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土地開拓計画(捕獲)

【前回までのあらすじ】


 大型アップデートを終え、ギルド勧誘が激化するなかで有名になっていたLiLiにも勧誘がきた。しかし、フレンドであるヴィーナスのお陰でそれを回避することに成功。

 そしてギルドが出来る前に買った土地により借金地獄に陥ったLiLiだが、必死の金策のかいあって名前付のオリジナル商品の開発に成功。これによって、順調に返済の目処が立つようになった。

 そして、近々初の公式イベントが開催されるとの告知。ずっと停滞していたメインクエストをこの機に進めるも、またもや困難を向かえる。色々なものを流しながら、変人集団の一員の手を借りて快楽に溺れながらもなんとか切り抜けたLiLi。

 夢のマイホームも建てて、いよいよイベントが迫ってきた。

 六月に入り、衣替えの季節へと移り変わっている。

 ただ、昨今の気温変動の激しさにより五月下旬から十日までは冬服と夏服の併用が認められている。まあ、今日は六月下旬並の気温と言うことで皆夏服で登校していた。

 そして、今月は保健委員の仕事が割り当てられているので五月程ではないにしても忙しい。


「それでもプリハには来ちゃうんだけどね」


 イベント前にメインクエスト4迄は終わらせたいと思っていたが、自分の土地を見てからは早く住める環境にしたいと強く思う様になった。

 だが問題がある。そう、安いからと広大な土地を購入したせいで何処から手を付けて良いのか迷う。

 採集と付近のレベル30前後のモブとの戦闘、薬作り以外は草むしりや土の整備を行っているが全然進まない。お陰で二ヶ月も経たず三ヶ月分の借金は返済出来てはいる。


「簡易ポータルを設置するのに、だいたいの配置を考えないといけないし……」


 マイホームの犬小屋はあるが、首都からはかなり離れているので移動だけでも相当時間が掛かる。

 さらに、六月に入って体臭等が地味に実装された。そのせいで汗臭くなってしまい、先に《水源探査》と《熱源探査》を使い井戸と温泉を《掘削》で数ヶ所掘り当て、息抜きが出来ている。井戸は川沿いの立地のお陰もあり土地全体に掘れたが、温泉は中央やや南側と中央川沿いに設置してある。中央区と名付けた場所に家を建て、そこに温泉が入る計画は棟梁と相談して設計はしている。さらに、川沿いの温泉は湯量も多く川の水も引き込めるので十人……いや二十人は余裕で入れる露天風呂を作ってしまったが、後悔はしていない。どちらも水風呂も完備している。


「でも、周りは草だらけだしなー。あの地下の階段も気になるし」


 そう思って、今度はハジリ村の農家を回って相談して見たところ、土を耕すにも草を減らすにも牛等がいたほうが良いとアドバイスを貰った。


「僕らが倒すのはアクティブな敵性モブ。野生の家畜に向いている動物はノンアクティブ。ただ、近付けば逃げるかー」


 今までに野生動物らしきものは三回だけ見た。ただ、かなり離れていたのでレアモブだと思って、ソロでは厳しいと避けていた。それが、家畜になる動物とは思わなかった。レアモブの可能性も否定は出来ないが、ほぼ間違いはないと思う。


「牛に馬。鶏と収集白鴉。山羊に羊。牧羊犬と収集犬。《畜用捕獲》を見たら、初回だけ指定した場所に転移してくれるんだね。まあ、他の土地に移動させないし……増えたら売れるのかな」


 とりあえず動物を捜そうと相変わらずな姿でフィールドを歩く。事前に何種類かは農家で臭いを覚えて来たので、当てのない散策ではない。

 牛であるブリッシュカウ。黒毛の体長二メルス─メートルと同等─以上の筋肉質な雄と、乳牛に適した牝。

 馬であるエアロホース。赤茶毛の有翼馬。体力もあり、人や荷を乗せてもバテ難い。

 鶏であるコケトリス。うん、敵には石化攻撃をする鶏。いや、コカトリスだよね。肉は柔らかく、卵も毎日産むようになる。

 収集白鴉であるコレクタレイヴン。白い美しい鴉。基本は自由飼育で夜に巣に帰ってくる。その際、様々な物を持って帰り飼い主にくれる。情報のみで臭いは不明。

 山羊であるトイナカゴート。高所等に住む足腰の強い動物。肉は固いが乳が濃厚で美味しい。こちらも情報のみで臭いは不明。

 羊であるパステルシープとベリーシープ。パステルは色んな色の毛皮が採れ、ベリーは犬小屋にも使用した【ベリーウール】が採れる。

 牧羊犬のコーギコリー。中型犬くらいの素早い犬。コーギーとコリーのMIX犬な見た目。非常に賢く、忠誠心も高い。

 収集犬のマニアドッグ。大型犬で体格はがっしりしており、素早い。居住区から徐々に活動圏を拡げて、様々な物を持って帰り渡してくれる。収集白鴉より大きな物を持って来れるが、行動範囲は鴉には及ばない。


「ふぅ。とりあえず教えて貰った情報を元に、臭いを感じたら接近かな」


 《獣走》で走りながら、未踏破エリアを駆け回る。もし気づかれて逃げられても、今の僕なら追い付けるだろう。

 そう思いながら草原を駆ける事二時間。臭いの前に姿を発見した。


「エアロホース。草食べるし、整地に活躍するね。なにより……」


 実際に農家で見たエアロホースより大きく、そして美しかった。陽光を煌めかせる朱金色の毛並み。金の鬣と翼は農家にいた馬とは格が違う。それが、親子なのか三頭。


「レアモブはないよね。でも、一気に捕まえられないよね」


 《畜用捕獲》は素手で捕まえた対象に作用される。《農林業》のレベルと運の数値に左右されるので、かなり困難。さらに一回でMS10の消費。


「でも、あの美しい子は欲しいね」


 僕の橙色の髪にも似合うだろうしね。


「なら、やっぱまずはお父さんからかな」


 子供や母親を狙ったら父親が攻撃してきそうだしね。


「階位よし。技能よし。狙いよし」


 ボスに挑むのとは違う緊張。草原の主かもしれない美しい馬に狙いを付けたら、何かを感じたのか父親がキョロキョロと周囲を警戒しだした。


「でもまだ気付いてないね」


 小さい身体を利用して、疎らにある木や岩に隠れながらギリギリまで接近していく。こんなに慎重に行動したことがあっただろうか。


「ふー。よし」


 そして、岩影から一気に《獣走》で父親の背後に接近する。あと少しと言う所で、警戒していたからか走っていく親子。


「まだっ!」


 自分の今までの技術や経験をつぎ込み、追い付きお尻に飛び付けた。激しく揺れる馬体に振り落とされないようにしながら技能を唱える。


「《畜用捕獲》」


 バシュっと音が鳴り、成功したかと思ったが馬は止まらない。


「失敗。《畜用捕獲》!」


 そして再び失敗。この様子に危機感を持ったのか、父親は後ろ足を跳ねるように何度も脚を蹴る。まるでロデオ。どちらが先に負けるか。いや、僕の場合は落ちたら死ぬ可能性すらあった。


「畜よっひゃん!…《畜用捕獲》!」


 五回か六回目の技能発動。バシュと言う音はしなかった。

 走る速度が落ちて、小さく嘶き立ち止まる。


「はあはあ……せ、せいこう?はふぅー」


 成功か失敗かは不明だけど、かなりスタミナを使ったのかそのまま馬から僕は落ちた。かなり疲れた。

 そして僕の手が離れたと思ったら、エアロホースの父親は透けるように消えて行った。おそらく転移したのだろう。


「てことは、成功。なんだよね?やったー」


 疲れた。一頭でこんなに大変だとは思わなかった。

 だけど草原に寝るのはまだだ。なぜなら、母子が僕を見つめているから。睨んでいるのかもしれない。


「ごめんなさい。えと、よかったら僕と暮らさないかな?」


 言葉が通じるとは思わない。まして、家族を何処かにやった敵なんだし。


「え?」


 どうしようか迷っていると、まず子馬が近付き、そして母馬まで僕の前まで歩いて来て、ヒーンと鳴いた。まるで、早く父親の元に送れと言うように。


「ありがとう。大事にするから。《畜用捕獲》」


 まずは子馬から技能を発動すると、無抵抗で転移していった。すぐに母馬もここからいなくなる。


「家族の近くが良いんだね」


 野生の動物なのに、いや野生の動物だからか。家族をより大切にしているのかもしれない。


「人によったら、かなり重いよね」


 感動と申し訳なさ。だけど、決して嫌じゃない。むしろ、彼らの為に頑張らないといけないとさえ思う。


「あっちじゃ、ペットすら飼ってなかったんだけどね」


 家族となる彼らも幸せにしたいとさえ思う。


「でも、彼ら以外も迎えたいんだよね。あ、《畜産》系リストに現在の種類とか状態が表記された」


 新たなリストには親子共に健康と記されており、嬉しくなる。


「よし、もっと色んな家族を増やそう!」


 そして時間一杯使い、さらに翌日も全て利用して成牛雄二頭、子牛牝一頭。鶏雄牝各二羽。ベリーシープ牝一頭。パステルシープ(黄緑)雄一頭。さらに、最後に収集白鴉の雛一羽を拾った。どうやら巣から落ちたようで、戻すか迷ったけど、毎週見ていた動物番組で巣から落ちた雛は戻しても死ぬみたいなことを言っていたのを思いだし、そのまま連れて帰った。犬小屋は僕と鴉の巣となった。


「ワンコがいない」


 牧羊犬と収集犬が見当たらない。同種だから家族になりたい。農家から買うことも出来るけど、どうしようか。

 アニマル達を見ながら、ようやく購入した【入門製薬道具箱】を使い、店基準の軟膏を作っていく。どうやらブランド系はグレードが低いせいか失敗しかしなかった。


「納品もしなきゃだし、仔犬でも探してみようかな」


 羊をモフるのは幸せだけど、いつまでもここいてもしょうがない。僕の薬を待ってる人がいるのも嬉しいし、信用第一だしね。


「ルーン、街まで行こう」


 家畜には名前が付けられないけど、僕はそれぞれに名前を付けて呼んでいる。それが何故か向こうは認識してくれている。まあ、認識しているのはルーン一家と白鴉のセッカだけなんだけどね。

 【入門製薬道具箱】を片付けていると、颯爽と朱金色の毛並みの有翼馬が駆け付けてきた。そう、ルーンは父親馬のこと。どうやら、この水場が近く草も豊富な土地が気に入ったみたい。


「その内、鞍とか付けた方が良いのかな?」


 《跳躍》でルーンに飛び乗ったが、嫌なそぶりもなく、バランスを崩すこともなくがっしりと雄大に立っている。初日には無理だったが、白鴉を連れ帰った後に餌場が気に入った為か僕を乗せてくれた。軽く空の旅も出来た。これで、セッカが羽ばたく練習も任せられるね。


「ルーン。目的地はハジリ村だよ。一応案内するけど、よろしくね」


 一応と付けたのにはまあ、若干の方向音痴は自覚しているから。ルーンのジト目って、こう胸に来るものがあるんだよ。

 なんか三日目で主従関係が逆転しそうだけど、まだ大丈夫。汚名挽回してやるんだもん!


「っで、なんで今ジト目なのかな、ルーンさん」

「ブルシュー」


 今のはため息なのだろうか。きっと、長距離飛行への気合いを入れたんだよね。


「それじゃいくよ!」


 十歩も助走しない内に力強く大地を繰り上げ、黄金の翼をはためかせる。体格に似合わない翼の長さだけど、そこは無視する。だって、風が気持ちいいんだもん。そんな些細なことなんてどうでもいい。


「ルーン、気持ち良いね」


 悠々な空の旅も《獣走》で走るよりも速い。障害物がないだけで、こんなに違うんだよね。


「あ、ルーン。ごめん、先に棟梁に話したいことあったんだ。首都に変更でいいかな?」

「ブルゥ」


 首都とハジリ村はそんなに離れていないので、若干の軌道修正だけで目的地になんなく向かえる。

 今回は返済ではなく、簡易ポータルを置くための簡単な開拓設計の相談ともう二つ。


「あ、見えてきた。中央広場が広いからそこに降りよう」


 この時、もっとしっかり考えていたら騒ぎにはならなかっただろう。それを知るのはあと数分。

風邪が落ち着いてきました。

技能図鑑②は後で挟み込みますね。出来たよね?


このあとがきは作品世界とは関連しないので、後程消しますね。

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