要だが、メインのストーリーも進めたい。別にメインクエストをせずに遊ぶことは出来るが、メインと言うだけあって魔術購入解放などの利益も大きい。
拠点以外は装備をするようになったので、更新しないと心許ない。ここは必要経費として更新するべきかな。イベントもまたあるだろうし。
拠点なら【ヌーディスト】の恩恵を受けているが、装備を着用すると効果は現れない。殆どが初期装備レベルなのでこの周辺のモブと戦えば負ける可能性も高い。メインクエストでも戦闘はあるだろうし、ここは買う事にしよう。
「なら、炭鉱街かな」
効果が高い装備は鍛治士の街でもある炭鉱街で販売されている。代わりに高く、種類も首都より少ない。
ちなみに、現在の装備はこんな感じ。
武器:クロー
武器:クロー
頭:羽根つき帽子
胴体:戦乙女の聖衣
腕:白椰子のグローブ
下肢:戦乙女の聖衣
脚:白椰子の脛当て
装飾:葉風の小指輪
装飾:鉄の指輪
装飾:なし
装飾:エンゲージリング(ファッション装備欄)
装飾:涙石のネックレス(ファッション装備欄)
【戦乙女の聖衣】が飛び抜けた性能だが、特殊イベントの報酬ならそれも納得。ファッション装備の装飾品も効果があるので、お気に入りはこちらに装備をしている。短剣は現在装備していない。勿体ない。
さて、なら新しい装備と廻り合いに行こう。
パソコンの設定メモが消えちゃいました……。
あと、オーディオデバイスファイルを間違えて削除しちゃった……。
最近忙しくて更新遅れててごめんなさい。